集合
ディランの剣が覚醒してる。
だけど敵が多すぎる。
斬っても、斬っても――
敵は減らない。
これではこちらが体力切れしてしまう。
息が上がる。
足元に、黒い霧が絡みついたその時。
「――遅くなりました」
蒼い閃光が走った。
「我が剣に従え、アクアマリン!」
セナが突入し、冷たい波動が地面を洗う。
魔力の流れが一瞬、凍りついた。
「セナ!」
「お待たせしました」
その背後。
「加速する、トパーズ!!」
黄色の稲妻とともに、アレンが敵陣を貫く。
「数が多いなら、動きを止めればいい!」
「支える力を――スモーキークォーツ!」
ロベルトの剣が地を叩き、岩壁がせり上がった。
通路を分断し、敵の流れを遮断する。
「よし、戦線立て直しだ!」
だが、それでも再生は止まらない。
赤黒い魔力が、さらに濃くなる。
「ちっ、まだ来るのか!」
炎が弾けた。
「燃えあがれ! ペリドット!」
レオが天井から飛び込み、爆炎で敵を吹き飛ばす。
続けて――
「紅く、鋭く、我が想いに応えよ――スピネル!」
テオの剣が深紅に輝き、一閃。
再生しかけた敵の核を、一撃で断ち切った。
「相変わらず派手だな」
「うるさい、レオ」
さらに。
「美しく、酔いしれなさい――ローズクォーツ」
甘い光が広がり、敵の動きが鈍る。
「はいはい、今のうちに倒しなさい」
ルイが微笑む。
その後方で、
「静めなさい……ムーンストーン」
アリスの拳銃が月光を描き、
再生の魔力を正確に遮断していく。
仲間が集まってきたが赤黒い魔力が床を這い、魔女の雫から生まれた異形が次々と再生している。
「……数が減りませんね」
ユウリは一歩前に出る。
背後では、ティアナとディランが敵を薙ぎ払っていたが――
倒しても、床の魔法陣が再び魔力を吸い上げ、新たな個体を生み出していく。
「核は装置ではない」
魔力の流れ。
回路の歪み。
結界の重なり。
すべてが、わずかに狂っている。
「……なるほど」
彼は静かに剣を抜いた。
装飾を排した、実用一点の細身の剣。
柄頭に埋め込まれた宝石――
灰色の透明なフローライトが、かすかに脈打つ。
ユウリは片手で剣を構え、深く息を吸った。
「下がってください、お嬢様、殿下。」
「ユウリ?」
ティアナが振り返る。
その瞬間、異形が跳躍した。
――間に合わない。
だが。
「理を整えよ――フローライト」
低く、静かな詠唱。
剣先が床に触れた瞬間、
カン――
澄んだ音が響いた。
灰色の透明な光が波紋のように広がる。
暴走していた魔力の流れが、
まるで線を引き直されるかのように整列していく。
「……何だ、これ」
ディランが目を見開く。
再生していた敵の身体が、途中で止まった。
歪んだ宝石が悲鳴を上げ、魔力の供給を断たれる。
「魔力回路の“順番”を変えました」
ユウリは淡々と告げる。
「今この区画では、再生が成立しません」
異形が一斉にこちらを向いた。
「……ですが」
ユウリは一歩、踏み出す。
「戦闘は、まだ終わっておりません」
剣を正眼に構えた瞬間、フローライトが強く輝いた。
「――次の一手を」
敵が殺到する。
ユウリは最小の動きで剣を振るった。
速さでも力でもない。
“正しい場所”を斬る剣。
魔力の結節点。
宝石と肉体の境界。
再生の起点。
一閃ごとに、敵は音もなく崩れ落ちた。
派手な爆発はない。
叫びもない。
ただ、機能停止。
「……すごい」
ティアナが思わず呟く。
ディランは小さく笑った。
「なるほどな。これが――執事の剣か」
ユウリは剣を下ろし微笑む。
「執事ですからこれぐらいは」
空気が、ざわりと歪む。
なにこれ?嫌な感じだ。
狂気、恐怖、焦燥――
魔女の雫由来の負の感情が、波のように広がろうとした。
そのとき。
レイは一歩も動かず、ただ小さく目を伏せた。
「……殿下の背後で騒ぐな」
短剣の柄頭が、淡く紫に脈打つ。
低く、静かな声。
まるで祈りのように――
「静寂を保て。惑いを断て――アメジスト」
瞬間。
紫水晶の紋様が刃の内側に浮かび上がり、
音のない波紋が、床を這うように広がった。
叫び声は、途中で霧散する。
詠唱は、喉の奥で途切れ、
魔力は形を失い、沈んでいく。
狂気の光が消えた。
「レイ、遅いじゃないか」
軽口を叩くディランにレイは肩をすくめた。
「申し訳ありません。少々、騒音の処理を」
その一言で、場の空気が引き締まる。
私は、思わず息を呑んだ。
――全員、揃った。
背後から、ディランが静かに言う。
「……これで、やっと本番だな」
その声に呼応するように、
蒼と光。
氷と雷と土。
炎と紅。
土と氷。
薔薇と月。
整と静。
宝石の輝きが、戦場を照らし出す。




