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夜明けが世界を染めるころ、 悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない  作者: 舞響


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ティアナの反省2

朝食を用意してくれているとのことで、私たちは揃って席についた。

昨夜のあれこれが頭をよぎるが、とりあえず今は朝だ。朝食だ。現実を生きよう。


「おはよう。みんな、よく眠れたかな」


殿下が一人ひとりの顔を見ながら、穏やかに声をかける。

……この爽やかさである。昨夜の混乱の中心人物とは思えない。


「はい、昨晩は寝てしまって申し訳ありませんでした」


トワがぺこりと綺麗に頭を下げる。

この礼儀正しさ、見習いたい。主に昨日の自分が。


「いいんだよ。こちらも色々トラブルがあって、迷惑をかけたからね。気にしないでおくれ」


そう言って優しく微笑む殿下を見て、トワは明らかにホッとした表情になる。


朝食が運ばれ、全員で食べ終える。

フレンチトーストが、もう、びっくりするくらい美味しかった。


外はカリッ、中はふわっ。


(今度レオに作ってもらおう。無理って言われたら殿下にレシピって言おう)


満足感に浸っていると、ユウリがすっと立ち上がった。


「殿下、昨夜はお嬢様が大変失礼いたしました」


深々と頭を下げるユウリ。

その後ろで、私も反射的に頭を下げる。


「いいや、こちらこそワインを飲ませてしまって申し訳なかったね。

それに、デホラの件でも迷惑をかけた」


殿下は申し訳なさそうに言うが、いやいや、ワインは自分で飲みました。

しかも勢いよく。


「いえ、殿下にお怪我がなくて何よりです。

それよりも……」


ユウリが、すっと顔を上げる。


「お嬢様に、手を出していないでしょうね」


ジロリ。


……いや、ちょっと待ってユウリ?

その睨み方、完全に執事じゃなくて取り締まり官。


(ないないないない!!)


殿下は殿下だよ!?

選び放題の殿下が、酔っ払いの私に何かするわけ――


……いや、ちょっと待て。

昨夜の記憶があいまいな私が一番信用ならないのでは?


私は内心で一人ツッコミを炸裂させながら、全力で首を横に振った。


いやほんと、ユウリ。

それはさすがに、ないって。


「君は心配症だな。何もないよ」


殿下はあっさりそう言って、肩をすくめた。

その余裕、昨日の私にも分けてほしい。


「……そうですか」


納得したようで、していないユウリの返事。


「あ、それと――」


殿下がさらりと追撃してくる。


「お酒は、今後一切一滴も飲ませないように」


「十分に承知しております」


即答。迷いゼロ。

……ユウリ、そこは一瞬くらい迷ってくれてもよくない。


「え、少しもダメ?」


思わず声が出た。

だって、あのワイン、本当に美味しかったんだよ?

記憶はわりと飛んだけど、味だけはしっかり覚えてる。


「絶対ダメ」

「ダメです」


2人が、ぴったり息を揃えて怖い笑顔を向けてくる。


……なにこの連携。

昨日の嵐より怖いんだけど。


「は、はい……」


これはもう交渉の余地ないな。


湖畔での休暇は、本当にあっという間に過ぎていった。

昨日の嵐が嘘のように空は晴れ渡り、湖面は静かに光を反射している。


(昨日は色々あったな…)


出発の時間になり、私は殿下とレイさんの前で頭を下げた。


「それでは、お世話になりました」


「うん、また近いうちに。

今度はちゃんと、直接会いに行くよ」


殿下はそう言って、少し意味ありげに笑う。


「昨日の話も、ちゃんとしよう」


昨日の話。

――酔っていたけど、ぼんやり覚えている。


共闘、という言葉。

真面目な話をしていたのにお酒を飲んでしまい曖昧になってしまったこともある。


(……これは、あとで逃げられないやつだ)



「……わかりました」


私はそう答え、今度はしっかりとした意識で頷いた。


殿下の別荘を後にし、列車に乗り込む。

走り出す車窓を眺めながら、私は小さく息を吐いた。


休暇は終わり。

嵐も終わり。

そして――


(……ほんと、フレンチトーストだけはまた食べたい)


そんなことを考えながら、列車は静かに動き出した。

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