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初めての惑星調査任務は剣と魔法の世界でした  作者: 赤燕
§15 この惑星の蛮族事情を調査しました。 main routine ラスティ

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第537話 大雪山の魔女アミカ



「イーーーヒッヒッヒッヒッ! ちょこまかと逃げて、一体どこへ逃げるつもりだい!」


 アミカの攻撃を避けつつ、岩や石柱の陰を移動する。


 正面切って一対一の戦いに持ち込みたいところだが、アミカは不思議な技をつかう。魔法だが、いままでに無いパターンらしくAIでも予測不可能。おまけに姿が見えない。


 不細工な顔以上に、不快な攻撃が飛んでくる。知覚できないだけでも厄介なのに、破壊力もある。最悪の攻撃だ。


 身を隠している石柱や岩が、次々と破壊されていく。


【おい、フェムト、なんだあの攻撃は!】


――魔法であることは間違いないのですが、妨害があって解析できません――


【妨害?】


――メフィの言っていた、害周波だと思われます――


 そういえば、そんなこと言ってたな。あれは、モルちゃんや俺のような魔術師対策だけじゃなかったんだ。


 攻撃の正体がつかめない。


 おまけに不可視の攻撃。術者から発せられる攻撃タイプではなく、突拍子とっぴょうしもなく、予想外の場所にあらわれ飛んでくる。アミカの姿を捉えても、あらぬ方向から魔法が飛んでくる。

 まったく不快な魔女だ!


 バルコフのように攻撃予測できれば話は別なのだが……、


 圧倒的不利な状況。とれる手段は自ずと限られてくる。逃げ一択だ。

 とはいえ、限界が近づきつつある。身を隠せる遮蔽物もかなり減った。

 そろそろ攻撃に踏み切らないと後がなくなる。


 とりあえずのレーザーガン。こいつにかけよう!


 自動照準で、陰から撃つ。

 赤い光線がカーブを描いて、アミカへ向かった。

 それなのに不細工魔女が眼前にあらわれる! 光線が飛んでいった方向と真逆だ!


「嘘だろう!」


 宇宙の科学兵器すら(あざむ)くとは、この惑星の住人はずるい!


 慌てて、その場から飛び退いて岩陰に隠れた。


【攻撃だけでも厄介なのに、なんだあいつ!】


 さすがの相棒もお手上げらしく、


――魔法でしょうね。おそらく瞬間移動したのでしょう。自動追尾にも限界がありますし、減衰げんすい率を考えると……ラスティには相性の悪い相手ですね。仮に直撃させても〈魔法障壁〉で無効化されるかもしれません。高出力グレネードでも倒せないのですから、撃破は無理ですね――


【そんなこと言うなよ。おまえは最高のAIなんだろう?】


――できないものは、できません。(いさぎよ)く諦めましょう――


 相棒は冷淡に言うが、俺にとって諦め=死である。諦められない。


 不可視の攻撃が続いた。


 たくさんあった岩や石柱は破壊し尽くされ、身を隠す場所はほとんど残っていない。おまけにレーザーガンの残弾はあと三発。高周波コンバットナイフが届くとも思えないし、害周波で威力のガタ落ちした魔法では倒せそうにない。

 打つ手無しだ。


 せめて目くらましにと、砂利を掬って投げつけた。


 なぜかアミカはローブの裾を(ひるがえ)し、砂利から身を守った。

 俺はと言うと、飛んでくる魔法の直撃は避けられたものの、右腕の肉をごっそり持って行かれた。


「グゥッ! 痛覚遮断だ」


 思考で命令する余裕もなくなり、口頭でAIに命じる。

――了解しました。……それと朗報です――


【なんだ?】


――アミカの攻撃の正体が判明しました――


【確度の高い情報なんだろうな?】


――ほぼ間違いありません。アミカの攻撃は〈次元跳躍(ワープ)〉です――


【次元跳躍?!】


――先ほど、ラスティが撒いた砂利で判明しました。攻撃により消失した砂利は、ラスティの手前だけ――


【そうだな。アミカにかかったんだっけ】


――以前、ローランがつかった魔法があるでしょう。〈火弾の雨〉です――


【それがどうした】


――それと同じ原理です。〈火弾の雨〉は対象の上空から攻撃します――


【それがどうした?】


――魔力の反応も上空です――


【で、だから?】


――……魔法の反応も上空です。アミカはそれを敵の眼前で行っているのです――


【だとしても、無理がないか? 俺は物陰に隠れていたんだぞ。攻撃する素振りを見せたあとに飛んできている】


――錯覚さっかくを利用しているのでしょう――


【錯覚?】


――攻撃魔法だけレスポンスが遅いのです。ですから、攻撃のモーションから遅れて魔法が発動するのです。それを脳が錯覚して、知覚不能な攻撃と判断したのでしょう――


【理屈はわかった。でもなんて面倒なことを?】


――おそらく、同時に複数の魔法を使用しているのでしょう――


【そんな器用なことをしていたのか!】


――少なくとも〈熱源探知(サーモグラフィー)〉に関する魔法をつかっているようです。あれなら隠れていても攻撃可能ですから。大雪山なら、微量の熱も明確に検知できますからね。酷寒こっかんの地ならではの戦い方です――


【なるほど。で、レーザーを回避できた理由は?】


――回避しているのではありません。連続で転移しているのです。飛んでいるかのように見せかけるために。だから即座に回避したのでしょう。危機感を覚えたら、座標を変更すればいいだけなので――


【でも、なんで砂利を避けられなかったんだ?】


――推測ですが、老眼でしょう。ちいさな石を視認できなかったのでは――


 さすがは頼れる相棒だ。最後の部分は微妙だったが、厄介な謎を解いてくれた。

 仕掛けさえわかれば、対策も練れる。今度はこっちが攻める番だ!




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