ストグラ 安城とゆきんこ 彼女の存在2
続きをどうぞ
目が覚めると、息が苦しくてゴホッっと咳をすると、ごぼりと口から水がこぼれた。
ぐっしょりと濡れた服が肌に張り付く感覚がする。まだ、ゲホゲホと咳をする俺にAKAさんの声が聞こえた。
アンナル!大丈夫!
ユサユサと体を揺さぶり兼ねない勢いをヘルアンが、体で制止していた。
AKAさん、ダメです
先に治療を優先しないと
そう言うが早いか、ナリエルに無線を入れる。ぼんやりとする意識の中でヘルアンを見ると、ヘルアンもまたずぶ濡れになっていた。彼が俺を引き上げてくれたのだろう。
安城、すぐにナリエルが来てくれる
少しの辛抱だ
ああ、
と、一言だけ返事を返して呼吸を整える。その時に手のひらに違和感を感じる。そっと開けば、掴んだペンダントトップがそこにあった。
良かった
安堵と共に再びうまく力が入らない手を動かし握りしめる。揺れる船の上でナリエルが来るまでの間、目を閉じた。
背後では、銃撃戦がまだ行われてるのだろう。激しい撃ち合いの音が聞こえている。
AKAさん、今は援護してもらっている間に落ち着いて治療出来る所へ移動します
落ちないように気をつけてください
ヘルアンはそう言って、船の操縦に専念する。AKAさんは心配そうに俺を見つめて、着席する。船はそう早くないスピードで近くの岸辺へと移動する。
ヘルアン、こっち~
安城、大丈夫か~
船が緩やかにボートが止まり、誰かが乗り込んできたのがわかる。それと同時にナリエルの声が聞こえた。
あらら、えらく撃たれたねぇ~
そう言って、俺の傷を確認していく。腕を触れられた時、激痛が走る。思わず呻いてしまったと同時に握った拳に力が入る。
ごめん、安城
痛かったね。だけど、あまり力まないで
ナリエルはそう言って、そっと拳に触れて力を緩めるように促す。俺はそろそろと力を抜くがうまく加減が出来ず、ペンダントトップが滑り落ちる。
コツン、こつん
俺はハッとして滑り落ちたペンダントトップを視線で探す。ナリエルが先に気付き、船から落ちる前に拾い上げていた。
そして、開かれたロケット部分に視線を落としている。
ナリエル
そう声をかけた俺に、ハッとした様子でナリエルはロケットの蓋をする。そして、そっとジャケットのポケットへと彼女はしまった。
今は治療優先、これはあとで返すね
彼女はそう言って、一番ひどい箇所を先に治療を始める。治療を進めて最後の傷を治療をしていた時にポツリと呟いた。
これを拾う為に無茶したんだね
思った異常に、キズが酷くなってるよ
ナリエルはそう言って無線をいれる。
BOSS~安城が思った以上に傷付いているので、離脱の許可をおねがいします
分かった
起きて無線を入れれば、ナリエルがそう言いBOSSが返事を返していて、驚く。
ナリエル、俺はまだ戦える
彼女にそう言えば、苦笑して言う。
今は良くても、後で痛みが出たり、上手く動かせなくなるかもしれないよ?
大丈夫、この水上戦が終わる頃までの辛抱だから
ナリエルはそっと俺の手のひらに何かをにぎらせる。
先程のペンダントトップだろう
大事なんでしょ?だったら、大事にしなきゃ
彼女はそう言って、船を降りた。俺はその後ろ姿を見送ることしか出来なかった。
その後、すぐにヘルアンとAKAさんが船に乗り込み、俺を集合地点へと送り届けて戦闘へと戻った。
それを見送っていると安城、と声がかかる。振り替えると、無馬さんだった。
ちょうど、船を直しに戻って来たらしい。
すみません無馬さん、早々にやられてしまいました
ポツリと呟けば、無馬さんがポンポンと肩に腕を回して叩く。
良いって、気にしてないよ。だって、お遊びだもん
そう言いってクスリと笑う。
AKAさんがいた上に、大事なものを失くしかけたんでしょ?
なんで
俺が呟けば、明確な答えが返ってくる。
だって、ずっと右手を握ってるし、切れたチェーンが微妙に服に引っ掛かってるし
言わなくても想像ついちゃうよね~
カラリと無馬さんは言う。そして、無馬さんはポンポンと再び肩を叩いて、俺から離れた。無馬さんの手には切れたチェーンを持っていた。
これは、もう使えないから処分しておくね
え、あ、はい
じゃ、お大事にね~
そう言って、ヒラヒラと手を振って颯爽と船へと戻っていく。船はもう準備が整っていて無馬さんを、待っている状態だった。
そこにはBOSSもいて一瞬目があった気がした。けれど、無馬さんに声をかけられてすぐに視線が逸れたように思う。
時を待たずして、船は岸から離れて行った。
それからの快進撃というべきか、俺が倒れた分のロスタイムを取り戻すかのように、一時不利だった形勢が逆転した。
流石はBOSS達としか言いようがなかった。
帰ってきたヘルアンとAKAさんと合流し、その後の戦果報告を聞いた。
AKAさんはあの後、アンナルの仇を取る!と言って二人を落としたらしい。
他にもヘルアンと協力して、船も撃破したらしい。
アンナル、さっきはごめんね
AKAさんは俺の元へ駆けてきたかと思うと、すぐに謝罪をしてきた。
僕、ああいう場面でいつも焦ってパニくちゃって、やられちゃうの
今回はアンナルに怪我させちゃって
しょぼんと目に見えて落ち込んでいるAKAさんに俺は明るく努めて言う。
でも、AKAさんはその後、何人か倒してたじゃないですか
それに船も撃破してたみたいだし
大活躍じゃないですか!
そう!ちゃんとアンナルの仇は取ったからね!
グッと握り拳を作りガッツポーズをするAKAさん。そう話している間に後から来たヘルアンとも合流し、程なく解散となった。
これは後から聞いた話
ヘルアンはナリエルが船に上がって来たとき、邪魔にならないようにAKAさんを連れて岸辺に上がっていたそうだ。
そこで、俺を心配したAKAさんを宥めることに努めていたらしい。
怪我をしている安城を、揺すろうとしていたAKAさんを見ていたから、邪魔になってはいけないと思って、
頑張ったと疲れた様子でヘルアンが語ってくれた。
いや、本当にすまない
内心、で詫びる。今度何かお礼をしなければ
その後、帰る時にヘルアンの車に乗せてもらう事になった俺は、彼の車へと向かった。そうしたら、AKAさんがキョロキョロと周りを見渡していた。
どうしたんですか?AKAさん
いや、来たときに乗せてもらった車がなくて、誰かに乗せてもらわないとって思った所なの
そうこう言っている間にも、車は減っていく。
俺の車は2人乗りだから安城、手錠でキャリーして乗せたら?
いや、俺いま持ってなくて
じゃあ、普通のキャリーで、AKAさんはそれでも良いですか?
私は乗せてくれたら、何でもいいよ!
仕方ないとはいえ、二人で話が纏まってしまった。しょうがないと俺はキャリーをしようとする。
けれど
一つの感情が湧いた。
アンナル?
動きを止めた俺にAKAさんは首をかしげる。その様子に気付いて俺はAKAさんを担ぎ上げた。
よいしょっと!
え、ちょっとアンナル?
俺はそのまま車に乗り込んだ。
僕、女の子なんだけど~
ねぇ、この運びかた酷くないかぁ
え?乗れたら何でもって言ってたじゃないですかぁー
俺はいつも通り茶化した言い方で返す。
僕は荷物じゃないんだけど~
僕、お姫様抱っことかのほうが良かった~
そうですよねー、荷物じゃないですもんねー
荷物だったら、重たくて捨てる所でした~
俺は冗談ぽく返すと、AKAさんはプリプリと怒りだす。
僕は荷物じゃない!アンナルひどい!
だって、重いから~
あ、だったら、トランクの中の方が良かったですか~?
だから、僕は荷物じゃないってぇ~
ヘルアンと二人で笑い合う。その声を聞きながら、もういい!と抗議を諦めたAKAさんが大人しくなった。
しばらくして、旧アジトに着くと、他の皆も集まっていた。俺は車を降りて、AKAさんを下ろすと、少しの目眩を感じた。
あれ?
少しするとぐるぐると目が回るのを感じて、倒れた。
上手く聞こえないけれど、みんなが心配する声が聞こえている気がする。
安城は再び意識が飛ぶこととなる。
この時の周りの人たちは、
って言う感じの背景も描きたい