出会い5
数日後、西宮はまた昼前に学校を早退して神社へやってきた
ただなんとなく学校が面倒くさいと感じてサボりたい気分になっただけ
何でもない日常に溶けていることが疲れ
非日常的な場所で一人になりたいと思って神社にやってきた
そして驚いた
そこにあの子がいた
西宮は階段を上り終え息を整えながら
なんでまたこの子がいるのか考える
その子は西宮を見つけると西宮の指定席から立ち上がり小さく笑う
「この場所いいね」
そして立ち上がり西宮に席を譲った
そのまま迷う事なく以前背中を向けていた屈んでいた場所で同じ姿勢をとった
その行動を見ながら西宮は人がいることに違和感を感じつつもいつもの指定席に座った
その後は会話をする事も無く
西宮は視界の端に人の気配を感じながら本を読んで過ごした
「雨だ」
声が聞こえた
西宮は顔を上げる
小さな粒が空から降り始めていた
少女は慌てて社殿の屋根の下に駆け込み「寒い」そう呟く
寒そうな制服姿で肩をすくめ自分の手に息を吹きかける
「上着は?」
西宮が聞く
「下にいろいろ着てるからコートはなくて大丈夫」
西宮はそれを聞いて「ふうん」と頷いた
ひょろりとしたその制服姿は下に何かを着ているようには見えない
その時、グウウッと聞きなれない音が聞こえた
音のした方を見るとうつむいて背中を向けるその子がいた
西宮は鞄に入れてある腕時計を確認する
十二時過ぎを指していた
「昼飯は?」
「学校でパン注文しようと思ってたから」
少し考えてから西宮は鞄に入っていた弁当を取り出し少女に差し出した
「これ、食べれば」
「えっ?」
「どうぞ」
「だって、自分の分は?」
「俺は大丈夫、腹減ってないし」
少女は首を横に振った
「いいよ、私もお腹空いてなし」
そう言った瞬間グウウッと再びお腹が鳴った、
西宮は表情を変えることなく弁当を差し出した
「俺が食べるより、君が食べた方がいい」
遠慮している少女に距離を詰めて弁当を無理やり押し付ける
「ありがとう」
そう言って少女は弁当を受け取り西宮が座っていた階段の下の段に座り弁当をひろげた
「美味しそう」
箸を取り出し「いただきます」とつぶやくと食べ進めた
口をもぐもぐさせながらその子が振り返る
「名まえ、何て言うの?」
西宮は一瞬間を置いて答える
「西宮恒」
「私は、高瀬由香」
「お昼代もらえたのか?」
「うん、お母さんまだ怒ってるけど」
高瀬が大きく息をつく
「いつもパン注文だからお弁当なんて久しぶり」
「おいしい?」
「うん」
うなずきながら高瀬は西宮に笑顔を向けた
口に何かをほおばりながら満足げな顔だ
寒くて薄暗くて雨が降っているのに高瀬は関係なく笑うんだなと何となく思ってしまった
美味しいと言って弁当を食べているその姿を不思議な思いで西宮は眺めていた
高瀬は弁当のおかずを一つ二つと口へ運び
「この茶色の何だろう?美味しいよ。お肉じゃないし、さつま揚げかな?」
そう言って西宮の顔を見る、高瀬が箸でつまんで噛り付いた丸いボール状の茶色い物、西宮もそれが何だか分からないので首をかしげる
高瀬は西宮の反応を見て再び箸を進める、そしてある程度食べた所で振り返り西宮に弁当を差し出した
中にはご飯とおかずが残っている
差し出された弁当の意味が分からず西宮は高瀬の姿を見つめる
「半分もらった、ありがとう」
「え?」
「私はもう大丈夫だから」
「全部食べていいよ」
「だって食べないとあとでお腹空くよ」
「俺は大丈夫だよ」
「お腹空くよ」
「一食くらい抜ても大丈夫」
「ダメだよ」
そう言われて西宮は仕方なく弁当を受け取った
最初の状態が分からないから何とも言えないがご飯やおかずが丁度半分の状態で残されているような感じがあった
西宮は少し悩んでから受け取った箸を弁当包みの布巾でぬぐうとご飯とおかずを順番に口に運んだ
高瀬が美味しいと言った茶色い物も口へ運ぶ
その様子を見て高瀬は「おいしいでしょ」と言った
「西宮のお母さんって料理上手だね。羨ましいな」
そんなことを呟いていた




