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夜明けが世界を染めるころ、 悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない  作者: 舞響


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204/222

集合

ディランの剣が覚醒してる。

だけど敵が多すぎる。


斬っても、斬っても――

敵は減らない。

これではこちらが体力切れしてしまう。


息が上がる。


足元に、黒い霧が絡みついたその時。


「――遅くなりました」


蒼い閃光が走った。


「我が剣に従え、アクアマリン!」


セナが突入し、冷たい波動が地面を洗う。


魔力の流れが一瞬、凍りついた。


「セナ!」


「お待たせしました」


その背後。


「加速する、トパーズ!!」


黄色の稲妻とともに、アレンが敵陣を貫く。


「数が多いなら、動きを止めればいい!」


「支える力を――スモーキークォーツ!」


ロベルトの剣が地を叩き、岩壁がせり上がった。


通路を分断し、敵の流れを遮断する。


「よし、戦線立て直しだ!」


だが、それでも再生は止まらない。


赤黒い魔力が、さらに濃くなる。


「ちっ、まだ来るのか!」


炎が弾けた。


「燃えあがれ! ペリドット!」


レオが天井から飛び込み、爆炎で敵を吹き飛ばす。


続けて――


「紅く、鋭く、我が想いに応えよ――スピネル!」


テオの剣が深紅に輝き、一閃。


再生しかけた敵の核を、一撃で断ち切った。


「相変わらず派手だな」


「うるさい、レオ」


さらに。


「美しく、酔いしれなさい――ローズクォーツ」


甘い光が広がり、敵の動きが鈍る。


「はいはい、今のうちに倒しなさい」


ルイが微笑む。


その後方で、


「静めなさい……ムーンストーン」


アリスの拳銃が月光を描き、

再生の魔力を正確に遮断していく。

仲間が集まってきたが赤黒い魔力が床を這い、魔女の雫から生まれた異形が次々と再生している。



「……数が減りませんね」


ユウリは一歩前に出る。


背後では、ティアナとディランが敵を薙ぎ払っていたが――

倒しても、床の魔法陣が再び魔力を吸い上げ、新たな個体を生み出していく。


「核は装置ではない」




魔力の流れ。

回路の歪み。

結界の重なり。


すべてが、わずかに狂っている。


「……なるほど」


彼は静かに剣を抜いた。


装飾を排した、実用一点の細身の剣。


柄頭に埋め込まれた宝石――

灰色の透明なフローライトが、かすかに脈打つ。


ユウリは片手で剣を構え、深く息を吸った。


「下がってください、お嬢様、殿下。」


「ユウリ?」


ティアナが振り返る。


その瞬間、異形が跳躍した。


――間に合わない。


だが。


「理を整えよ――フローライト」


低く、静かな詠唱。


剣先が床に触れた瞬間、


カン――


澄んだ音が響いた。


灰色の透明な光が波紋のように広がる。


暴走していた魔力の流れが、

まるで線を引き直されるかのように整列していく。


「……何だ、これ」


ディランが目を見開く。


再生していた敵の身体が、途中で止まった。


歪んだ宝石が悲鳴を上げ、魔力の供給を断たれる。


「魔力回路の“順番”を変えました」


ユウリは淡々と告げる。


「今この区画では、再生が成立しません」


異形が一斉にこちらを向いた。


「……ですが」


ユウリは一歩、踏み出す。


「戦闘は、まだ終わっておりません」


剣を正眼に構えた瞬間、フローライトが強く輝いた。


「――次の一手を」


敵が殺到する。


ユウリは最小の動きで剣を振るった。


速さでも力でもない。


“正しい場所”を斬る剣。


魔力の結節点。

宝石と肉体の境界。

再生の起点。


一閃ごとに、敵は音もなく崩れ落ちた。


派手な爆発はない。


叫びもない。


ただ、機能停止。


「……すごい」


ティアナが思わず呟く。


ディランは小さく笑った。


「なるほどな。これが――執事の剣か」


ユウリは剣を下ろし微笑む。


「執事ですからこれぐらいは」



空気が、ざわりと歪む。

なにこれ?嫌な感じだ。


狂気、恐怖、焦燥――

魔女の雫由来の負の感情が、波のように広がろうとした。


そのとき。


レイは一歩も動かず、ただ小さく目を伏せた。


「……殿下の背後で騒ぐな」


短剣の柄頭が、淡く紫に脈打つ。


低く、静かな声。


まるで祈りのように――


「静寂を保て。惑いを断て――アメジスト」


瞬間。


紫水晶の紋様が刃の内側に浮かび上がり、

音のない波紋が、床を這うように広がった。


叫び声は、途中で霧散する。


詠唱は、喉の奥で途切れ、

魔力は形を失い、沈んでいく。


狂気の光が消えた。


「レイ、遅いじゃないか」


軽口を叩くディランにレイは肩をすくめた。


「申し訳ありません。少々、騒音の処理を」


その一言で、場の空気が引き締まる。


私は、思わず息を呑んだ。


――全員、揃った。


背後から、ディランが静かに言う。


「……これで、やっと本番だな」


その声に呼応するように、


蒼と光。

氷と雷と土。

炎と紅。

土と氷。

薔薇と月。

整と静。


宝石の輝きが、戦場を照らし出す。

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