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『失敗』に終わった夜
「う……ぁ……」
どうして。
どうして、透は私を止めたの?
「分かってる……本当は、分かってる……けど……!」
あの目は、何だったの?
まるで悪者を見るようなあの目は、私をどう見ていたの?
そんな疑問ばかりが、私の脳裏をよぎる。その疑問を具現化したかのような、透明な液体が路地裏に滴り落ちた。
私が裏世界に戻されるあの瞬間、私はあの二人にどう見られていたの?
同型真像の私に、同型虚影の私はどう見られていたの?
正真正銘の幼なじみである同型虚影の私は、榎田舞は。
同じ同型虚影の神代透に、どう見られていたの?
私はただ、深夜の路地裏で泣きじゃくるしか出来なかった。
「……ただいま」
今日も、私は呟く。おかえり、なんて誰も言ってくれないのに。
三年前までは私にも、おかえりを言ってくれる優しい家族が居た。私が被っている帽子は、手渡せなかった家族の形見だ。いや、その家族に渡せていないのだから、形見とは呼べないかもしれないが。
私は暗い自室の電気も付けず、僅かに覗く月明かりを頼りに、ベッドに潜り込んだ。
帽子を枕元に置く。
こうすれば、家族を近くに感じられる気がする。
私の、たった一人の弟を。
新章です。今回は裏世界の榎田舞の過去です。どうでもいいですが作者は一人っ子です。




