其の一 全財産なげうって
「クソッ……っんで出ねーんだよ!!」
(ついてねぇ、最近の俺はとにかくついてねぇ。
運命だの、神様だの、そんなものが無いのは俺でも分かっている。
でも、今日は勝てる気がしたんだよ……まさか、仕送りほとんど使っちまうなんて、思うかよ……。)
パチンコ屋を出た後、俺は自販機の裏で短くなったタバコをくわえて、今月これから自分がどう生きていくかを考えていた。
今日は8月17日、今月は残り14日ある。
そして、次の仕送りが振り込まれるのは9月5日である。
「終わった……」
ジリジリと焼け付くような暑さと、けたたましいセミの鳴き声が耳に張り付く。
しばらくぼーっとした後、始めは怒りで埋め尽くされていた感情も、だんだんと虚しさへ変わっていった。
「大学サボって、パチ屋で仕送りみーんなスッて………俺、本当に何やってんだ………」
ふとポケットに手が触れて、チャリと音が鳴った。
今月の俺の残りの全財産、174円だ。
大学をサボってパチンコ屋に入り浸る俺でも、ここまで困窮することはなかった。
金無し、学無し、友人無しの俺は、もはや人生に絶望してしまっていた。
だが、人生に絶望しても、今は8月。
尋常じゃない暑さだ。
とにかく涼しい所に行かないと、命の危機を感じる。
金が無いからパチンコ屋には居座れない。
自宅は昨日電気が止まってしまった。
「あっちぃ………」
思わずそう声が漏れるほど、暑い。
暑さで朦朧とする中、俺は涼を求めてフラフラと歩き出した。
サイズの合わないつっかけで運ぶ足は重く、うなじにじっとりとした汗が伝うのを感じる。
気が付くと俺は、古い小さな神社にたどり着いていた。
木々に囲まれ影が出来ており、先ほどまでの場所よりはかなり心地良い。
そして、ふと社を見ると、ボロボロになっているが賽銭箱がある。
俺の所持金、もとい全財産は174円。
ふと、こんな金額持っていても仕方ないじゃないか、という発想になってきた。
俺は所持金を全て賽銭箱に投げ、二礼二拍手一礼をして、手を合わせた。
「今月の全財産を投げうちました。俺はもう一文無しです。どうか、どうか、俺に運を分けてください…」
声に出して願いを言ってみたものの、なんだか気恥ずかしくなってきた俺は、出口に向かって踵を返した。
すると、ふわりと白檀の香りが漂い、
「待て、そこな人間。我は御主が気に入った」
と、少年の声がした。
誰もいないと思っていた俺は驚いて振り返ると、白い着物を着た銀髪の少年が立っていた。
「は?…君…誰…?ていうか、今なんて?」
「我は御主が気に入ったと言っているのだ」
状況がつかめず、俺は混乱した。
誰もいないと思っていた神社に、妙な出で立ちの少年がいる。
しかも、俺のことを気に入った、と…
「妻になれ」
少年が俺のほうを見て、はっきりとした口調で言った。
「は?妻って……俺男だけど?え…?君なんなの?」
「些末なことよ、御主は今日より、我の妻になるのだ」




