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夜明けが世界を染めるころ、 悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない  作者: 舞響


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揺れる熱情3

テオが去ったあと、

部屋の空気が、目に見えて変わった。


ユウリは静かに窓を閉め、

鍵を確認する。


――かちり。


その音が、

やけに重く響いた。


「お嬢様」


振り返ったユウリは、

いつもの柔らかさを一切削ぎ落とした表情をしていた。


「ここからは、

本気の療養体制に入ります」


「……本気?」


「はい」


迷いのない即答。


「まず」


一歩近づいて、

額に手を当てられる。


「熱は下がりつつありますが、

まだ平熱ではありません」


「それから」


手首を取られ、

脈を測られる。


「心拍数がやや高い。

不要な会話、刺激は禁止です」


「え、でも――」


「禁止です」


ぴしゃり。


……逃げ道がない。


「次」


そう言って、

ベッドの位置を微調整し、

枕を整える。


「横になってください」


「もう少し起きてても――」


「横に」


有無を言わせない声音。


大人しく従うと、

布団を丁寧に掛け直される。


「喉は?」


「……少し乾いてます」



すぐにグラスが差し出される。


「一口ずつ」


見張られている気がして、

ゆっくり飲む。


「よろしい」


満足そうに頷くと、

ユウリは椅子をベッド脇に引いた。


「本日は、

30分おきに様子を確認します」


「え……?」


「当然です」


涼しい顔で言い切る。


「殿下にも、

今夜は面会を制限すると伝えました」


「……ディランに?」


一瞬、胸がざわつく。


「必要とあらば、

私が説明しますのでご安心ください」


……それはそれで、

あとが怖い気もする。


「お嬢様」


ふいに、

声のトーンが少しだけ柔らかくなる。


「お嬢様は、

ご自身を後回しにしすぎです」


「皆を守ることも大切ですが」


「倒れてしまっては、

守れるものも守れません」


その言葉に、

何も言い返せなくなる。


「今は、

守られる側でいてください」


「それが――」


一瞬、

視線が優しくなる。


「皆の願いですから」


ユウリはそう言って、

静かに椅子に腰かけた。


「それに…

お嬢様を一番近く長く支えててきたのは私です。

少しぐらい…わがまま言ってもいいんですよ。」


ふわりと微笑む。


「そうかなぁ。」


「はい、お嬢様のわがままなんて可愛いものです」


「それは頼りになるね」


ふふっと笑う。


「さて、もうおやすみください」


そう言って優しく額に手が触れる。



逃げられない。

こういう時のユウリは一歩も引かないんだよな。

でも、不思議と――


あんなに寝たのに安心して、

目を閉じられそうだった。




ゆっくりと、目を開ける。


「お嬢様、起きましたか?」


「……うん」


すぐそばで、

ユウリが穏やかに微笑んでいた。


「失礼します」


額に手を当てられる。


「……だいぶ、熱も引いていますね」


「よかった」


「何か、ご希望はありますか?」


少し考えてから、答える。


「なんか……

さっぱりしたものが、飲みたい」


「承知しました」


ユウリはそう言って、

静かに立ち上がる。


「少し、お待ちください」


その背中を見送ってしばらくすると。


「お嬢様」


軽やかな声とともに、

ルイが姿を現した。


「ハニーレモンソーダ、

作ってきたの」


「ありがとう。

……あれ、ユウリは?」


「私が作ったから行かせてーって頼んだの。そうしたら」


「渋々、ね」


ニヤリと、

楽しそうに笑う。


「いただきます」


グラスを口に運ぶ。


シュワっと弾ける泡と、

蜂蜜のやさしい甘さ。

あとから、レモンの酸味が広がる。


「……おいしい」


「でしょ?」


満足そうに頷きながら、

ルイが言う。


「でも急に飲みすぎると、

体が冷えるから」


「少しずつ、よ」


「うん」


そう答えて、

また一口。


「……そういえば」


ふと思い出したように、

ルイが続ける。


「セナちゃんも、

すごく気にしてたわよ」


「セナが?」


言われて気づく。

そういえば、

朝から姿を見ていない。


「ええ」


「心配で様子を見に来たそうな感じだったけど」


「お嬢様のことを考えて、

遠慮してるのよね

…本当に、

さすがお嬢様を守る騎士」


ふふっと、

楽しそうに笑う。


「じゃあ私はいくわね。

あまり長居すると怒られるもの。

ゆっくり休んでね」


「ありがとう」


頭を優しく撫で、ウィンクして去っていくルイ。


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