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初めての惑星調査任務は剣と魔法の世界でした  作者: 赤燕
§7 この惑星の王族事情を調査しました main routine ラスティ

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第234話 王兄親子④



「クソッ、あと一歩で四人殺せるところだったのに! 俺様のナイフを受けとめやがって!」

 偽マリモンの言葉に動揺する衛兵。


 そんな部下を見かねて、カーラが命令を発する。

「何をしている! オレのことはいい、はやくぞくを引っ捕らえよ!」


 衛兵が偽マリモンを包囲した。


「おめでたい連中だ。俺様がなんの準備もなくやって来たと思っているのか?」


「奴の言葉に耳を貸すな。死なぬ程度であれば何をしてもよい。捕らえよ」


 かろうじて衛兵の隙間から見える偽マリモンは、水晶玉を手にしていた。


「ガーキの言ってた通りだ、王族ってのはつくづく馬鹿な連中だな。アイツの手引きですんなりここまで来れた。本当に間抜けな阿呆どもだ!」


 そう言って、偽マリモンは手にした水晶玉を床に叩きつけた。

 水晶玉が砕け散る。しかし、それ以外のことは何も起きない。


「チッ、不発か!」


 さらに別の水晶玉が砕かれた。


「クソッ、ただの水晶玉じゃねーか。ガーキの野郎、だましやがったなぁ!」


「殿下から許可が下りた。者ども、殺さぬ程度に痛めつけて引っ捕らえよ」


「おおっ!」


「クソッ、おまえら卑怯だぞ! 俺一人に、うわぁッ! ギャァーーー!」


 捕り物騒ぎはすぐに収まると思っていたのだが……。

 血まみれの偽マリモンは、衛兵の一人を殺し、俺たちの前におどり出る。


「クソッ、クソクソッ、こうなりゃ自棄やけだ! 一人でも多く王族を道連れにしてやる! そこの偉そうな眼鏡! おまえだッ!」


 言いながら、マリモンは三本のナイフを投げた。どれも標的は異なる。


 先ほど出した命令で、律儀に魔法の準備をしていた相棒が、

――魔法はチャージずみです。いまなら撃ち落とせます――


【やれっフェムト!】


――了解しました――


 並列化した〈氷槍(アイシクルランス)〉で三本すべてを撃ち落とした。


 その直後、危険だと認識した近衛たちによって偽マリモンは斬り殺された。身体に刻まれた傷跡は二十を超えたという。


 問題の王兄親子は死んだが、これで俺とティーレの婚姻問題はふりだしに戻った。


 残された王族はティーレの姉妹だけで、その姉妹からまだ答えを聞いていない。


「俺とティーレの婚姻を認めてくれるか?」


「私は認めます。ですから、リブとの婚姻も認めてくださいねちい姉様」

 ルセリアが、ティーレを見やる。


「ありがとうルセア。リブとのことは約束します」


 こうして、俺、リブともに賛成の票が入った。


 肝心のカーラだが……、

「ラスティ、貴様に一つ条件がある」


「姉上、どのような条件なのですか」

 何も知らないティーレは心配そうな顔をしている。フェムトに祈っているのか、胸元で指を組んだまま。居ても立ってもいられないようだ。


「条件を飲む。だから賛成してほしい」


 カーラはしてやったりと口端を上げた。

()()()()()()()。条件はそれだけだ」


 瞬間、ティーレの目が見開かれる。

「! 姉上、いまなんと!」


「言った通りだ。オレもラスティと結婚する」


「いけません。ラスティは私だけの夫ですッ!」


「妹よ。こうは考えられぬか? 妊娠して出産までの間、ラスティに良からぬ虫がつかぬと言い切れるだろうか?」


「マ、マリンがいます!」


「子供が生まれるまで十月十日。間違いが起こる可能性もいなめん。妊婦が二人ではどうなってしまうのだろうな? ラスティ・スレイドは近衛の女たちにも人気だと聞く。ティーレもそれくらいは耳にしているだろう」


「た、たしかに……」


「その点、オレならば問題ない。同じ王族だ。主君に隠し立てするようなことは起こらないし、同じ妻という間柄。ちゃんとラスティのことは報告する。それほど悪い話とは思えないが……」


「姉上、狡いです」


「狡いかどうかは未来の話。さて、どうする我が妹よ?」


「あなた様ぁ~」

 ティーレが腕に抱きついてくる。とても困った顔をしている。


 どうやら人生指折りの選択らしい。カーラを断ったら、ティーレと結婚できないし……。かといって、俺のことを殺そうとした女と結婚するのも……。

 でもなぁ、浮気とか出されたら絶対にNOって言えないじゃん。それ言ったら、暗に浮気するって認めたことになるし。


 やっぱりカーラは狡猾だ。


 散々悩んだ挙げ句、俺の選んだ答えは…………。

「間違いは起こしたくない。ティーレには誠実でありたい。浮気する気はないけれど、近衛の人たちに迫られたら逃げおおせられるかどうか……」


 彼女は頬をぷうっと膨らまして、腕をつねってきた。それも思いっきり爪を立てて……。愛が痛い。


「ごめん。でもガンダラクシャからほとんど会うことができなかったし、いろいろ言い寄られて不安なんだよ。ホエルンのこともあるし……」


「こともあるし? もしや、フォーシュルンド以外にも女性がいるのではないでしょうね?」


 突如、ティーレの声の温度が下がった。しまった地雷を踏んだか?


「いやホエルンだけだよ。いまのところは…………」


 包み隠さず本当のことを白状すると、ティーレはいままで見たことのない冷めた表情で、

「いまのところは……。あなた様、あとでお話があります。私の部屋に来てください」


 当然、断るという選択肢は無く、

「……はい」


 俺、ティーレより年上だよな。なんで主導権握られてるの?


「おい、ラスティ。オレも話がある、あとで部屋まで来い」


 カーラもッ!


 いまさらながら、結婚は墓場という言葉が胸に突き刺さる。どうやらとんでもない妻をめとってしまったらしい。それも二人も……。




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― 新着の感想 ―
ブタ親子は始末できたし、嫁は増えるし、スカッとした。素晴らしい展開。
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