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夜明けが世界を染めるころ、 悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない  作者: 舞響


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敵襲2

闇に紛れて走り続けると、視界に低くうごめく影が近づく。

ガイル側の使者だ。数は少ないとはいえ、こちらは2人だけ。


「セナここで止めるよ!」

私はセナの肩越しに声をかける。

セナは頷き、腰に手をやり構える。


「我が剣に従え アクアマリン」

氷の魔宝剣が淡い青白い光を放ち、夜の闇に輪郭を描く。


影が一気に飛びかかる。刃と魔力の閃光が交錯し、夜の闇を裂く。


「蒼き風よ、導け ラピスラズリ」

私は力強く風の魔法を刀身に纏わせた。光と風が刃先を包み、共鳴の力を指先に集中する。

温かな振動が体を駆け巡り、セナの動きに微かな滑らかさと力強さを与える。


「――今よ!」

セナは素早く敵を斜めにかわし、氷の剣で相手の腕を凍らせつつ蹴りで制する。

同時に、私は風の刃を一閃させ、共鳴の力で攻撃の反動を増幅。光と風の刃が敵を押し返す。

敵の刃は弾かれ、暗闇に金属音と氷が砕ける音が響く。


「お嬢さま、左!」

セナの警告が鋭く飛ぶ。

振り返る間もなく、もう一人が斜めに飛びかかる。

私は身を捻り、共鳴を防御に切り替える。

風の刃が空気を巻き上げ、光の盾のように衝撃を受け止め、セナの氷の剣と重なって敵の進路を封鎖する。


「……大丈夫、来て!」

私の声に合わせ、セナが前方の敵を氷の蹴りで凍らせながら吹き飛ばす。

刃と氷、風の力、そして共鳴の振動――3つの力が交わることで、闇の中でも動きが自然に合致する。


「まだ増えてきますね」

セナの声も冷静だが、そこに熱が宿る。

氷の魔宝剣の刃先が青白く光り、風の魔宝剣が周囲の空気を渦巻かせる。

2人の共鳴は微かに振動となって互いの動きを伝え、どんな攻撃も無駄なく交わされる。



「セナ、次は右!」

私は指先で共鳴を剣に流し込み、力を前方の敵に集中させる。

セナは氷の剣を回転させ、吹き飛ばした敵を確実に封じる。

風の刃と氷の刃が交錯し、共鳴の光が微かに2人を包む。呼吸を合わせ、攻撃は完璧に敵を捉える。


闇の中で戦い続ける。敵の数は次第に増え、周囲からの圧力が2人を押しつぶすように迫る。

光と氷、風の刃が交錯し、共鳴の振動が微かに体に伝わる。息を切らしながらも、私たちは一歩も引かない。


「セナ、左から!」

私は共鳴を剣に流し、風の刃を旋回させる。

セナは氷の剣で相手の動きを封じつつ、微細な振動でこちらの攻撃の軌道を正確に合わせる。

敵の刃は跳ね返され、冷気が闇の中で舞う。


次々に増える敵を、私たちは押されながらも撃破していく。

1人を斬り倒し、また1人を氷で足止めし、共鳴の力で互いの動きを補う。

背中を預けるように戦うことで、2人の攻撃は正確さと威力を増す。


だが、数の優位は次第に致命的な圧力となる。

風の刃がかすめ、氷の刃が敵を封じるも、最後の1人――鋭い光を帯びた剣士が私に迫り、それも倒した。



これで終わった…

さすがに人数多すぎ。体力ももう僅かだ。

そう気を抜いた瞬間だった。


「お嬢さま――!」

セナの声が割れ、体が先に反応した。

次の瞬間、影から出てきた敵は私を斬りかかろうとした刃を振るう。

私は避けようとしたが間に合わない。


「…!」

氷の剣が光を放ち、敵の刃と衝突し、仕留めた。

だが、その反動で刃がセナの肩を貫く。


私の胸に熱いものが走る。セナの顔が歪み、氷の魔宝剣が手から滑る。

セナは地面に崩れ、血が氷の刃に沿って輝く。


「セナ!」


「…お嬢様は…けがはないですか?」

言葉が胸に詰まる。深い傷を負いながら、私を思いやるその姿に、どうしようもなく胸が苦しくなる。


「私は平気よ。それよりセナが…」


「……とりあえず、そこの湖まで行きましょう」

血で濡れた手をグッと握りしめ、セナは立ち上がる。

私は肩に手を回し、力を込めて支えながら歩き出す。


血がぽたぽたと地面に落ちる。

痛みに顔をゆがめ、一瞬だけ眉を寄せる。

けれど、私にはわずかに笑みを浮かべて見せた。


湖のほとりにたどり着くと、漆黒の闇がゆっくりと薄紫に溶け、空が淡く光り始めながら水面を揺らしている。

もうすぐ夜明けだ。


静寂の中、深く息をつき、セナをそっと座らせる。

「ここなら…少し休めるよ」

私がそう言うと、セナは微かに頷き、ゆっくりと目を閉じる。


セナの肩から赤い染みが広がっているのに気づく。

「……っ!」


服の裾を手で引き裂く。布の裂ける音が、湖の静けさの中で響く。

裂いた布をセナの深い傷口に押し当てる。血がじわりと染み込み、暖かさが伝わる。


「セナ…!しっかりして、お願い…!」

涙が滲む目でセナを見下ろす。手が震える。

セナはかすかに微笑み、弱々しく首を振る。


「お嬢さま……もう、いいです」

声がかすれても、口元の力強さは消えない。


「だめよ、まだ…まだここで…!」

私は必死で押さえつけるように布を傷口に当て、心臓の音が早まる。


「……ティアナ」

セナの声は小さく、でも確固たる響きがあった。

その眼差しは、私に命じるように真っ直ぐで、少しだけ笑っていた。


「…これ以上、喋らないで」

いやだ、こんなのいや。

喉の奥で言葉にならない叫びが詰まる。


けれど、セナはゆっくりと瞬きをして、

私の顔を確かめるように見つめていた。


その瞳の奥に、痛みも恐怖もない。


あるのは――

覚悟だけだった。


彼の指が、かすかに私の手に触れる。


その温度が、急速に遠ざかっていくのを感じて、

胸が締めつけられた。




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