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存在干渉の法則  作者: たびくろ@たびしろ
表・立花編
35/110

エノの右目

その夜。

適当にテレビでも見ながら過ごしていた私とエノ君だったが、エノ君が唐突に、

「……ふぁ…ぁ……眠い……」

と言って目を擦りだした。

「そっか、もう10時だもんね。そろそろ寝た方がいっか」

しかし私自体はいつも徹夜してるのでこの時刻くらいでは全然眠くない。でも、何かきっとエノ君だったら『一緒に寝ようよ』とか言ってきそうだ。中学生くらいになったらそれの深い意味が分かってくるだろうな。

「ねぇ……マサキィ……一緒に寝てよぅ……」

ほら言った。うつらうつらしながら、彼は私のジャージを引っ張った。眠そうな顔も可愛いね。なんというか、母性本能をくすぐるような表情ですよ。うん。

「ね~ぇ……」

やめてくださいそんなつぶらな瞳で私を見ないでください君は私の性癖に『ロリコン』を加えさせたいのかそんなに襲ってほしいのかやめてくれ今だって必死に自我を保とうと頑張ってるんだからもう色んな所が勃ってきそうなんだから本当にやめてくれ。

「わ、分かったから!分かったから!じゃあ私の部屋行こう!ね!」

「うん……眠いよぅ……」




「はい、ここが私の部屋。っていうか、エノ君ここから現れたんだから知ってたっけ……って」

「眠い……おやすみ……もふ」

エノ君は私の話も聞かずに私のベッドに上がり、毛布を被って寝てしまった。10秒くらいの無言タイムの後、安らかな寝息が聞こえてきた。

「……寝ちゃった。う~ん」

私はどうしよう。一緒に寝ようか?でも私は別に眠くはないし、どちらにしろ神代君の事を思い出してしまって眠れないだろう。半ば勃ちかけの私のダブルマウンテンやら何やらが純粋なエノ君の隣で猛威を振るうのだけは避けたい。悪影響だ。うん。

一緒に寝ようとか言ってたし……隣でタブレットでもいじってるか。ネットでも見ていようかな。

「うぅ……欲求不満になりそう……」

そんな事を呟きながら、私はもはや用途がパソコン置き場と化している勉強机の上からタッチパネル式のタブレットを手に取った。そのまま少しだけエノ君を押し退け、私も毛布を被った。

(今日は『あの人達』からは連絡入らないなぁ……ま、いっか)


『あの人達』。


何かの組織みたいなもので、私に協力を仰いできた人達。もちろん、それは私の『紅い目』の『逆の世界からの反応を認識出来る力』が目的なのだろう。実際、私は逆の世界、つまり裏世界からの反応を認識した場合、すぐに『あの人達』に連絡するよう言われている。その為、私は常時携帯を持っておくようにしている。

『あの人達』の目的はちゃんと教えてくれなかったが、話によるときっと裏世界の何かを阻止しようとしているのだろう。一度『あの人達』の一人から、こんなことを聞いた。


―――――――あいつらはとんでもない事をしでかそうとしている。


『とんでもない事』とは何なのだろうか。その人はそれから何も教えてくれなかった。そもそも組織全体が私に対して目的を話す気は無いようだ。まだ新入りみたいなものだからだろうか。

けど『あの人達』は、私の目についてはちゃんと教えてくれた。『逆の世界からの反応を認識出来る力』があるということを知ったのは、『あの人達』が教えてくれたからだ。それが幼い頃からずっと発動しっぱなしで、微量の疲労感を有するものだと。私が幼い頃から疲れやすく、身体が弱いのも、それのせいだという事も。


それから、榎田サンについても教えてもらった。

彼女は私と同じ力を持っていること。紅い目ではなく『蒼い目』だということ。それは私と違って誘発的なものだということ。

いうなれば、トラック競技のスタートダッシュのようなものだ。選手はスタート地点でスタンバイしている。けれど、号砲がなければ、スタートできないだろう。

それと同じだ。裏世界からの反応を捉えて初めて、その力が発動するものだという事だ。

……どこからどう見ても、私の『紅い目』の上位互換だ。私はその話を聞いた時、少しだけ榎田サンを妬んだ。私のように小さい頃から蔑まれる事もなく、親にも恐がられず、普通に暮らしていけるのだ。最高じゃないか。

なにしろ、裏世界の反応が無ければ、目の変色も起きないのだから。


『あの人達』は、私にこう言った。


――――――お前達は、言うなれば双子の姉妹みたいなモンだ。


冗談じゃない。私なんて、ただの榎田サンの劣化版じゃないか。それに猛烈な憤りを感じてしまった。

榎田サンが居るなら、私なんて要らないじゃないか。私なんて、居なくてもいいじゃないか。

私なんて――――――

「――――――ッ!?」

その時だった。

「目が……これって……裏世界の……!?」

目が、疼く。眼球の裏からくすぐられているような感覚。私は右手で両目を塞ぎ、反応を追った。


遠くではない……この近く……近く……すごい近く……まるで隣に居るような――――――ッ!?


その時、私は気付いた。

(これってまさか……エノ君から……反応が……!?)

間違いない。この反応は、私の隣からだ。

確かに、引っ掛かる部分はあった。裏世界の住人は、全員の目が緑色に染まっているらしい。あの神代君の同型虚影(ドッペルゲンガー)も、話に聞いた榎田サンの同型虚影(ドッペルゲンガー)も、瞳が緑色だった。

そして、エノ君も緑色。しかも右目は、瞳が緑色なだけじゃなく、眼球が黒い。何か理由があるのだろうか。

だけど、隣からは未だに寝息が聞こえる。スゥスゥと、気持ち良さそうな寝息が。

(どういう事……!?)

私は万が一の状況を考えて、気付かれない程度に首をめぐらせ、視線だけエノ君に向ける。


(――――――――――――ッ!?)


嘘。

私は、信じられなかった。今まで閉じていた、その小さな両目。

その、黒い右目だけが、


開いていた。まるで無理やりこじ開けたかのように、大きく開いている。


(う、嘘……!?何で……!?どうして……!?)

そして黒い右目は、まるで緑色の瞳だけが独立しているかのようにギョロギョロと、縦横無尽に動いていた。やがて、その緑色の視線が、私の紅い目線と重なった。

「あっ……!?」

私は思わず後ずさり、その拍子にベッドから転げ落ちてしまった。

「痛……っ」

痛みで閉じた目をゆっくりと開く。

「――――――な……?え……!?」

さっきから驚いてばかりだが、今のは最高に驚いたと思う。



まるで人形を糸で釣っているかのようにだらしなく両手を垂らしながら、エノ君は上半身だけ起き上がり、首をこちらに巡らせた。開いている右目以外は、先程と変わらないエノ君の寝顔。

右目。

その右目だけが、私の脳に恐怖感を訴えかけていた。



「うあああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!あぁ……あ……!!」

私は思わず悲鳴を上げる。怯え、少しずつ、尻餅をつきながら後ずさる私の姿は、見ようによってはとても滑稽だっただろう。そんな私を真っ直ぐ見つめる不気味な黒い右目は、一瞬笑ったように細くなると、ゆっくりと閉じた。

そして、バタン!!と大きな音を立て、再びエノ君の身体がベッドに落ちた。エノ君は目を覚ます様子もなく、ただ同じ様に眠っていた。

私は、そのままうずくまり、エノ君が被っていたのも構わず毛布を引っ張った。

そしてそれを被り、ただ怯えていた。

面白いですか?これ。

いや、小説じゃなくて、この後書き。

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