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夜明けが世界を染めるころ、 悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない  作者: 舞響


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懐かしき思い出2

いつの間にか、彼女にも執事がついていた。

聞いた話によると、ラピスラズリ伯爵家で長年先代に仕えてきたベテラン執事を祖父に持つユウリという人物らしい。


とても優秀なようで、次期当主となるであろう長男のマルクではなく、ティアナ嬢についたという。


本来なら、次期当主についた方が地位や名声を手に入れられる――いわゆる出世コースだ。

それを捨てたとバカにする者もいたらしいが、どう考えてもティアナ嬢を選んだことは賢明な判断だった。

バカにしていた連中には、少し痛い目に合わせたのは内緒だが。


12歳になったあたりから会話することはおろか、直接出向くこともなくなった。

そして気づけば10年が経っていた。


それでも、彼女の好きそうな本を探しては、執事のユウリに渡してもらうようになった。

どうやら、それがようやく私の仕業だとバレたらしい。


我ながら、まどろっこしい性格だと思う。


彼女を抱えベッドに移動させる。軽すぎる…

ちゃんと食べているのだろうか。

ベッドで寝息をたてる彼女を見つめる。

綺麗なスミレ色で毛先は淡い桃色。まるで夜明けみたいな綺麗なグラデーション。髪をまとめている飾りが、寝るには少し痛そうで、そっと髪を解く。

綺麗な髪がハラハラと解けていく。


寝息をたてて眠る彼女は、とても愛らしかった。



髪が顔にかかり、そっと頬を撫でる。

色白の肌に長いまつ毛。目の下にはクマが見える。相変わらず努力家なようだ。


俺の瞳のことを知る者は、数少ない。

亡くなった両親。

祖父と兄、そしてレイだけだ。


俺は、エメラルドの瞳も、ルビーのように赤く染まる瞳も、どちらも好きではない。

王位なんて継ぎたいとは思わない。

ただ、中途半端なことをすれば誰もついてこないし、何より彼女がそんな俺を好まない。

……とはいえ、少しでも関心を持ってもらえるだけ、まだマシか。


俺の赤い瞳をルビーのように綺麗だと言った彼女。

同じ赤い瞳を持つ別の誰かを思い出して、顔を赤くしていた。

中々癪に触る。


彼女の寝息を聞きながら、ゆっくりと目を閉じた。


これまで、彼女を遠くから見守るだけで満足してきた自分。

それでも、10年という歳月は、ただ手をこまねいているだけでは済まされないことを教えていた。


――俺は、彼女と向き合わなければならない。


心の中で決意を固めながらも、胸の奥に一抹の不安がよぎる。

彼女が大切だから、危険に巻き込みたくない――そう思う自分と、

彼女の力が必要だ、共に戦わなければならない――そう考える自分が揺れていた。


しかし、彼女はとうに覚悟を決めている。

この強い子は、もう迷わない。

ならば、俺も覚悟を持って向き合うしかない。


――一緒に戦おう。


目を開けると、まだ眠るティアナ嬢の顔がそこにある。

その寝顔を見て、微かに笑った。

俺の前で泣いたり、迷ったり、全部見せてほしい。

言葉には出さない。ただ、行動で示す。日々の小さな積み重ねで。


これまでのように、本をこっそり渡すだけの遠回しの方法ではなく、

正々堂々と直球で向き合おう。

彼女にとっても、そして自分にとっても、それが何より大切だと理解していた。


そして、心の奥底で一つ強く思う。


――ティアナ、俺はお前にとっての一番になりたい。


「本気でいかせてもらうよ」


呟きとともに、彼は心を引き締めた。

これからは、彼女と共に歩み、戦い、守り抜く――その覚悟が、胸に確かに宿っていた。



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