推しの死と自分の死
「ブラッドハート様~、かっこいい!」
夜のひとり時間、ベッドのなかで至福の時を味わう。
最近は、このために生きてる。
小説「白薔薇の王子と歌唄いの聖女」を読むために。
ヒロインの聖女フロンティアは純粋で健気で素敵、ヒーローの白薔薇の王子フィルも真っ直ぐで正統派王子様で素敵。
だけど……
私が好きになったキャラは敵国の冷酷王子ブラッドハート。
ヒロインのような存在も居ない、たった一人で戦う孤高の姿にどんどん惹かれていって、いつしか彼を応援してしまっていた。
一抹の不安を抱きながら……
そう、敵キャラを推しにした者に高確率で訪れる悲劇。
推しの死――!
「ブラッドハート様、死んじゃった……」
彼は戦死してしまった。
フィル王子と一騎打ちして、平和を求めるヒーローの前に敗れて退場した。
その場面の衝撃にしばらく頭も心も機能停止してから……
泣いた。
いつ以来だろう、声を出して泣いたのは……
こんなに人の死にショックを受けてメンタルをやられたのは。
しばらくは、小説の続きも読めずに寝込んでいた。
少し回復してから読んでみると――ラストでフィル王子とフロンティアは結ばれて子供が生まれていた。
「幸運をもたらすという、伝説のオッドアイの子だ。この子が国にさらなる幸せをもたらしてくれるだろう」
数々の悲劇を乗り越えて――End
私はまた滝のように泣いた。
ラストの感動と悲劇のなかで死んだまま幸せになれなかったブラッドハート様を思い出して複雑な感情でぐちゃぐちゃになりながら。
「ブラッドハート様も幸せになってほしかった!」
血涙を流しながらそればかり考えていた。
そして小説の、ある一文が目にとまった。
幸運をもたらすオッドアイ……
この子がストーリーの中に居たら話は変わっていたかも。
私が幸運のオッドアイの娘だったら――
歌も上手いといいな、身分は、王女だと政略とか色々難しそう、ここは町娘になって陰からブラッドハート様を見守って、それから戦いのなかで出会うとか?
ブラッドハート様は国を侵略するために、フィル王子を巡りフロンティアと婚約者候補争いをして敗れて二人に復讐心を持つシルビア侯爵令嬢と密かに政略結婚してしまうのよね。
戦いに勝つためだけの愛のない結婚、そんなことをしてしまう前に私と出会ってほしい。
できれば、私と恋愛結婚をして真実の愛を見つけて幸せに……
町娘だと難しいか、やっぱり、王女か貴族令嬢になるべき? どんなストーリーがいいだろう……
そんな事に夢中になってぼーっと歩いていたせいか、私は階段から転げ落ちた。
ブラッドハート様の死を嘆いてから数日後――
私まであっけなく死んでしまった。
あ、真っ暗な闇の向こうに光が見える……
ここは、天国? ……それとも……
まさか―――――!




