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存在干渉の法則  作者: たびくろ@たびしろ
表・立花編
33/110

視線の応酬

「いい?ホントに変にはしゃいじゃダメだよ?君のその格好、結構目立つんだから」

「うん、分かった」

私達は、家を出て少し歩いた辺りでもう一度再確認をした。

私はいつも通りのジャージを着ている。前のチャックは全開で。あ、もちろんちゃんとTシャツは着ましたよ?さすがにそんな露出魔じゃないから、私。仮にストーカーだったとしても。

まぁ、別にTシャツ着てなくても前のチャックを止めればそれでいいんだけどね。いや、待てよ。それもそれで興奮す……違う違う。むふ。

それより問題はエノ君だ。彼の見た目は、総じて六本のコードが身体を循環しているという不審感極まりないものなので、今は少し大きめな私のパーカーを着てもらっている。もちろん、フードは被らせた。

私と会った時、コードが繋がれている拘束具のような金属輪はセーターやジーンズの上から押さえ込むように付けられていて、『着替えらんないよこれ!?』と思った。

しかし、意外にもその金属輪は取り外し可能らしく、簡単に着替える事が出来た。しかしコードは身体と繋がれているため完全に切り離すことは出来ず、そもそもこれを外してしまうとエノ君は死んでしまう。これは、生命維持装置だからだ。

別に衣服の上からでも、じかに付けるのでも差異はないらしく、パーカーやジーンズの下から肌に装着することによって、とりあえずコードが表面上に露出するのは防げた。首の部分から右目の下に掛けて繋がっているやつ以外は。

(……とは言っても、結局は目立つ、か)

そこらを歩いていると、やはり他人の視線を集める。スーツを着たサラリーマンも、仲良さそうに歩いているカップルも、小さな子供も、みな一様に私達を見る。

これは、エノ君のせいだけではない。まぁ、確かにエノ君のオッドアイ、つまり左右非対称の目は隠しきれなかった。その本来なら白目に当たるであろう瞳の周囲の部分が、黒く染まっている。そんな彼の『右目』に、人々は疑念と恐怖の視線を向けていた。

しかしそれだけではない。もう既に慣れてしまったが、その化け物を見るかのような視線は、私の『紅い瞳』にも降り注がれる。

慣れというのは恐ろしく、もはや対抗する気すら起きなくなっていた。幼い頃は、泣きじゃくりながら自らに疑問を投げ掛けていたというのに。


―――――何でみんなそんな目で私を見るの……!?別に何かするわけでもないのに……何でみんな怖い顔するの……!?


そんな事を言っていた時期もあった。一時期は自暴自棄になり、狂ってしまったこともあった。私を見るもの全てに殴りかかり、しかしその度に身体の弱い私ははねつけられていた。

だけど、私はその度にこう思ってきた。


―――――私の『目』はオカシクなんかない……!私を見るアンタ達の目の方が……よっぽど化け物じみてるよ……!


そう思えば、なんだか気が楽になった。そう、みんながオカシイんだ。たかだか瞳が紅いくらいで人を敵視するアイツらの方が、何倍もオカシイんだ。

だから、私はもう大丈夫。いくらおぞましい目で睨み付けられても、それを受け流す術を持ってる。

ちょうど、気の弱そうな私と同い年くらいの男子が私を見てきた。この子は……恐怖心かな?怖いもの見たさって奴かな。

私はその男子と目を合わせると、妖しげに笑い、おもむろに舌舐めずりをしてやった。おーおー、エロいわ私。

するとその男子はびくついたように肩を震わせ、逃げるように歩を進めていった。

「むふ……」

私は小さく、笑った。あぁ、面白い。傑作だったよ、今の。可愛い。このまま追い掛けて、いかがわしい事でもしてやろうかと思った。

「マサキ……面白そうな事してるなぁ……いいなぁ……」

ふと、エノ君がそんな事を言い出した。エノ君の柄に合わなそうな一言だったが、私はそこでニヤリと笑った。

「エノ君もやればいいじゃん。私達を変な目で見る奴に、睨み利かせてやればいいじゃん。楽しいよ?」

「僕もやってみよ……あ、あの人なんかどうかな」

エノ君の視界の先には、二十代くらいの可愛い女性が居た。さっきの男子と同じく、エノ君を恐怖心から見ていた。

と、エノ君は恐ろしそうに笑った。とんでもないほど妖しいゲス顔で。もちろん、その女性を睨み付けながら。

女性は震え上がり、急ぎ足でその場を去った。

「はは……」

エノ君は、笑った。


「あははははははははははははッ!!」


大声を上げて笑った。

それにつられて、私もにやけてしまう。そのまま口元がピザを切り離すかのように開くと、


「あっははははははは!!ははははははははははははッ!!」


最後に、二人で顔を見合わすと、


「「あはははははははははははははははははッ!!あっははははははははははははははははははははッ!!」」


大声で笑った。周囲が訝しげな目でこっちを見てくるが、元々最初から目立っているのだ。恥ずかしさなど、これっぽっちも感じなかった。むしろ、その視線がたまらなく私を高揚させる。あぁ、ゾクゾクする。興奮してくる。

もっと見てよ。化け物みたいな私を、恐怖の目で、疑念の目で!!

それが、私を気持ちよくさせる。身体が熱くなってくる。まったく、これじゃ変態じゃないか。

私達は、それからしばらく、笑い合っていた。

あー、久しぶりに変態な立花さん書けて楽しかったです。

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