仲間の招集1
「……ガイルとの対決に向けた作戦会議に入ろうか」
そうディランが口にしてから、扉に目を向けて続ける。
「その前に――仲間を集めよう。
信頼できる仲間をね」
その瞬間。
扉が開き、ぞろぞろと見知った顔がなだれ込んできた。
「……え?」
思わず声が漏れる。
「なんで、ここに……?」
「お嬢さまぁー!」
勢いよく駆け寄ってきたのはテオだった。
ぎゅっと距離を詰めてくる。
「ちょっと離れてくれるかな?今は俺の婚約者だよ?」
隣のディランが鋭く睨む。
「それ、偽物でしょ?」
テオが即座に噛みついた。
「偽物とは失礼だな」
ディランの声が低くなる。
空気が一瞬、ぴりっと張りつめた。
「……お嬢様」
その声に、私は振り返る。
銀髪の青年が、静かに立っていた。
「セナ……」
その顔を見ただけで、胸の奥がすっと落ち着く。
思わず、ほっと息が漏れた。
「さすが殿下の隠れ家!
素敵すぎない?」
はしゃいだ声で、ルイが周囲を見回す。
「ほんとだな!」
続いてレオも元気よく入ってくる。
「お嬢様」
ユウリもいつもの穏やかな表情で一礼する。
「あの……入ってもいいですかね?」
「失礼します!」
アレンとロベルトが、少し緊張した様子で頭を下げる。
さらにその後ろから、
「……来ちゃいました」
と、アリスも姿を現した。
レイさんが最後に入ってきて深く頭を下げる。
私は、全員の顔をゆっくり見渡す。
「みんな……」
一歩前に出て、はっきりと言う。
「俺が呼んだんだよ」
視線が集まる。
「一緒に戦ってくれる、
頼もしくて――力強い仲間たちをね」
ディランの言葉に胸の奥が、熱くなる。
もう迷わない。
もう独りじゃない。
ここからが、本当の戦いの始まりだ。
全員が揃ったことを確認して、ディランが静かに口を開く。
外は真っ暗で、ランプの光が部屋を柔らかく照らす。
影が壁に揺れ、静寂に緊張感が漂う。
「作戦を始めようか」
ディランの声は低く、しかし明瞭だった。
「目標は……ガイルの野望の阻止だ。
彼は魔女の雫を魔女の紅血に変え、この世の中を掌握しようとしている。
そのための切り札として、ティアナの血と魂を狙っている」
言葉が部屋の空気を張り詰めさせる。
「だけど……」ディランは少し間を置く。
「魔女の雫を破壊したことで、蝶の会は壊滅した。
おまけに、オパール公爵家の不祥事により、ガイルはいま身動きが取れない状態だ」
その瞬間、レオが手を上げて口を開く。
「あのー……俺、詳しく知らないんですけど……
その宝石事件って、ガイルは何のためにやってたんですか?」
ディランは軽く頷く。
「そうだね。
宝石事件について知らない人もいるだろう。
順を追って話そう。
まず、魔女の雫という宝石はただの魔宝石じゃない。
人の感情――弱さ、憎悪、恐れ、絶望――を媒介にして力を増幅させる特別な宝石だ。
ガイルはそれを利用して紅血を作り、絶大な魔力を手に入れようとしていた。そして…」
私は静かに口を挟む。
「…私の存在…」
ディランの言葉が静かに響く。
「そうだ。ティアナ。
君の血と魂は、紅血を完成させる“鍵”になる可能性がある。
だからこそ、君の周りでガイルは事件を起こした。
君の力を確認するために……」
部屋の空気がさらに引き締まる。
ランプの光が揺れ、全員の視線が一点――ティアナ――に集まった。
「だから……エマも……」
ルイがそう告げると、胸に鋭い痛みが走る。
――私が原因だったのか。
気まずさに胸が重くなる。
だけど、そのルイはふっと肩の力を抜き、柔らかく笑った。
「お嬢様が気にすることじゃないわ。
そのガイルのせいなんだから」
明るく言うルイの声に、少しだけ心が軽くなる。
私はは深く息を吸い込み、拳をそっと握る。
「ありがとう……ルイ」
「さて、次はこの状況でどう動くかだ。
みんな、自分の役割を理解してほしい。」
「まず、ガイルを潰すためにするべきことは――研究施設の破壊だ」
ディランが地図を指さす。
「そこに、魔女の雫や研究の全てがあるはずだ」
ルイが眉をひそめながら訊く。
「それを壊せば止められるってこと?」
「そうだ。ただ問題なのは、その研究施設の正確な場所がまだわかっていないこと」
ディランの声には冷静な焦りが混じる。
そこにレイが手を上げる。
「目星をつけた場所があります。そこをまず調べてみます」
テオもゆるく手を上げる。
「俺もそういう裏の調査は得意だから、やるよ」
ディランは軽く頷く。
そして私はも口開く。
「ありがとう、レイさん、テオ。」
レイさんは軽く頭を下げ、テオはへにゃりと笑い手を振る。
何だかテオのいつも通りさに救われる。
「場所がはっきりするまでは、それぞれの力を訓練しておこう」
そして視線は私に戻る。
「鍵を握るのは…ティアナ君の共鳴の力だ」
私は頷く。
ディランが続ける。
「君のその力は、魔宝石を浄化するためだけのものじゃない。
人にも使えるはずだ。もし君が共鳴を使えば、その相手も力を強化できる」
私は目を丸くする。
「そうですよね……ナタリーさん」
ディランがナタリーを見ると、ナタリーは静かに頷く。
「ええ、共鳴という力はさっき説明した通り、魂と魂が同調したときに発揮される。
単なる補助魔法ではなく、相手の潜在能力を引き出すこともできるのよ」
「つまり……」
私は拳を握りしめる。
「私の力を使えば、仲間全員の力をさらに高められるってことね」
「その通りだ」
ディランの目が、真剣に私を見つめる。
「共鳴を活かせば、単純な力押しではなく、戦略的にガイルの手を封じることもできる」
セナが淡々と告げる。
「じゃあ、俺たちはそのための訓練に集中すればいいってことだな」
セナの方をみると、セナは何も言わずに力強く頷く。
ほんと心強いな。




