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新章突入。
久しぶりなのに長くないです短いです。
突然、私は浮遊感に襲われた。
「……え?」
あまりに突然の出来事に思考が追いつかない。
「そこは、俺が落ちた巣穴だ!」
クウマの言葉によりようやく理解する。
私は今、モンスターの巣窟に向かって落下しているのだ、と。
慌てて穴の縁に手を伸ばす。
が、反応が遅れたせいで後一歩のところで届かない。
代わりに壁に擦れた事により指に擦り傷が出来た。
地味に痛い。
HPも確認するが少し減っている。
だが、今はそんな些細な傷を気にしているどころではない。
この自由落下している状態をどうにかしなければならない。腰に差していた短剣を引き抜いて、壁に突き刺す。それにより落下が止まる、代わりに片手でぶら下がる格好になったが。
「大丈夫か?」
穴の上から声が降ってきた。
上に顔を向けると、クウマが穴を覗き込んでいた。
「この状態で大丈夫そうに見えるのか?もしそうならば、お前の目は節穴だな。」
この穴の存在を教えておいてくれなかったクウマに少し腹が立ったためか、私は知らず知らずのうちに憎まれ口を叩いていた。
「いや、俺には十分大丈夫そうに見えるけど。」
だから、そんな返答が返ってくるとは思わず、
「は?」
生返事を返していた。
「気付いてなかったのか?お前の居る位置底まで10cmもないぜ?」
その言葉に私は慌てて下を見る。
確かに、普通に降りても怪我一つしないであろう距離しかない。
私は自分の顔が赤くなるのを感じた。
恥ずかしい。
平静を装いながら、短剣を抜き、地に降り立つ。
「さて、クウマも降りてこい…って、もう目の前に居るな。」
「いや俺自分じゃ降りてないんだけど……。」
クウマは困惑した目でこちらを見る。
「は?」
「は?って何だよ……。」
何だか気落ちしているようだが、気にしない。
「ダンジョンなんだから、パーティーメンバー自動転送ぐらい当たり前だろう。」
「……マジで?」
私は眉間に皺を寄せる。
歴代BOTプレーヤーなら誰でも知っている常識。
何故こんな常識を知らないのだ。
それでも、BOT厨である私の弟か!
「それでも私の弟か!」
「ええ!?」
クウマが変な声を上げた。何故だ。
思考を読んだのか?そんなスキル存在したか?
いや、オンラインから取り入れたのか?
立派なプライバシー侵害だな。
私が勝手に納得してうんうん、頷いているのをクウマが呆れた顔で見ているが気にしない。
それにしてもクウマはコロコロ表情が変わるな……。
はっ、いかんいかん。
また、どうでもいいことを考える所だった。
今はどうやって脱出するか考えるべきだというのに。
「そんなに深くないから登って脱出「無理」
言葉を遮られたので、少しクウマを睨みつける。
そうすると、クウマは苦笑いして上を指差した。
……上?
指差された頭上を見上げる。
そこには光り輝く満天の星が……見えませんでした。
私が落ちた穴が完全に土で埋まっている。
ある程度の時間が経つと埋まるのか?
閉じ込めるなんて運営は悪趣味だな。
デスゲーム自体、悪趣味か。
「だからさ、素直にダンジョンを抜けるしかないんだって。因みに一回落ちたから知ってるけど、モンスターの巣窟だ。此処。」
「ああ此処は、例の巣穴か。確かお前は死に戻りしたのだったか、情けないな。」
「しょうがねえじゃん、あん時はまだLv.5だったし。」
「現在Lv.1なのだが。」
「撫子ならいける!」
清々しい程の笑顔でクウマにぐっじょぶのサインを受けた。
「クウマもLv.1だろうが。」
「いや、俺Lv.15。」
「おい、待て。」
「ん?」
クウマがあまりにさらっと口にするものだから、つい流してしまうところだった。
「貴様……チートだったのか!?」
「俺からしてみたら撫子の方がよっぽどチートだからな!?」
クウマがやけに私の装備を見ながら反論してきた。
む、よく考えたらこの巫女服もチート品か……?
しかし、すぐにこれよりも良い防具なんて出てくるだろう。
やはり、レベルの恩恵の方が……。
「いや、やっぱりレベルの方がチートだと私は思……って聞いてないだと。」
今しがた目の前に立っていたクウマはいつの間にか通路の入り口へと移動していた。
「人が話しているというのにクウマは……クウマ?」
クウマは薄暗くてよく見えない通路先を真剣な顔で見つめていた。
「ちょっと黙って。……この先から何か聞こえる。」
言われたとおりに、黙り込み、耳を澄ます。
ヒュンッ……ヒュンッ……
わずかに風切音が聞こえる。
まるで誰かが戦闘しているような……。
修学旅行やらテストやらで全然更新出来ませんでした。すみません!