出会い6
陽の光の気持ちいいい日だった
その日も西宮は神社で過ごしていた
放課後、今日は学校を最後まで出席し真っ直ぐに帰るのが嫌だったので神社に寄った
高瀬はいなかった
別にいてもいなくても関係ないので西宮は指定席に座り空を見上げる
大きく呼吸をすると本を読み始めた
しばらくすると足音が聞こえてきたので顔を上げる、境内の入口から高瀬が現れた
制服姿ではないラフなトレーナーに黒色のジャージの様なズボンを履いている
階段を駆け上がってきたのか息を切らしている、そして西宮の顔を見るなり顔をしわくちゃにした
全身を上下させ呼吸をしている
「どうした?」
思わず西宮が聞く
高瀬はその場にしゃがみ込み小さく丸まった
ちいさな体が呼吸に合わせ上下する、そのせいでい泣いているのかそうじゃないのか分からない
西宮は高瀬の呼吸が落ち着くのを待ち定位置から動かず離れた場所から見守る
でもなかなか落ち着かない、そのうち嗚咽が聞こえてきた
泣いている
高瀬は泣いている
西宮はそれに気づいてもどうしていいか分からず見守り続けた
高瀬の呼吸が少し落ち着いたように感じ、西宮はやっと声をかける
「大丈夫か」
高瀬の反応はない
小さくしゃがみ込んでいる高瀬をどうしたらいいか分からず様子を見るが
やがて西宮は立ち上がりそばに歩み寄る
そして乾いた地面に直接座り楽な姿勢を取る
何か声をかけるべきかかけるべきでは無いのかを考え、何もできずにそのまま黙り込んでいた
高瀬は時々鼻をすすり袖に顔を押し付け肩を震わせていた
西宮は風の音を聞き雲のない空を眺める
境内入口はひらけているが冬の木々が立ち並び見通しは良くない
枝は四方に伸び低い位置には緑の葉を残した低木がひしめいている
ツタの様な葉が統一性も無くくねっている
寒い季節だ植物たちは息をひそめている
どれくらいそんな景色を眺めていたか高瀬が動いた
少しだけ首を傾け西宮の位置を確認する
そして小さな声で話を始めた
「あの人が来たの、お母さんは仕事でいないって言ったのに家に入ってきて、勝手にトイレ使って帰るのかと思ったら帰らないで、私の部屋に勝手に入って私の腕掴んで、頭撫でてきて、怖くなって逃げてきた」
話をする高瀬の口調がどんどん早く強くなる
「この前もそうだった。急に家に来てお母さんはいないって言ったのに勝手に家に入ってきて、お母さんは知ってるから大丈夫だって、今度お小遣いあげるからって、お母さんには言わないから大丈夫だって腕掴んで。怖くて逃げて、お皿が割れて破片掴んだら手から血が出てきて、自分のお腹刺したの血が出たらあの人出ていくかなって思って隙を見て逃げてこの神社に隠れたの。お母さんにその話したけど何も言ってくれなかった」
そこまで話すと高瀬は体を更に小さくするように丸まった
最初に神社で会った高瀬の様子を思い出す、薄着でわき腹をおさえ手を血で汚し小さく怯えていた
家に帰る事も出来ず病院にもいかず親も頼れず
西宮はそんな高瀬の様子を見守りながらその場を動く事もせず何の返事もしなかった
ただ自分の呼吸に集中していた
冷たい風が吹く、日が傾き気温が下がる
西宮は何も言わずずっと同じ体勢のまま座っていた
高瀬も顔を上げることなくずっと丸まっている
小さな声が聞こえてきた
「帰らないの?」
高瀬が少しだけ顔を上げて西宮の様子を探る
「もう少ししたら帰る」
「気にしなくていいよ、私の事は」
「家は疲れかるら」
西宮の答えに高瀬が少し顔を上げた
「家なのに?」
「自分の家じゃない」
「え?」
「養子なんだ」




