お嬢様の反逆3
ティアナside
セナとの決闘 1週間前
セナとの決闘を前に、私はメンバーを招集した。
一人では勝てない。それは、もう分かっている。
「みんな、集まってくれてありがとう」
「いえ、大丈夫です」
「俺も大丈夫です!」
ロベルトとアレンが続けて答える。
他のみんなもこちらをみて頷く。
「ありがとう。
実は……セナを諦めさせたいの」
その瞬間、みんながきょとんとした顔になる。
私は続ける。
「セナは私が進む道を止めようとしてる。
だから私はそれを諦めさせる」
力強く告げた言葉。
「俺やるよーお嬢さまのお願いだもん」
テオがゆるりと微笑む。
「えっと、どういうこと?
セナちゃんって、ティアナちゃんの専属護衛騎士よね?」
ルイが首をかしげる。
「近いうちに、セナと決闘しようと思ってるの。
私はどうしても勝ちたい。
……勝たなきゃいけないの。どんな手段を使っても」
宝石事件や蝶の会のことは伏せた。
こんな曖昧な理由で協力を頼むなんて、図々しいだろうか――そう思ったけれど。
「お嬢さんがそこまで言うってことは、勝たなきゃいけない理由があるんだろ?お嬢さんが進むべき道ってやつを守るために」
レオが、ビシッと手を挙げる。
「俺、協力するぜ」
「俺たちも、セナさんに負けっぱなしだからな!
一泡吹かせてやろう!」
ロベルトとアレンも意気込む。
「わかったわ」
ルイが微笑んだ。
「可愛い女の子が“勝ちたい”って言うんだもの。
相当な覚悟なんでしょう?
私も協力するわ」
「ありがとう、早速だけど作戦会議してもいいかな」
「決闘ってことは……一対一ですよね?」
少し不安そうに、アレンが口を開く。
「正直、分が悪いと思います」
ロベルトも告げる。
私は、静かに首を振った。
「ええ。
だからこそ――私がやろうとしているのは、騎士道には反してる」
みんなの視線が集まる。
「手段を選ばずに勝つ。
少し……ずるいやり方よ」
「というと?」
ルイが首を傾げた。
私は、一つずつ言葉を並べる。
「まず、木剣で勝負すると思わせるの。
私は木剣の中に魔宝剣を仕込む」
「なるほど……」
アレンが息を呑む。
「セナは“自分で選んだ”と思う。
だから、警戒しない」
私は続けた。
「戦いの途中で、私は魔宝剣を発動させる。
セナの木剣を砕くわ」
「そりゃ、セナさんも――」
「ええ」
私は頷いた。
「もちろん、魔宝剣を使う」
一瞬の沈黙。
「……でも」
ロベルトが首を傾げる。
「それだと、条件は同じでは?」
その時だった。
私はある魔宝石をみせる。
「ふーん」
テオが、にやりと笑った。
「なるほどね。
魔宝剣の“力”を、発揮させないってことだ」
全員がテオに注目する。
「そう」
私が頷くとアレンが木剣と魔宝石を見比べて首を傾げた。
「これは……何をするものなんですか?」
「セナ副団長の魔宝剣の力を制限するんだよ。
簡単に言うと魔力阻害だね」
テオが代わりに説明する。
私は静かに頷いた。
「これは特殊な魔宝石なの。魔法陣と発動条件がとても厄介だけど、その分、魔力の動きを悟られにくい」
皆の視線が私に集まる。
「まず、この木剣に私の魔宝剣を仕込む。
その中に魔法陣を組み込んで、この魔宝石を媒介にする」
私は指で順を追うように説明する。
「次に、その魔宝剣をセナに触れさせる。
そして――セナが私にその魔宝剣を差し出した瞬間」
一瞬、言葉を切った。
「魔宝剣を通して、私はセナの魔力とつながる。
その接続が成立したとき、魔宝石が発動するの」
アレンが息をのむ。
「私が魔宝剣で攻撃すれば、セナも同じように魔宝剣を使う。
その瞬間になって、ようやく気づくはず」
私は低く告げた。
「――自分の魔宝剣の力が、制限されていることに」
沈黙が落ちる。
「……すごいです」
アレンが素直に言ったあと、少し不安そうに続ける。
「でも、都合が良すぎませんか?」
「だからこそ、セナ自身に私の剣を選ばせるの」
その言葉の意味がすぐには理解できなかったのか、アレンはまだぽかんとした表情のままだった。
けれど、テオだけは違った。
「――お嬢さま、それ最高」
テオはにやりと笑う。
私は静かに続けた。
「セナはね、いつも訓練のとき、必ず私のために剣を選んでくれるの。
並んでいる剣の中から、いつも一番いいものを」
それが当たり前のように。
「セナは私のことを“守る存在”だと思ってる。
……主人と騎士の関係だから、当然よね」
一瞬、胸の奥がちくりと痛む。
それでも、私は目を伏せなかった。
「だから――私は、その優しさを利用する」
その言葉が落ちた瞬間、部屋の空気が静かに引き締まった。
誰も否定しなかった。
それが必要なことだと、全員が理解していたから。




