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夜明けが世界を染めるころ、 悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない  作者: 舞響


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敵襲1


馬車の中で、私はルイの作ったドレスを素早く脱ぎ始めた。


「ここで脱ぐんですか?」

セナは淡々と声に出す。でも、指先がわずかに震んでいるのが目に入る。


「ここしかないでしょ!

せっかくルイが作ってくれたドレス、汚すわけにはいかないんだから」


「……そうですけど」

言葉は落ち着いている。しかし視線はせわしなく動き、私の手際の良さに焦りを隠せない。


「ほら、照れてないで。そこの服、取って」


「……わかりました」

一言ひとことは冷静だが、手はやや早まって服を差し出す。


「それに、下に着てるから大丈夫だよ?」

私はチラッと太ももを見せる。


「や、やめてください……!」


セナは声に出すときも落ち着いているように見える。しかし、手元がわずかに動揺し、さっと目線を外す。


「ほんと勘弁してください」

小さく息を吐きながらも、クールな顔は崩さない。

それでも、内心は焦っているのが手に取るようにわかる。


用意していた服に手際よく着替え、よし、と一息つく。


「追ってきてる感じですね」


「……ええ」


淡々と答えるセナの声にはわずかな張りがあり、普段の冷静さが微かに揺れているのがわかる。


「……動きがあります」

セナの視線が鋭くなる。

馬車の窓越し、暗がりに潜む影――ガイル側の使者たちの存在を感じた。


外の気配は次第に増し、馬車は完全に包囲される。

数人の影が取り囲み、動きを制限してくる。


馬車の中で背筋を伸ばし、扉に手をかける。

セナも隣で同じ動作を取り、呼吸を整える。


「行きましょう」

2人は扉を開け、闇の中へ飛び降りた。

すぐに夜の影に身を潜め、テオたちが敵の注意を引きつける。

足音、刃の衝突、魔力の閃光――緊迫した戦場の音が周囲を満たす。


「みんな……」

私は視線を巡らせる。

テオ、レオ、ルイ、ロベルト、アレン――

それぞれが敵の動きを察知し、即座に反応していた。

しかし敵も計算ずくで、仲間たちを分散させ、私を孤立させようとしているのが分かる。


「お嬢さま、下がって!」

テオが低く声をかけ、馬車の扉から前に飛び出す。

「俺たちが食い止める」



その瞬間、テオは敵の前に立ち、まるで壁のように遮る。


「さて、いくよ。

紅く、鋭く――我が想いに応えよ、スピネル。」


テオの剣が、鼓動に呼応するように深紅へと染まった。

黒に近い紅が刃を走り、熱を孕んだ光が夜を裂く。


「燃えあがれ! ペリドット!」


レオの咆哮とともに、大剣が赤熱する。

爆ぜる火花が炎となり、刀身を包み込んだ。


「美しく、酔いしれなさい――ローズクォーツ。」


ルイの剣は淡い薔薇色に輝き、

舞う光の粒が幻想的な残像を描く。


「加速する――トパーズ!」


アレンの剣に雷光が走る。

黄色の閃光が足元を弾き、身体が一瞬で前へと押し出された。


「支える力を――スモーキークォーツ。」


ロベルトが地面に剣を突き立てると、

茶褐色の光が大地を震わせ、分厚い土壁がせり上がる。


それぞれの宝石が、主の意志に応えた。


炎、雷、薔薇の光、守護の大地、そして――

深紅の想い。


戦場に、5色の輝きが咲き誇った。


「セナ副団長、お嬢さまとはやく行って!」

テオの声は鋭く、命令であり、約束でもある。


「わかった!」

私はセナと目を合わせ、小さく頷く。


「……テオ、ありがとう」

小さく呟いた声が闇に消える。


そして、私は共鳴を発動させた。

光の粒子が静かに指先から放たれ、戦う仲間たちの身体に触れる。

瞬間、テオたちの動きがわずかに鋭くなり、力が増すのが分かった。


「これで少しは楽になるはず」

心の中で呟き、セナとともに馬車から離れ、暗がりの中を走り出す。


背中だけが見えるその人物――テオは、飄々としているのに、戦場の中で確実に光を放っていた。

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