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存在干渉の法則  作者: たびくろ@たびしろ
神代・立花編
3/110

立花真咲の陰謀(規模極小)

…………最悪だ。

そう思ったのは、俺の隣に立花が立っているからだ。

何故こうなったか。それは単純だ。


誰かが、俺の傘を持っていきやがったからだった。もう最悪。


もちろんこの大空襲のような大雨の中、傘もささずに帰れるわけもなく、おかげさまで俺は仕方なく立花の傘に入れてもらう事にしたのだった。

確かに、この大雨で傘を忘れた奴が仕方なく俺のを持っていく可能性もゼロではないだろう。しかし何故今日。何故今。だったら俺も他の奴のをバックればよかったのだが、生憎さっきまでの俺の罵倒を誰かが先公にチクり、そして立花共々30分に及ぶ説教を喰らった。当然、学校に残っている奴は部活動の生徒のみ。しかもそいつら全員アホなのか、誰一人傘を持っている奴は居なかった。

よって借りれるのは立花の傘のみ。なので仕方なく一緒に帰るハメになったのだった。

あーイラつく。




…………最高だ♪

私がそう思ったのは、私の隣にトオル君が居るから。

いや、まさかトオル君も気付いてはおるまい。傘を隠したのは何を隠そう、この私。一方的に罵倒される側だった私は、担任の先生の説教からトオル君より五分ほど早く回避することに成功した。そして外は大雨。

トオル君を待とうと玄関の前に立った私は、『あ~どうせ今日も逃げられるだろうな~』と半ば諦めかけていた。

しかし。

私は気付いた。玄関の私達のクラスの下駄箱の近くには、傘を置くための『傘バケツ』なるものがある。そこにある傘は、二本のみ。

一つは私の傘、そしてもう一本はトオル君の傘。

えぇ、閃きました。閃きましたとも。ついでにときめきましたよ。


トオル君の傘を隠す。それによってトオル君が頼らざるは私の傘だけとなり、トオル君は必然的に私の傘の中へ――――――ッ!!

「っしゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

思わず雄叫びを上げた。その瞬間、私は甘い未来を思い浮かべた。

『あれ?俺の傘がねぇな。しょうがねぇ、立花、傘入れてくれよ』

『もちろん!!どうぞ!!』

そして二人は…………へ。へへへへへへ、えっへへへへへへぇ。おっといけねぇ、ヨダレが垂れちまいそうだったぜ。

よぅし。隠そう。そう意気込んで私は傘を隠した。どこへって?そんなの私のカバンの中に決まってるでしょ。言わせんな恥ずかしい。

何故か折り畳み傘だったからすんなり入った。普通だったら水切ってカバー掛けてカバンにしまうのではないのか、と思ったがチャンスなので問題なし。ていうかバケツの中の傘って意外と乾きにくいよね。でも、そんな生乾きの傘でも私は気にしない。だって帰ったらあんなことやこんな事に使って……えへへへへへへへへ。

…………キモいよね。とんでもなくキモいわ、私。しかし私は変態ではないのです。変態という名の淑女ですとも。変態ですね、すいません。はい。


「うわっ立花。お前まだ帰ってなかったのかよ。てっきり雨水で水没してると……」


「へっ!?い、いや、その、うん!!はい、えぇ、はい!!いや、はいじゃなくって、水没してないから!!」

私が変態顔負けの笑顔を浮かべていると、いつの間にか後ろから声が聞こえた。慌てて振り返ると、そこには説教が終わってげっそりした顔のトオル君が立っていた。

「じゃあはよ帰れゲス。お前の顔見てるとイラつくから」

あぁ、はいそうですか。いや、嫌われてるのは分かってるけど、でもそこが可愛い。人見知りなのを隠して暴言を吐くところなんか特にもう可愛いなんてレベルじゃない。ツンデレ。そう、トオル君は過激型ツンデレ属性。

「あーそうだね。帰ろっと」

その時、いつの間にか靴を履き替えたトオル君が、苛ついた様子で首を傾げた。

「あ?はぁ!?おい、なんで俺の傘がねぇんだよ!!チクショウ、折り畳み傘を間違って傘バケツに突っ込んで『あーまぁ帰りに拾えばいいか』なんて思ってたらこれかよ!!ふざけんな!!」

なるほど、そんな理由で折り畳み傘がだいぶ大きめな傘バケツに入っていたのか。ますます自分の幸運さが神がかってる事を意識した。

「アー、ダレカガモッテイッタンジャナイ?テイウカサーワタシカサアルカラサーイッショニカエロウヨー」

…………我ながらとんでもない棒読みだと思った。私って正直者だからね。はい、嘘です。すいません。

「…………とてつもなく嘘臭いんだが、まさかお前が隠したっていう訳じゃないよな?」

「ソ、ソンナコトアリマセントモ!!ソンナショウガクセイミタイナコトスルワケナイジャナイデスカーハハハ」

あぁ、私ってなんて優しいんでしょう。誰か(自分)の陰謀によって傘が隠された、そんないたいけなクラスメイト(決していたいけなわけではない)に優しさたっぷりの笑顔(陰謀成功の笑顔)で救い舟を出す(始めから計算された助け船)なんて。

諦めたのか、完璧に嵌められたトオル君は溜め息をつくと、

「……じゃあ仕方ない」

「おぉッ!?」


「――――――濡れるのを覚悟で大急ぎで帰るか」


…………どんだけ私が嫌いなのだろう。

立花真咲さん変態ですね。いや、こういうキャラもありじゃないっすか?ていうかまったくシリアス展開ないですね。もうちょっとだけ我慢してください。

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