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初めての惑星調査任務は剣と魔法の世界でした  作者: 赤燕
§4 この惑星の国勢事情を調査しました。 main routine エレナ
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第113話 火事場泥棒の正しい処し方②



 翌日、私は魔術師数人を引き連れて、ちいさな帆船で海に出た。


 魔術師たちにガンガン風を起こさせて、内海を疾走した。

 ときおり船底が海面から離れたが、エキサイティングなアクティビティに私はご満悦。魔術師のみなさんは驚いていたみたいだけど……。


 ザーナ都市国家連合の巨大な帆船がレーザー式狙撃銃の射程に入るまで近づく。紋章の描かれた綺麗きれいな帆をレーザーですべて焼いた。


 不慮ふりょの事故だ。このレーザー式狙撃銃もレーザーガン同様にトリガーが軽すぎる。


 悲しい出来事によって海軍は航行力を失い、海を流離さすらうことになるだろう。事故現場を目撃した私としては、彼らの無事を祈るばかりだ。


 その日のうちに、砦にとって返してロビンにあることを指示する。

「そのようなことをしてどんな意味があるのですか」


「いずれわかるわ、いずれ」


 何食わぬ顔でザナックをもてなす。


「噂にたがわぬ美味さ。この料理がザーナで食べられる日もそう遠くはないが、食べずにはおれん」


 品性の欠片もない男は大喜びで料理を食べ散らかす。いやしい男、犬みたいな食べ方ね。見ているだけで食欲が失せるわ。


 この馬鹿貴族の笑顔も近い未来に絶望へと変わるんだけど、残念なことに私はそれを見れない。でもいいわ、地獄を味わってもらうんだから。それに、そんなとこ見たら精神衛生上にも悪いし。


 さて、準備も終わったことだし、楽しい謀略の時間と参りましょう。


「ところでお願いがあるんだけど、いいかしら?」


「講和はしませんぞ」


「そうじゃないわよ。この国が滅んだとき、そちらへ亡命したいんだけど。悪く扱わないように一筆ほしいの。もちろん、タダとは言わないわ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「ほう、値の張る……してどのような」


「そうね。とりあえず私の持っている金銀財宝の一部を」


「……ちなみにですが、亡命するのは宰相閣下だけでございますか」


「当然よ。だって国を見限るんだから。下手に部下とか連れていったら、逆恨みされて殺される可能性があるじゃない。私はね、余生を優雅ゆうがに過ごしたいだけ」


「お高くつきますよ」


「問題ないわ。宰相だから金回りだけはいいのよ。で、頼めるの? 駄目ならよその国をあたるけど」


 さりげなく金持ちアピールする。するとどうだ、ザナックは見事にエサに食い付いた。


「いいでしょう。このザナックが仲介役を務めさせていただきましょう」


「私が亡命したいのは、一番南の郡なんだけどお願いできる?」


「一番南……となるとジグレ郡のエクア市長になりますな」

 とたんにザナックがしぶる。どうせ手間賃の引き上げだろう。


 私は財産のなかから、もっとも価値のある通貨をテーブルに置いた。清銀貨だ。

 なんでも清銀貨はベルーガでしか採掘されない超稀少な金属で鋳造(ちゅうぞう)されているらしく、ベルーガでしか造っていない。おまけに年に十枚ほどしか製造できない超プレミア通貨だ。そのせいで、国法で大金貨一〇と同等の価値と定められているにもかかわらず、それ以上の値で取り引きされている。


 その超高額通貨を私は五枚も持たされている。アデルからの愛をひしひしと感じさせられるお小遣いだ。


 五枚あるうちの一枚をザナックに手渡し、もう一枚を密書の入った筒に入れる。ジグレ郡の市長に渡してもらう密書だ。


「よ、よろしいのか! 仲介役の私がジグレ郡の市長と同じ清銀貨をいただいても」


「当然よ、だって私の命がかかっているんだもの。それに今後も仲介役を頼むことになるだろうから、いわば手付金みたいなものね。無事に亡命が成功した暁には、ザナック殿にはいまの三倍支払うわ」


 大金をチラつかせると、ザナックは目玉が零れんほどに目を見張った。


「本当に、宰相閣下は国を捨てて亡命するつもりですか!?」


「当然じゃない。命はお金に換えられるけど、お金で命は買えないわ。だから危険がおよぶ前に逃げるの。私、変なこと言ってる?」


「いえ、あまりにもザーナとよく似た考え方ですので、つい」


 へー、こいつだけじゃなくて、国民全員がはじ知らずの守銭奴なのか……。


 それから二日後、ザナックはながい旅路についた。



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