表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初めての惑星調査任務は剣と魔法の世界でした  作者: 赤燕
§3 この惑星のインフラ事情を調査しました。 main routine ラスティ
87/836

第82話 回想



 この惑星に降り立ってから、ちょうど一年。


 当初はこの惑星の居住権のために躍起やっきになって調査活動をしていたが、最近は家族が恋しくなってきた。


 父さんはどうしているだろうか、母さんは? 弟は……。

 俺は既に、コールドスリープで数十年の時を跳んでいる。

 両親は生きていてもお爺さん、お婆さんだろう。弟は結婚して子供がいるかもしれない。

 それでも会いたい。


 母さんの手料理が懐かしい。特別な日にだけつくってくれるラザニア。肉が入っていないときもあったが、俺はあの味が好きだ。


 何百回とブラッドノアに信号を送ったが、結果は音沙汰無しだった。


 もう二度と家族に会えないと考えると、望郷の念が胸にこみ上げてくる。

 恥ずかしい話だが、隠れて涙したこともある。

 親離れできない男だと笑われるかもしれない。だけど……家族に会いたい。せめて声だけでも聞きたい。


 そんな恥ずかしい理由で、現在も救難信号を送っている。

 連合宇宙軍の規約に(のっと)るならば、通信が途絶えた艦には星系を束ねる統合司令本部から信号が送られることになっている。安否を確認する信号だ。それも毎月。敵に傍受ぼうじゅされても良い内容なので、伝達性を重視した非暗号化通信。それゆえ伝達範囲は広く、この惑星にも届いていなければいけない。


 それがポンコツ降下艇はもとより、受信状況の良い上空を飛翔しているドローンでさえ信号を拾った形跡は無い。


 いくらブラッドノアが惑星調査に従事しているとはいえ軍属の戦艦だ。旗艦クラスのブラッドノアを軍が見捨てるはずない。


 考えられる可能性は二つ。


 まず第一に、星系にある統合司令本部が敵に壊滅させられた可能性。

 これはまずありえないだろう。居住可能とされる未知の惑星を発見したのだ。軍はもとより帝国・連邦の両政府が手放すわけがない。


 第二に、ブラッドノアが星系の外にワープした可能性。

 本来禁止事項とされている磁場の乱れがあるワームホール近辺でのワープを実行した。ワープ事故が起きても仕方のない無茶な行動。可能性はこちらのほうが高い。


 別星系に飛んでいた(ワープしていた)とするなら、安否確認の信号が届かないはずだ。そもそも、別星系に所属する艦のことなんて管轄外なのだから。安否確認の信号は発せられない。


 おそらく第二の理由から交信できないと思われるのだが、解せない。

 一年もブラッドノアに接触が見られないのは不思議だ。ZOCなり、連合宇宙軍なり、宇宙の厄介者やアウトローなりに発見されててもおかしくないのに……。


 もしかして、この惑星は宇宙の死角(デッドスペース)に存在するのだろうか?


 不明な点が多すぎる。

 ブラッドノアから脱出した乗組員を探しだして、艦で何が起こったのか詳しく聞きたい。


 それに帝国の〈貴族の務め〉の件もある。

 早急に帝国貴族と合流せねば!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ