表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜明けが世界を染めるころ、 悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない  作者: 舞響


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

132/222

ディランの報復

ディラン side


さて――可愛い婚約者から、どうにか信用を得なければならない。


「随分とご機嫌ですね」


向かいに座るレイが、呆れたように口を開く。


「当然だろう?」


彼女を味方につけることには、大いに意味がある。

いや、意味どころか――必要不可欠だ。


「ティアナ嬢が気の毒ですね」


「主人に対して失礼だな」


思わず眉をひそめる。

レイはどうにも、俺への敬意が足りない。


「それよりも」


レイは軽く咳払いをして、話題を切り替えた。


「紅輝オパール公爵家次男、リチャード・ファイアオパールですが。

世間知らずな令嬢を騙し、闇カジノへ介入させているようです」


「……続けろ」


「頃合いを見て“バラされたくなければ”と脅し、金銭、または身体的関係を要求。

令嬢を操るために、《魔女の雫》を使い、判断力を鈍らせていると見られます」


「どうしようもないクズだな」


思わず吐き捨てる。


「それがティアナ嬢に近づこうなど――虫唾が走る」


「それは激しく同意します」


珍しく、レイの声に感情が滲んだ。


「それで、《魔女の雫》の入手経路は?」


「ファイアオパール公爵家です。

ガイルの指示のもと製作されている“武器”に使用されているものを、横流ししたのでしょう」


……やはり、そこに繋がるか。


「王命を盾に、違法行為。

しかも貴族の令嬢を餌にするとは、救いようがない」


私は指先で机を軽く叩く。


「ティアナ嬢に被害は?」


「今のところ、直接的な被害は確認されていません。ただ――」


レイは一瞬、言葉を選んだ。


「接触を試みている形跡があります」


「……そうか」


胸の奥に、冷たいものが落ちた。


彼女は、まだ何も知らない。

俺が何を抱え、何と戦おうとしているのかも。


「なら尚更だ」


俺は立ち上がる。


「リチャード・ファイアオパールは、俺が潰す」


「正面からですか?」


「まさか。

“婚約者”を守る立場として、最も合法的で、最も逃げ道のない形でな」


レイは小さく息を吐いた。


「……本当に、ティアナ嬢を大切にするおつもりで?」


その問いに、私は一瞬だけ言葉を失う。


嘘なら、いくらでも言える。

だが――


「少なくとも」


俺は窓の外を見やる。


「彼女を利用するつもりはない。

それだけは、本当だ」


信用されるには、まだ遠い。

だが、守ることなら今すぐできる。


可愛い婚約者が、

この国の腐臭に触れる前に――。



「オパール公爵家も後々どうにかしないとか…まあ、その前にリチャードを痛い目に合わせれば、しばらくオパール公爵家も痛手だろう」


「そうですね」


「ついたようだ、さっさと始末しよう」


変装がてらフードを目深にかぶる。

王族騎士団も外で待機させておく。

中は薄暗いが下品な笑い声に酒の匂いが漂っている。


「あちらにいますね」


「本当だ」


一際盛り上がっている席にこっそり近づく。彼女の名前が聞こえ耳を傾ける。


「なあ。リチャード。お前ラピスラズリ伯爵家の長女に結婚申し込んでるんだろ?どうなんだよ」



「あー、次期当主をティアナ嬢にと聞いたからね。上手くいけばラピスラズリ伯爵家を手中にできると思ってさ。

だけど中々誘いに乗ってこなくてさー。頭の良い女はめんどくさくて嫌だよな」


「いやでもすげぇー美人だろ。スタイルもいいしさぁ。たまんねぇーよな」


「確かに。ああいう気の強そうな女がひれ伏すのは気分がいいよなぁ。この魔女の秘薬を使えばちょろいだろ」


「おいおい、それ相当 値が張るもんだろ。どうしたんだよ」


「まあ上手くやったのさ。美味しい思いはしないとなあ」


……やはり、魔女の雫。


「レイ」


小さく囁く。


「ええ。証拠は十分です」


これ以上、聞く必要はない。

聞き続ければ――私の理性が保たなくなる。


「行くぞ」


フードを外し、一歩、光の中へ出る。


「リチャード・ファイアオパール」


その名を呼んだ瞬間、周囲の空気が凍りついた。


「誰だ、お前……」


リチャードが振り返り、私の顔を見た瞬間、血の気が引いていくのがわかる。


「お、おい……まさか……」


「残念だが、“まさか”だ」


静かに告げる。


「王命違反。

違法薬物の使用および流通。

貴族令嬢への脅迫と強要」


一つ一つ、罪を並べる。


「そして何より――

俺の婚約者に、汚い手を伸ばした」


笑みを浮かべたまま、目だけは冷やす。


「覚悟はいいかい?

君は今夜、“貴族”として終わる」


外で待機していた騎士たちが、一斉に踏み込む。



「レイ 魔女の秘薬については口外せず世間に公表するように手筈を」


「かしこまりました」


「オーウェン1人も取り逃すな。隅々まで調べろ」


「はい、殿下!」


周囲が騒がしく動きだす。

さて、後処理をさっさとしょう。


目の前のリチャードをめちゃくちゃにしてやりたい気持ちもあるが、そんな事をしても彼女は喜ばないだろう。

俺の気は多少済むか。そう思い見ると、ビビりたおしながらナイフを手に取るのが見える。

愚かなやつだ。


「このおおお」


向かってきたところをすかさずレイが捻り潰す。

先ほどもう1人押さえこんでいたやつもすでに伸びている。さすがレイ。


「殿下に触れることは決して許しません」


レイが押さえつけているところに近づき、リチャードの手に持っていたナイフごとグリグリと踏み潰す。



「ふぎゃあああ」


「こんな穢らわしい手は要らないだろ」


バキッと骨を折る。


「ぎゃぁあああ」

リチャードの情けない悲鳴が響き渡る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ