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時が経つのは早いですね。
気が付いたら1週間経っているんだもの。
ようやくゲーム世界ですw
気が付いたら、どこか見覚えのある場所に俺は立っていた。
目の前には俺にとってはお馴染みの光属性を司る神の像がある。
今までのBOTシリーズ通りならば、ここは始まりの神殿であろう。
BOTは全作通して、|(少なくとも本編は)”双子の姉又は弟(NPC)”と共に神託を受けるところから始まる。
しかし、ここはBOT”オンライン”である。
俺は右を向いた。誰も居ない。
左を向いた。勿論居ない。
後ろを向いた。居たら怖い。
ふむ、勇者な可愛い娘ちゃんは居ないようだ。
そして、俺は気付く。
この世界では俺は伝説の双子の勇者様の片割れでは無く、”ただ”の冒険者である事に……
「うおおおおおッ!?」
無性に泣きたくなったので、代わりに叫んでおいた。
確かに、俺のリアルな声であることを確認した。
って、プレイ開始早々俺は一体何をやっているんだ……
まずは神託だよな、神託!
BOTなら神託を受けなきゃ何も始まらないぜ!
と、ドヤ顔で心の中で言う。
他の人が今の俺を見たら、俺の顔は大層真面目に見えただろう。
ついさっき、突然叫んだ俺が言うことじゃないが。
別に良いんだ、他に誰も居ないから……居な……い……?
……え?
何故、他プレイヤーが居ないんだ……?
俺は確かに俺一人だけであることを確認するように、神殿内を一周した。
それによって改めて実感した。
俺は今……、 ぼっちだ!
ないはずの風が俺の前を嘲笑うかのように通り過ぎていく。
俺の額に冷や汗が一滴。
神殿内は独立空間になっており、他プレイヤーとは決して会うことのないようになっていることなど知らない俺は慌てふためいた。
「やばい。まさか、これはあれか?一人だけ異世界トリップしちゃったとか……?」
思いっきり勘違いした俺は一気にまくし立てた。
「いやいやいや、待て。落ち着くんだ神野共守。こういう時は深呼吸だ。すーはーすーはー。よし、落ち着いたぞ。とりあえず、異世界トリップとかどこのラノベだよ。馬鹿か、俺は。そもそも、ここは始まりの神殿じゃないか。そして、俺はLv.1。チートキャラでもなんでもない。だからして、ここは断じて異世界じゃない!ただのVRワールドだ!!そうだ、VRワールドだ。ほら、よく見たら景色にブレが……ないな、うん。これは、あれだ、クオリティが上がったんだな。流石、大手ゲーム会社アルサス社だ。リアル度凄いっす!マジパネェっす!オニパネェっs『長いわあああああ!』
自分自身でも何を言ってるのか訳が分からなくなった頃、突然何者かの声が割り込んできた。
『ワシが大海原のように広い心でお主が落ち着くまで待ってやったのを良いことに延々と不毛な行動を繰り返しおって!神であるワシを愚弄する気か!』
「神つっても、神託を伝えるだけの奴だろ。そんなん下級も下級じゃないか。」
『黙らんか!お主なんぞには有難い神託なぞくれてやらんわ!ふんっ去らばじゃ!』
「えー……。」
辺りがしーんと、静まりかえった。
どうやら、本当に居なくなってしまったようだ。
おいおい、嘘だろ。
神に嫌われて、神託が受けられないとかBOT史上初なんじゃないだろうか。
そもそも、神託って半ば儀礼的に受けるもんじゃないのか?
最新のAIはもう人間並の感情を持っていると見て間違いないな。
うむ、さも当たり前のように考察を述べてしまったが……。
神託が受けれない=神の加護がない
って、ことなんだよなあ……。
俺はあまりの脱力感からその場にへたり込んだ。
神の加護がないのはかなり深刻である。
加護がない、即ち神の慈悲が戴けないってことで、まず教会が使えない。次に神殿がここ始まりの神殿以外使えない。
それだけにとどまらず下手したら異教徒扱いされて、迫害される……なんてこともあり得る。
からして、なんとか神託を受けたい。
しかし、あの下級神だと困難な気がする。
俺があーでもない、こーでもない、と知恵を絞っていると、どこからともなく現れたちみっこい天使が神託を告げていきましたとさ。
あっけなかった。
そして、天使初めて見たよ。
これも、BOT史上初じゃないかと思う。
そのことよりも、天使までにも嘲笑われたという事実に俺の心は折れかかっていた。
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ここから3日目まではこの「史上初!神と喧嘩したぜ!事件」ともうひとつ「モンスターの巣に落ちたorz事件」以外は何事もなく平和にレベル上げの日々が続いた。
次回やっと美和姉がBOTの世界に……!