魔鳥【WEB】
魔鳥
魔鳥が住むと言われている、都内某所のタワーマンション。
その地下へと降りる階段の、壱廻壱號室と書かれた鉄の扉がある。
魔鳥さん魔鳥さん魔鳥さんと口に唱えながら3度ノックしすると、コンコンコンと内側から返事が帰ってきます。
魔鳥さん魔鳥さん魔鳥さんありがとうございますと言ってから、合鍵で鍵を開けて内開きの鉄の扉をあけ右螺旋状のコンクリートの階段を鼻歌混じりで降りてゆきます。
携帯用のライトは必須です。
暫く降りていくと右螺旋から左螺旋へとかわる踊り場があります。その踊り場の80円自動販売機に100円投入してミルクたっぷりのカフェオレを買うとガシャコンガシャコンと20円のお釣が返ってきます。
ミルクたっぷりのカフェオレをグビグビしながら、左螺旋の階段を降りてゆくと人ひとり通れるくらいのしっかりした造りの石造りのトンネルがあります。
体感で30分くらいかなトンネルを抜けるのに……多分。
ポチョチョン、ポチョチョンと滴り落ちる雫。
たまに忠太と名付けたネズ君に出会います。
鉄格子の扉までたどり着くと、わたしの部屋はもうすぐです。
梅ザラメのカキピーとロング缶2本を携えて。
魔鳥さん魔鳥さん魔鳥さん本日も間借りいたしますと唱えながら、木製の板戸をノックノックノック。
ドン! ドン! ドン!
魔鳥さん魔鳥さん魔鳥さんありがとうございます。
木製の板戸を横にスライドすると、右に自動で蓋の開くトイレ、左に天然温泉の大理石のお風呂があります。
豆電球の紐を引っ張ると、ゆらゆら揺れながらお部屋を照らしてくれます。
シーンと静まり帰った、京畳が縦1列に13畳並べられた窓の無い間取り、縦長のワンルーム、家賃8,800円の部屋にわたしは住んでいます。