其の二 人ならざるもの
パチンコで大負けした俺は、真夏の暑さを避けるために小さな神社に立ち寄った。
そこで有り金全部を賽銭箱に入れたところ、突然不思議な少年が現れ、その少年に「妻になれ」と告げられる…
「は………?」
木漏れ日が差し込む小さな神社で、
俺は呆然と立ち尽くしていた。
目の前には、白い着物に身を包み、
銀髪をなびかせ微笑んでいる少年が一人。
「なんだ御主、我が恐ろしいか?
取って食ったりはせぬ……まぁ、あるいは…」
口元を着物の袖で隠し、上品に笑うその姿には、
どこかゾッとするような美しさがあった。
急に恐ろしくなった俺は、神社の出口に向かって全力で走り出した。
しかし、サイズの合わないつっかけのせいで盛大に転びかけたその時、
「御主、まるで犬ころのようではないか」
再びふわりと白檀の香りがするとともに、
俺は優しく後ろから抱きしめられ、転ばずに済んでいた。
「驚かせて悪かった、我はそのような荒神ではない」
「ひ、ひぃ…っ……えっ、て、て、てか…浮いてる!?」
恐る恐る振り返ると、先ほどの少年は俺を抱きしめながら宙に浮いていた。
「我も神だからな、この程度の力はある」
「か、神…様…?…へ……?」
俺はなんとも間抜けな返事をしてしまった。
「まぁ、人ならざるもの、とでも思っておけばよい」
「人ならざるもの……?」
「そうだ、御主、運が欲しいと言うたであろう」
「は、はい……」
俺は混乱しながらも、なんとか返事を絞り出した。
予想外の連続で、理解力は皆無に等しいが…
「我の妻になれ、食うには困らん。ただ…」
「ただ…?」
「御主も人ならざるものになってもらう」
真夏の猛烈な暑さと、意味不明な出来事の連続で
視界が真っ暗になった俺は、
"人ならざるもの"と名乗る少年の腕の中で気を失った。
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