雫
あぁ
つまらない。
一番、心躍った生物や植物の誕生を記憶を失くして、もう一度見たいものだ。
「おぃぃぃいい!ダメ神!!」
ん?
私の仮眠室に誰か来たようだ。
「お主のことじゃ。この年中、寝っぱなしのダメ神!」
…雫、私にかまっている場合か?
年末に向けて残っている仕事はやったほうが自分のためになると思うが。
ボソ
「…もう怒る気力は残っておらんか」
な~にか~言ったっか?
私は人が作り出した新商品のわさび煎餅を食べながら聞く。
「ふん!分ってるくせに儂に聞くなバカもん」
そう言って雫は服やお菓子の袋が散らかっている仮眠室を神力を使わず、手ずから片付けていく。
「前々から言っとろう。部屋は綺麗にせい」
私は今も昔も変わらず、ほうきを取り出して掃除をする雫を見て思ってしまうのだ。
そろそろ消滅してもいいころ合いかと。
「!?」
カランっ
雫は私を見る。
「お、お主今何を考えた?」
んー。今日の夕飯は肉じゃがいいなと思ってな。
「ふざけるでない!儂の心眼にかかればお主の心も読めるのじゃぞ!!」
本当にその能力チートだよな。私がその目を持って生まれたならそれで商売でも始めてるわ~。
「…否定しないのだな」
否定してほしいのか?
「いいや。多くの家族が死んでからその兆候が顕れていた。今さらじゃ」
さすがだな。よく私を見ている。
「当り前じゃ。好いた男を見ないわけがない」
…。
ポタポタ
「やはり儂ではサツキの代わりにはなれんようじゃな」
そんなことを思っていたのか。
私は敢えて言うぞ。お前はサツキじゃないから当たり前だ。
そう私が思うと雫は声を殺して泣いた。
お前は痺れる味は嫌いなのに私と同じくわさび入りの寿司を食してくれた。
私、人生最後の友だ。
私は雫を撫でながら自身が消失していくのを感じ…
「ありがとう雫。私を愛してくれて」
そう言い残し神の座から降りたのだ。