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夜明けが世界を染めるころ、 悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない  作者: 舞響


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眠れない夜1

ディランの隠れ家で過ごす、特訓の日々。

体も心も限界まで使い切るような毎日だった。


――真夜中。


どうしても眠れず、私は静かに部屋を出て階段を降りる。


……あれ?


薄暗いランプの下、ソファに腰掛けている人影があった。


「ディラン……?」


「やあ」


振り返った彼は、いつもの軽い笑みを浮かべる。


「眠れないのかい?」


「ええ……少し」


「なら、少し話さないかい」


「はい」


私は隣に腰を下ろす。

こうして並んで、何も考えずに話すのは――本当に久しぶりだった。


「こうやってゆっくり話すの、久々ですね」


「そうだね」


ディランは天井を見上げ、静かに息をつく。


「訓練づくしの日々だったからね」


少し間を置いて、彼は私を見る。

静かな夜の中で、ぽつりと言った。


「俺はさ……ティアナ、君のことが、好きみたいだ」


「……は?」


思わず、間の抜けた声が出る。


ディランは視線を逸らさない。


「冗談抜きで、だよ」


「それは……また、急ですね」


私がそう返すと、彼は小さく笑った。


「だからこそ、君のことを知りたい」


その声は穏やかで、真剣だった。


「君が、どんなものを見て、

どんなことを思いながら、これまで過ごしてきたのか」


私は少し視線を落とす。


「……そんなに、面白いものではないです」


「それでも、だよ」


即答だった。


「君の話なら、なんでも興味がある」


ふと顔を上げると、彼の視線がまっすぐ私を捉えていた。


「……随分と、真っ直ぐに見るようになりましたね」


そう言うと、ディランは少し困ったように、でも真面目に言う。


「君が言ったんだろう?

まどろっこしい、って」


一瞬の沈黙。


「だから、君とは――

真っ直ぐ向き合う努力をしてる」


胸の奥が、静かに揺れた。


「……そうですか」


それだけ答えると、ディランは穏やかに笑う。


「……なら、私にもディランのことを教えてください」


ディランは一瞬、目を細めて笑った。


「それこそ退屈だと思うけど」


「それでもです。だって、フェアじゃないでしょ?」


彼は少し考え込み、やがて肩をすくめる。


「いいよ、話をしよう」


私はわくわくする気持ちを抑えながら、彼の言葉を待つ。


「じゃあ、まずはそれぞれの生い立ちから……かな」


ディランは軽やかに話し始める。

幼い頃の失敗談、ちょっとしたいたずら、けれども家族や仲間のこと。

言葉の端々に微笑みが混ざり、時折ふっと笑い声を漏らす。


「そうそう、あのときは屋根から落ちかけてね……」

「え、そんなことあったんですか!」

「今でも思い出すよ。レイのヒヤヒヤした顔を」


私は笑いながら、彼の少年時代の姿を想像する。

真面目で時に厳しいだけの人だと思っていたディランの、ちょっと抜けた可愛らしい一面に胸が和む。


「最初に君に会ったときのことも、話そうかな」


私は顔を上げ、興味津々でディランを見つめた。


「君……女の子なのに、あの時は泥だらけでね。馬の世話をして、剣術までやっていた」


ディランの声には、くすっとした笑いが混じっている。


「ええ……あれって、そんなに変に見えてました?」


「正直、最初は変な子だと思ったよ」


彼は肩をすくめて、素直に言った。


「でもね、ただの変な子じゃなかった。

強くて、真剣で、でもどこか無邪気で……おてんばなのに、芯がある」


一瞬言葉を切り、思い出すように続ける。


「それに、剣術も馬術もどんどん上達していく。

見ていて……正直、驚いたものだ」


その言葉に、胸の奥がじんわりと熱くなる。


「だから……興味を持ったんだ。君のことを、もっと知りたいって」


ディランは、真っ直ぐ私の目を見た。


「どうして、こんなにも普通の女の子とは違うのか……

ずっと気になっていた」


私は照れ隠しのように小さく笑い、頷く。


「そうですか……そんなに目立ってました?」


「目立ってたというより……」


ディランは柔らかく微笑む。


「忘れられなかった、が正しいかな」


夜の静けさの中、その声は穏やかに響いた。


「初めて会った日から、君のことが――

ずっと頭から離れなかったんだ」


ディランが熱っぽい視線を向ける。


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