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夜明けが世界を染めるころ、 悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない  作者: 舞響


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揺れる熱情6

ディランside

夜は、嫌いじゃない。


誰もが眠り、

余計な声が消える。


――だからこそ、

自分の感情と向き合わされる。


ランプの灯りだけが残る部屋で、

俺は椅子に腰掛け、

眠るティアナを見下ろしていた。


規則正しい呼吸。

少し赤みの残る頬。


……熱は、まだ完全には下がっていない。

湖に潜ったこと、共鳴を使わせすぎたこと、

俺のせいだな。


「まったく」


小さく、息を吐く。


彼女の周りには、

人が多すぎる。


騎士。

執事。

侍女。

仲間たち。


誰もが、

彼女を気遣い、

触れ、

声をかける。


当然だ。

彼女は、それだけの人間だ。


――わかっている。


それなのに。


胸の奥に沈んだ感情が、

じくじくと疼く。


レオが粥を食べさせたこと。

テオが四葉のクローバーを渡したこと。

ユウリとアリスが交代で看病したこと。

ルイが蜂蜜ソーダを作ったこと。



……セナが、

彼女の手を取ったこと。


ひとつひとつは、

正しくて、

善意で、

必要なことだ。


俺が口を挟む筋合いは、ない。


それでも。


「独占欲、か」


誰に聞かせるでもなく、

呟く。


彼女は、

誰かの“所有物”ではない。


昨日 マルクとの会話で

自分の言葉を思い出す。


――「逃がすつもりはない」


……傲慢だ。


俺は、

彼女の“選択肢”でありたい。


縛る存在ではなく。


静かに立ち上がり、

ベッドの横に膝をつく。


起こさないように、

そっと。


彼女の手に、

指先だけ触れる。


小さく、

温かい。


この手が、

どれほどのものを掴み、

どれほどの痛みを抱えてきたのか。


……知っているつもりで、

まだ足りない。


「反省だな」


小さく、苦笑する。


愛しいから、

手に入れたいのではない。


愛しいから、

選ばれたい。


彼女が目を覚ましたとき、

そこに“居る”こと。


それで、十分だ。


ティアナが、

小さく身じろぎをする。


俺は、

すぐに手を離した。


「おやすみ」


眠る彼女だけに、

そう告げる。


夜の間だけは、

独占してもいいだろう。


そう自分に言い聞かせながら、

椅子に戻り、

再び、朝を待つ。


――次に彼女が目を開けるその瞬間、

一番に視界に入る場所で。


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