06.金田一耕一、再び!
「八〇墓村の祟りじゃ~」
はい、アウトー!! カエラちゃんさん、それはまずいですって!
やあ、読者諸君、久しぶりだね! 今ぼくがどこにいるか気づいたかい? そう、なんとぼくはまたあの異世界に来ているのだ。それは僅か数時間前……
ぼくはいつものように事件を探して街を散策していた。
うむ、やはり生まれた街はいい。異世界へ冒険なんてのも悪くなかったが……いやいや思い出を美化するな! 超怖いモンスターもいたし、歩き詰めだったり、穴掘りしたりと大変だったろ!
とにかくぼくは我が身が平和な日本にあるのを感謝しながら歩いていたんだ。すると、ややっ!?
向こうには有名な不良三人組! 横断歩道が青になるのを待つ彼らの後ろからは、荷物を大きな風呂敷に詰め込んだ腰の曲がったおばあさんが!(そんな絵に描いたようなおばあさんっているの?)
おばあさんがふらついて、背負った荷物が彼らの一人に当たった。彼らはいかにも因縁つけそうな悪い顔で振り返る。
事件だ! ここはぼくが行って、おばあさんを庇わなければならないだろう! 大丈夫! ぼくも異世界に行って修羅場は潜り抜けてきたんだ! それくらいの力はつけたはず!?
そして足元を確認せず、走り出したぼく。そこにはまた蓋の開いたマンホールが!
いいか! マンホールの蓋っていうのは四十キロ(グラム)くらいあって、普通は開いてるもんじゃないんだぞ! 何の罠だ、これはー、これはー、これはー(←エコー)
という訳だ。気づけばぼくは再び異世界に来てしまったという訳だ。
ちなみに出現したのは、以前、青蜥蜴のカエラちゃんさんとユーシャさん達が戦った場所。つまりぼくが掘った穴の中だ。
あの時に戻ったのかと思ったが、あれから多少時間は経っていたようで、周りには誰もいなかった。
まあとりあえず一回這い出してもう一度落ちてみたよね。でも残念ながらそう簡単に戻れはしなかった。
うーむ。ぼくは穴の中で土まみれになりながら、座禅を組んでみる(意味はない)
ぼくもあれから異世界というものに少し興味を持って、それらしい関連書籍(ラノベ)を読んでみた。つまりだ、異世界に召喚されるという事は、このぼくに何らかの役目があるという事ではないだろうか。
戦闘能力ははっきり言ってゼロ! だがぼくには人より優れた洞察力、推理力がある。その能力が必要とされているのではないか……
ぼくが思考の海に沈んでいると、穴の上から見知った声が響いてきた。
「あら~? コーイチやないか~」
きれいな黒髪が青く光る美人のお姉さん、カエラちゃんさんだ。
「あんな~、ここの穴、そのままじゃ危ないから埋めに来たんや~」
カエラちゃんさんは、ぼくを穴から引っ張り出しながらそう言った。うむ、やはりカエラちゃんさんはいい人|(※モンスター)だな。カエラちゃんさんは穴埋めは手下の青蜥蜴さん達|(彼らは基本人間に化けているらしい)に任せて、ユーシャさん達と再会するべく、ぼくを連れていってくれた。
「コーイチー! 心配したぞ!」
ぐはっ、ユーシャさん、ハグが激しい。ぼくは以前泊まっていた宿でユーシャさん達と再会した。しかしユーシャさん、力が強い。潰れそうだ。だがそれだけぼくの事を気にかけていてくれたって事か。やはり彼もいい人だ。
「コーイチ」
「コーイチ」
「コーイチくん」
ユーシャさんの後ろには(まだそう時間も経ってない気がするが)懐かしい顔ぶれが並ぶ。
ぼくは異世界の資料(ラノベ)を読んで勉強したぞ。マリナさんはマホーツカイ。つまり魔法使いだ! ゼンジさんのシーフというのも犯罪者の盗人と言う意味ではなく、あくまで便宜上仕分けされる冒険者の職業の一つ! そして優しい顔のプリーストのエイドリアンさんは、ヒール(悪役)じゃない。彼は治癒魔法が使えるという事なのだ!
どうだ! ぼくだって同じボケをかますほど愚かではないんだぞ!(ドヤ顔)
まあとにかくみんな友好的に迎えてくれた。前はぼくの事を小馬鹿にしていたようなゼンジさんも、一度ぼくに助けられた(スケ○ヨ状態を)からか、「よく戻って来たな!」とぼくの頭をヘッドロックして、お釜帽ごとぐりぐりしてくる。
ただ感動の再会をした後は、エイドリアンさんはちょっと困り顔で言った。
「しかしどうします? 我々はちょうどこの町を出ようとしていた所です。この世界に頼りのないコーイチくんを置いていく事になりますが……」
「何を言っているんだ、エイドリアン。彼も連れていくに決まっているだろう」
ユーシャさんの言葉にみんなが驚く。だがユーシャさんは一度テーブル席に腰を下ろし、手を組んでみんなを見回した。
「コーイチがこの世界に帰ってきた事には意味がある。再びおれ達と再会した事にもだ。エイドリアン、君が言っていた事だぞ?」
異世界人には役目があって、この世界に召喚されてくる。彼らは前回ぼくが帰った後にそういう話をしたらしい。
「青蜥蜴R、いや、カエラと友好的な関係を築けたのは、そう言う事じゃないのか?」
「……モンスターと仲良くする事が、神の思し召しだという事ですか……?」
「それはわからない。危険なモンスターがいる事は確かなのだから。だが」
ユーシャさんは珍しくうるさくしないように後ろにいたカエラちゃんさんに目を向ける。
「今、彼女を退治しようと思えるか? おれ達は重大な間違いを犯さなくて済んだのかもしれない」
「なんや、泣けるな~」
ユーシャさんの言葉に、カエラちゃんさんは笑いながらうっすら涙を光らせる。エイドリアンさんは軽く目を閉じた後、ゆっくりと吐き出すように言った。
「そう……ですね。コーイチはわたくし達の固定観念を変えてくれる力がある。賛成しましょう。危険なクエストですが、コーイチを連れていく事を」
え? 危険? ちょ、ちょちょちょ、どういう事!?
そこでカエラちゃんさんが髪の毛を口にくわえ、手を下がらせた幽霊のポーズでぼくの顔を覗き込んできた。そして冒頭の台詞を言う。
「八○墓村の祟りじゃ~」
だからそれアウトですって!
「何がアウトかわからんけど、じゃあこれで行くわ」
カエラちゃんさんは再び髪をくわえ、同じポーズ。
「八つ墓の祟りじゃ~」
あんまり変わってませんから!!
あくまで金田一耕助シリーズのネタで行きますよ! 一ちゃんの方は少年だった頃のTVシリーズしか見てないので、既に記憶の彼方