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夜明けが世界を染めるころ、 悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない  作者: 舞響


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反省タイム

廊下。


ティアナの部屋の前で、空気はぴんと張りつめていた。


「……レオ」


背後からかかった声に、レオの肩がびくっと跳ねる。


振り向くと、そこには腕を組んだユウリが立っていた。

柔らかな笑み――だが目は完全に据わっている。


「あなた、何を張り合っていたのですか?」


「え、えっと……その……」


「看病は競技ではありません」


ぴしゃり。


「お嬢様の体調より、自分の存在感を優先した理由を説明してください」


「……できません」


「でしょうね」


ユウリはため息をついた。


「あなたの明るさは長所です。

ですが場を誤れば、ただの騒がしさになります」


「……ごめんなさい」


「反省してください。深く」


「はい……」


レオは素直に項垂れた。


一方、数歩離れた場所。


別の修羅場が展開されていた。


「……殿下」


低く、静かな声。


ディランの前に立つのは、殿下の側近レイだった。


「ティアナ様の看病を承諾しましたが」


レイの視線が鋭くなる。


「張り合えとは命じておりません」


「……」


「あなたは王子である前に、

一人の男性として感情を前に出しすぎです。

前から考えればそれはいい傾向ではありますが」


ディランはわずかに眉を寄せる。


「ならいいだろう――」


「よくないです。

あなたは守ろうとして、

逆に追い詰めてしまうことがある」


「……自覚している」


「なら、抑えてください」


静かな声が、重く響く。


「“想い”は武器ではありません。

振り回せば、傷つくのは相手です」


ディランは深く息を吐いた。


「……忠告、感謝する」


その頃。


「レオ」


「は、はい!」


「次に同じことをしたら」


にこっ。


「厨房出入り禁止にします」


「そ、それだけは!!」


「冗談です」


「え……?」


「半分」


「半分!?!?」


少し離れた場所で、レイが小さく咳払いをした。


「……こちらも同様です。殿下は“自重”を」


「ああ、わかった」


2人の叱責は、同時に終わった。


沈黙の廊下。


「……なんか俺たち」


レオがぽつりと呟く。


「左右から説教されてましたね」


「……否定はしない」


2人は同時に、ティアナの部屋の扉を見つめた。


中の静けさを壊さぬように。


「次は」


レオが小声で言う。


「ちゃんと静かにします。」


「同意する」


「殿下も子供みたいなところがあるんですね。

ちょっと意外でした」


「俺もだ、自分も知らない一面があったんだな」



そのとき、扉の向こうから微かな物音がした。


2人は同時に背筋を伸ばす。


――今度こそ、間違えないために。



ティアナside


りんごゼリーを食べ終わり、私はベッドの上でぐーっと伸びをした。

ディランが手配してくれたお医者様にもみてもらい、あと数日はゆっくりすれば大丈夫とのことだった。

そして、お願いして、もらった塗り薬の缶を見つめる。



「……ふぅ」


身体の重さはまだ残っているけれど、昨日よりずっと楽だ。


ディランも、あんな子供みたいな一面があるんだな。


普段は冷静で、感情をほとんど表に出さないのに。

レオ相手になると、途端に大人気なくなるところが少し可笑しい。


(レオは相変わらずだけど)


騒がしくて、距離が近くて、空気をかき回して。

でも、心配してくれているのは伝わってくる。


さて。


今日はまだ休んでいろって言われたし、無理はできない。


軽くシャワーを浴びて、

そのあと少しだけ散歩でもしてこようかな。


そう考えて、上着を羽織り、部屋の扉を開けた。


廊下に出たところで、ちょうど向こうから歩いてきた人物と目が合う。


「……あ」


「お嬢様」


ユウリだった。


相変わらず背筋の伸びた姿勢で、柔らかい微笑みを浮かべている。


「体調はいかがですか?」


「だいぶいいよ!」


自分でも驚くほど、声が明るく出た。


「それは何よりです」


ほっとしたように目を細めてから、すぐに穏やかな口調で続ける。


「ですが、今日はゆっくりなさってくださいね」


「うん、そのつもり」


無茶する気はない。


「シャワー浴びたいんだけど」


そう伝えると、ユウリは頷いた。


「アリスがすでに入浴の準備をしていましたよ」


さすが仕事が早い。


(みんな、私のこと過保護すぎないかな……)


「わかった。ありがとう」


「湯冷めしないよう、お気をつけください」


「はーい」


軽く手を振って、その場を後にする。


廊下を歩きながら、私は小さく息を吐いた。


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