お嬢様の反逆5
セナが1週間遠征にいったあと
私たちは言葉だけの確認で終わらせなかった。
「――実際に動くよ」
その一言で、全員が剣を手に取る。
木剣とはいえ、空気が一気に引き締まった。
「開始」
私の合図で、アレンが真っ先に踏み込む。
素早い動きで距離を詰め、雷属性の魔力を想定した斬撃を放つ。
私は中央で“セナ役”として動きを受け止める。
「まだ足りない、アレン躊躇しないで!」
私は声を張る。
「はい!」
大きく返事をしアレンのスピードがさらに上がる。
「でも、ここで――」
ロベルトが一歩踏み出し、地面を踏みしめる仕草をする。
実際の魔法は使わないが、土壁が立ち上がる位置を想定して動線を切る。
「アレン、右に追い込みすぎだ」
「はい!」
動きが修正される。
「次、テオ」
合図と同時に、テオの姿が視界から消える。
物陰を使い、完全に気配を殺す動き。
「今、完全に見失ったな」
レオが言う。
「その状態を10秒作る」
テオの声だけが聞こえた。
「そこで、ルイ、レオ、そして私が入る」
私は剣を構え、一歩踏み出す。
「ここで挟む。
ルイは10時の方向 レオは2時の方向から」
「了解」
「いける」
全員の動きが噛み合い、自然と円を描く形になる。
「――止め」
私は剣を下ろした。
一瞬の静寂。
「……今の、かなり本番に近いんじゃない?」
ルイが言う。
「そうですね!でもセナ副団長だったらもっと圧があるな!」
ロベルトも言う。
アレンは息を整えながら、真剣な表情で言った。
「でも……いけます。
動き、ちゃんと繋がってます」
私は全員を見渡す。
「何度でもやるよ
体が覚えるまで」
剣を使った確認は、
この作戦を“机上の空論”から“現実”へと変えていった。
この1週間 それぞれが他の仕事をしながら時間を合わせては何度も動きを確認した。
◇
作戦前夜
机の上には簡易的な紙と人形 魔法陣を書き込んだ紙。
私はその中央に指を置く。
「もう一度、最初から確認する」
全員が無言で頷いた。
「私が用意した魔宝剣で、セナの魔宝剣を弱体化させる。
効果時間は5分。これが前提条件」
「5分を過ぎたら撤退不可だな」
ロベルトが低く確認する。
「ええ。剣の力が戻った瞬間、形勢は逆転する」
私は次にアレンを見る。
「アレンは初動。
素早さを活かしてセナを翻弄、雷で間合いを崩す」
「はい。無理に倒しにいかず、動かすことに集中します」
その答えに、私は小さく頷く。
「ロベルトはアレンをフォロー。
土壁を点在させて、視界と動線を切りながら重い一撃を狙って」
「はい」
ロベルトが返事するとちょうどテオがやってきた。
「お待たせ、遅れた?」
「ちょうどいいところよ。テオ。
遠征ありがとう。2日の予定で組んでた内容を1日で戻ってきて、さすがよ。」
いま帰ったばかりのテオがフードを脱ぎながら合流した。
「ちゃんと戻ってくる前にセナ副団長には連絡いれたよ。現地の人を交えて。だから俺がまだ遠征先にいると思ってる」
「うん、予定通りね。ありがとう。
そしてセナが油断している間にテオは潜伏、動きを封じる」
「10秒だね」
テオが楽しそうに言う。
「任せて」
「その10秒で、戦況を決める」
私は深く息を吸い、最後の2人を見る。
「ルイ、レオ。
セナの想定外から入る。位置、タイミング、どちらも私の合図次第」
「はーい!」
「了解!」
全員の返答を聞いてから、私はもう一度全体を見渡す。
「誰か1人でも遅れたら、この作戦は崩れるけど入念に準備をした」
私はゆっくりと頷くとみんなも頷く。
どこか楽しそうだ。
「……よし。
これでいくよ」




