ブティック グロウ7
「何か手掛かりがありましたか?」
セナが口を開く。
「ええ、宝石が精神に作用する内容の古書が見つかったの。あと何個か気になるものがあった。
正直どこまで信用できるかはわからないけどね」
「そうですか…こちらはやはりローブの男が関わる宝石事件が何件か起きているようです。
双輝アレキサンドライト国 直系の王国騎士団も見回りを強化しているようです」
「そう…」
「王国騎士団の先鋭揃いを集めて、暴走した宝石の処理にあたっているようです」
「……先鋭揃い、ね。」
「はい。表向きは“危険物の回収”という名目ですが、
内部では精神汚染や暴走事例も確認されているそうです。
一般兵では対応できない、と判断されたのでしょう」
「宝石がそこまで……」
セナは古書に手を置き、ページの端を指で押さえる。
「この本にも似た記述があったわ。
強い感情や意思を媒介にして、宝石が持ち主を侵食する――
もし完全に支配されたら、理性は戻らないって」
「それは……王国騎士団が動くのも無理はありませんね」
ユウリも口にする。
「ええ。でも問題は――」
私は顔を上げ、静かに言った。
「“暴走した宝石”が偶然生まれているとは思えないこと。
そのローブの男が、意図的に引き金を引いている」
セナの視線が鋭くなる。
「ローブの男が宝石を流し、暴走を誘発し、その混乱の中で何か探している?あるいは…」
セナも考え込むように呟く。
「エマのこともだけど、これ以上私の大切な人達を不幸になんてさせない」
「はい」
「もちろんです」
ユウリとセナも力強く頷く。
「そういえば…古書店の亭主が少し気になることを言っていました」
ユウリが思い出したように口を開く。
「気になること?」
「ある客が話していたそうです。その宝石を身につけるとすごく気分がよくなるとそしてその競売があると仄めかしていたそうです。ただその客も酔っ払っていたようで信憑性があるかはわからないとのことです」
「ほんと?」
気分が良くなる宝石ということは…ローブの男が関わっているかも。
抑えられればだいぶ大きな一歩になる。
「ええ、もう少し調べてみます。また報告します」
「お願い、ユウリ」
「ところで、ディラン殿下を見かけたのですが会ったりしてませんよね?」
セナが口を開く。
私が視線をそろりと外しユウリも咳払いをする。
「会いましたね」
セナがため息をつきながら続ける。
「まさか調べていることバレてませんよね?」
ジロリと見つめられたじろぎながら、両手をあげ降参ポーズをする。
「バレそうになったから、自白した」
「え!?言ってしまったんですか」
セナが驚いたような顔をする。
「だって…あの殿下だよ?隠そうとすればするほど墓穴ほりそうで。あーでもお父様に釘刺されたばかりなのに報告されたらどうしょう…」
冷静に考えると非常にまずいのでは?
「そこまで心配しなくても大丈夫だと思いますよ。殿下はお嬢様のこと大変気に入っている様子ですから」
涼しげな顔で話すユウリに
「確かに…お嬢様気に入られてますよね」
セナも同調する。
「へっ!?」
素っ頓狂な声をあげてしまった。
「気づきませんでしたか?ディラン殿下は昔からお嬢様のことよく見てましたよ」
「全然知らなかった。なんで見張られてるのよ、怖すぎる」
なんか寒気してきたな。自分の腕をさする。
あの腹黒王子は何を考えているのやら。
「見張られてるって…
あ、そういえば言ってませんでしたが私がお嬢様によく珍しい本とか届けていたでしょう?」
ユウリが口にする。
「あー、そうね。興味深いものばかりで今もたまに読むよ」
昔から本をよく見て勉強していたので、ユウリが見つけてきてくれた本は新鮮なものばかりで楽しく拝読していた。
「あれ、殿下からですよ」
ユウリの一言に目が点になり頭を抱える。
「お嬢様、普段聡明で仕事もできるのにたまに抜けてますよね」
ぼそっと呟いたセナを睨みつつ深いため息をつく。
ただ殿下は色々知ってそうだったな。
嫌な予感が、胸の奥を静かに締めつけた。




