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(異世界)名探偵 金田一耕一  作者: 真喜兎
(異世界)名探偵 金田一耕一
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01.はじめまして!

 やあ! はじめまして、読者諸君! ぼくは金田一 (きんだいち)耕一(こういち)。なになに? あの有名な名探偵に名前が似てるって?


 それはそうさ! ぼくはあの有名な名探偵の孫……とかそんな事は全然ない。なんなら公認の孫、(はじめ)ちゃんとも何の関係もない。ただ名字が同じってだけの赤の他人さ!


 だが見てくれたまえ。白(がすり)の着物に袴。そしてお釜帽にインバネスコート。そう、ぼくはかの名探偵に憧れている現代の中学生、歳は十三歳だ! あ、頭は清潔にしているから安心してくれ!


 ちなみにぼくのじっちゃんは探偵ではない。普通に役所の元公務員だった。親があの有名な探偵シリーズのファンで、危うく同じ名前をつけられそうになったが、出産証明書を出した後にじっちゃんが「それダメだろ」と、諸々の理由を察し、じっちゃん権限で名前を変えたという逸話がある。


 じっちゃん、グッジョブだ。さもないとこの作品のタイトルでどこかから怒られていたかもしれない(既に危ないとかいうツッコミはよしてくれ)


 ああ、一つ言っておくが、もちろん「見た目は子供、頭脳は大人」なんて設定はない。ぼくはファンタジックな事は嫌いなんだ。なぜなら事件は空想の中で起こっているんじゃない。現実で起こっているからだ!






 さてさて、今日も学校から帰ったぼくは、いつものインバネスコートとお釜帽に着替えて街を歩き回る。夏はさすがにインバネスは脱ぐが、基本この格好だ。おかげで街ではちょっとした有名人さ、ハハハ。


 しかし探偵たるもの、目立つのはよくない。閑静な住宅街の通りでは、壁に沿うようにひそりひそりと歩く。塀の上で寝ていたネコがふーっと威嚇してくる。まあいつもの事だ。気にしないでくれたまえ。


 むむっ!? あそこに見えるは有名な不良三人組! 奴らの真ん中には気の弱そうな少年!


 事件の臭いだ。彼らは狭い路地に入っていく。さてはこの先の高架下に連れて行き、そこでカツアゲでもする気だな!?


 許せん。許せん……が、読者諸君、妙な期待はするなよ。ぼくは推理力と洞察力になら自信はあるが、腕力に自信はない! 見ろ、この細腕! おはしより重い物はルーペ(虫眼鏡)しか持てない! あとは携帯電話とペンとメモ帳と財布と……まあそれくらいだ。


 ここはお巡りさんを呼びに走るべきか、カツアゲの証拠写真をバッチリ撮るべきか。後者の方が確実な気はするが、だが今まさに肩を震わせて歩いている少年がこれ以上の恐怖に晒されるなんて、かわいそうで見ていられない!


 交番はちと遠いが、ダッシュで行くべきだな。


 そう思ったぼくは「少年、耐えてくれ」と念じながら、後ろに数歩下がる。するとなんと……? 落ちる瞬間に気づいたのだが、道の真ん中のマンホールの蓋が開いている!


 そう、ぼくは落ちたのだ! これはピンチ! ぼくの方が危ない! 助けられなくてすまない、少年ー! 少年ー! しょうねんー!(←エコー)






 はっとぼくは目を覚ます。どうやら気を失っていたらしい。とっさに頭の上を見上げると、頭のすぐ上に出口が見える。ゆうに三十メートルくらいは落ちたくらいの感覚だったが、割と浅かったのか?


 とにかくぼくは這い出そうと手を伸ばす。よし、なんとか届く。壁の土が崩れるので少々上りづらいが……ってなんでコンクリじゃないんだ?


 まあ細かい事はいいか。とにかくぼくは這い出した。するとそこは……


 …………


 さっきの住宅街じゃないぞ? どこ、この森。


 …………


 さて、普通の人間ならここで混乱に陥るところだろうが、そこはこの名探偵、金田一耕一。どんな不可思議な状況にも慌てたりしない。


 とりあえず探すべきは人か食料だな。人が見つかればここがどこか聞ける。食料は万が一この深そうな森の中で数日過ごす羽目になった時のために確保しておかなければならないものだ。できれば人の方が見つかってほしいが……


 お? なんか向こうから声が聞こえる。ラッキー! 人が見つかったようだ!


 ぼくは思わず小走りで声のする方へ行く。するとどういう状況これ。なんか鎧とかローブとかつけた変な男女二人組が、狼みたいな動物数匹と戦ってるんだけど?


 男の方は剣とか持っているし、ちょっと危ない人……? いや待て、今こそ僕の推理を働かせる時。


 …………


 そうか、わかったぞ! 彼らは猟師なんだ! 猟師なら銃を持っているのが普通だろうが、この日本国では近年銃も簡単に撃てない時代になっていると聞いた。だから代わりに剣を持って、害獣駆除をしているんだ。


 なんと危険な職業に身を投じているのだ。背の小っちゃい女の人は、杖で応戦している。ありがとう、あなた方のおかげで我々一般人は日々を安全に過ごせるのです。


 とにかくぼくが邪魔になってはいけない。そっと距離を置いて、害獣駆除が終わるのを待とう。


 ぼくはじりじりと後ずさりする。しかしマンホールに落ちた時といい、後ずさりってものは何かのフラグを立ててしまうものかもしれない。何かにぶつかったぼくは異様な気配を感じてそっと後ろに首を回した。


 黒いもじゃもじゃの毛に、異常に発達した牙と爪。クマだ! いや、クマなんだけど、でかくね!? ゆうに五メートルはあるぞ!?


「ビッグベアよ!」


 杖持った小っちゃい女の人が気づいて叫ぶ。いや、確かにビッグなベアですけどね!? わざわざ英語で言う必要ある!? そんな悠長な事考えている間に、クマがよだれ垂らしながら咆哮する。


「人がいるわ! タイガーウルフは任せたわよ!」


 タイガーなのかウルフなのかハッキリして! 危機的状況の中でぼくの恐怖心は麻痺してしまったのか、余計なツッコミがまたも頭を駆け巡る。


 女の人はぶんっと杖を振り、片手か○はめ波みたいなポーズをとる。すると突然その手の中に球体型の真っ赤な炎が現れる。そしてそれを野球のボールを投げるように、クマに投げつけた。


「ファイアーボール!」


 女の人が放ったそれは見事にクマに当たる。だがそんな小さな炎でどうするんだ!? と思ったのも束の間、炎は瞬く間にクマの全身に燃え広がり、クマは絶叫しながら絶命した。


 気づくと男の人が相手にしていた複数匹の狼もどきも無残な姿で横たわっている。男の人と女の人は達成感に満ちた顔をしながら、「やったね!」とハイタッチをした。


 金田一耕〇シリーズはいくつかの映像作品と、数冊の本を読んだくらいであります。ネタが半端でも許してくださいね!

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