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初めての惑星調査任務は剣と魔法の世界でした  作者: 赤燕
§5 この惑星の職場環境を調査しました。 main routine ラスティ
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第129話 subroutine カーラ_陰謀



 あの男は毒だ。

 あれほど従順だった妹がオレに意見するなんて……。


 久々に眼鏡をずらして、力をつかった。

 王家の血筋だけが発現する特別な力だ。

 オレはこの力によって、人がもっとも意識している心の声を()ることができる。


 すっかり変わってしまった妹と、素性の怪しい男。二人の心を覗いて視えたのは……。


――あなた様、あなた様、ああ、あなた様! 姉上さえ説得できれば、結婚できるのにッ! なんとしても姉上を説得せねばッ!――


――これでティーレと結婚できる。あとは義姉さんだけなんだけど……。はやく結婚してイチャイチャしたいなぁ――


 国難を前に、感動の再会と思っていたのだが、まさかあの男だけでなく妹までこのように変貌へんぼうしていたとは……。


 毒だ! ラスティ・スレイドなる男は、女を(たぶら)かす毒だ!


 どうにかして妹から引き離さねば。

 問題はあの男にどうやって辞退してもらうかなのだが……。


 部下の報告によれば、ラスティ・スレイドは優秀で人望もあり、魔法の達人とのこと。おまけにノルテの副官――セモベンテを単身で倒すほどの実力の持ち主。Sランク、いや称号持ちと並ぶ強さを秘めているのだろう。だからこそ厄介やっかいだ。


 オレの経験では、初対面で紳士的な男は大抵クズだと決まっている。あの男もクズなのだろう。万人が好みそうな笑顔で接してきた。


 ああ、これはオレの主観か。問題はそこでは無いな……。


 しかしせん。


 不思議とあの男を悪く言う者は少ない。ほぼすべてといってよい侍女や騎士たちが、あの男のことを高く評価している。はっきりいって異常だ。普通はある一定数、ねたんだり嫉妬しっとしたりする者がいるはずなのだが……。


 どれもこれも良い噂ばかりだ。それに一見すると裏表のない性格をしている。そこがおかしい。

 人間誰しもやましいことの一つや二つ、隠している。それが見当たらない。

 オレの力でも視ることのできない何か隠している気がしてならない。

 心を視られぬよう実に上手く立ち回っている。どこか抜けている感じだが、あれは演技なのだろう。(あなど)れない男だ。


 そういえば、セモベンテやアレクといったノルテの部下だった者たちが、ラスティを警戒するよう進言してきたな。

 実直なセモベンテがあれほど力説してきたのは初めてだ。妹が毒牙にかかる前に対処するようせっついてきたのを覚えている。あの男は頭は固いが鼻は利く。


 間違いなく、ラスティはクズなのだろう。


 妹が不幸になる前に、はやく目を覚まさせてやらねば。

 しかし、有用な手駒であることも事実。扱いが難しい。


 たしかエレナがラスティなる男と会ってみたいと手紙を寄越してきたな。……さすがに無視はできない。

 あの男をどうするかは、エレナと相談してからにしよう。


 暗殺できれば手っ取り早いのだが…………。




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