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受難と接触

「っん」

足を水につけて航ーは岸壁に横たわっていた、気を失っていたのか、重い瞼をゆっくり開ける。ぼーっとする頭を少しずつ覚醒させていく。

「何だ、生きてる?………っわ!」

自分の現状を確認した航ーは足に当たる感触に水から足を上げる、周囲を見渡すと目の前には海、後ろには林、左右には崖を切り取った様な岩肌、空は憎らしい程青く澄み切っていた。

「ここどこよ?」

そう呟きながら周りを見渡す。

「ピュィ」

声が聞こえた気がした航ーはまたも周りを見渡す。

「何だ?」

「ピュイィ」

航ーは声の聞こえた方、海の方に身を乗り出した、そこには3m程の鯱が見ていた。










「お前らが助けてくれたのか?」

(あり得ない、南極とアフリカの間だったはず、それにあれは?)

そう、航ー達が乗っていた漁船は日本から1ヶ月かけてアフリカから更に南の暴風域に近い所で操業していた。

いつもよりも激しい嵐、普段なら仕事は辞めにして、船を流しながら嵐をやり過ごす様な事態だったのだが、鯱が食べたにしろ鮪の頭だけだが200以上も来ていたら縄を入れるのも仕方のない話だろう、そこで航ーが海に放り出された、これは事故だ、船乗りだったらありきたりの…だが、謎現象で船が空を浮かび消えていったのは事件だ、そこで死ぬはずだった航ーが謎大陸で目を覚ましたのは奇跡だ、混乱するのも無理はないだろうそして更には………






今、航ーの目の前には2頭の子供の鯱、10m位先に15m位の黒い固まりが多分親子なのだろう優しく見守っているようにみえる。

(まさかな)

航ーは鯱と鮪の取り合いをした事を思い出す。

「俺から鮪取った?」

「ピュイ?」

何の事?と言う様にザブンと海の底に潜り浮き上がってきた時には口にトンボ(びんちょう鮪)らしき物?くわえて航ーの横に置いた。

「やっぱりお前か…」

ため息を吐き出してまた周りを見渡し自分を見る。

ゴツゴツした岩肌は崖を切り崩したようで後ろは木々が乱立しており林の様になっている。近くにはスバルの入った籠が転がっていた。

「カッパは着てるしな夢じゃないのか…皆どうなったんだろう?」

航ーは船が浮き上がり消えた瞬間を思い出す。

(やっぱり有り得ないよな?鯱に助けられた?船が消えて気絶してここにいる。うん、意味分からん。それに本当ここどこよ?)

もう一度周りを見渡すと少し考えて横になった、

(空が綺麗だなぁ)

考える事をやめたのだ。

(船長らだったらなんとかするだろ?あんなん人外みたいな人ばっかりだからな)

と、その時何やら林の方から気配を感じた、航ーは体を起こし林の方を見る。

(今度は何だよ?)

「グルゥ」

それを見た瞬間スバルに手を伸ばした。

(オイオイ、勘弁しろよ)

心の中でグチると目の前には五頭の野犬?狼?がいた。腹を空かせいるのか航ーを囲む様に動いている、

「ふっざけんな!!」

言うやいなやスバルを振りかぶり右に来た狼?に投げつける、

(野犬?狼?もう狼でいいや、とりあえず死ね!)

どうでもいい事を考えながらスバルをかわした狼に走り寄り腹を蹴りつける、そのままスバルについていた縄を掴み引っ張りその先の籠を鷲掴みして狼の鼻っつらに叩き込む。

「キャイン!」

そのままスバルを掴み振りかぶった時右肩と左足に痛みが走った狼が噛みついていた。航ーが一匹に集中していた為ニ匹が噛みついて来た、痛みに堪えてながらも反撃を試みる。

「ふざけろや!」

右肩の狼をスバルで突き上げ左足の狼を踏み潰す。勿論そんな事で殺れる事はなく航ーから距離をとる。

「グルルゥ」

とその時海の方からザッバァァァァァン!と音が聞こえた。

(何事??)

見てはいけないと思いつつも後ろを見ると親鯱が飛び上がっていた。

(本当、何事!!)

15mもの鯱が飛び上がるのは圧巻としか言いようのない風景が目の前にあった。

瞬間訪れるビッグウェーブ、林の木々を薙ぎ倒しながら狼と航一を呑み込んでいく。

(もうこんなんばっかりや!運命つーのは俺に恨みでもあるんかのー、ええ加減にせーや!!)

そんな事を思いながら波に流されそして戻されて海の中に突っ込んだ、そして体にかかる浮遊感、見ると親鯱の背中に担がれていた。

「っ!!…お前……」

見ると2頭の子鯱が狼を咥えていた。まるでおもちゃで遊ぶ様に一噛みすると放し次の狼に噛み付く残酷な様に見えるそれは遊んでいるのだろう親鯱の上から見ている航ーは海が赤く染まるのを只眺めていた。











「っいっつぅぅぅ、」

航ーは呻いていた、右肩と左足咬まれた後が海水に浸かった事で悪化していた。

岩棚に戻された航ーは仰向けになり暫く安静にしていた。

(まぁほっといても治ると思うけどな、傷口は洗いたいかな?)

「あなた、誰?」

不意に声が聞こえてきた。すぐに林の方を見ては息を飲んだ。そこには金髪の少し耳が尖った女性がいた見た感じ一目惚れしてもおかしくない程の、その女性が航一に向かって弓を構えている、航一は胡座をかき両手を上げる、反抗の意思はないと伝える。

「この状態は何?大きな音がしたから来てみれば森は壊されているし精霊が騒いでいる…」

(精霊?)

「説明してくれる?」

コクリと頷き弓の構えを解かない女性に説明する。

「ここで寝ていたら狼に襲われた、そしたら後ろのコイツらに助けられたok?」

航ーは此処で起きた事だけを話した、面倒だったのか簡潔過ぎる程にいろいろ端折っていた。

(どうせ言ったところで信じられないだろうしな俺も信じられないし)

「ok?、意味分かんないだけど?」

「まぁ了解って意味です、はい」

「でっ、森がこの状態なのは?」

「嫌、あいつがジャンプして津波を起こしたんです、はい」

航ーは素直に説明する。ここが何処かも分からない状況で反論するのは悪手だと考えた、まずは情報からと、そしたら急に弓を下ろした。

「意味分かんないけどウィンディーネの眷属が貴方に集まってる、とりあえず一緒に来てくれる?」

(ウィンディーネ?眷属?何それ?ラノベかよ!!)

「俺、何か悪い事した?」

女性はため息をこぼし森の方を見た。

「この状態を見てそう思うなら貴方は頭がイカれている。エルフにとって森は家族と同意義だ、それをこんなにしといて、は〜〜、」

(エルフ?森?どう見ても林じゃね?)

「分かった、その前に連れに話してもいいか?」

「連れ?何処にいる?」

航ーはトコトコと海に飛び込んだ。そして鯱に抱きつき、

「助けてくれてあんがと、俺あいつについて行くからお別れかもな…」

「ピュイィィーー」

子鯱は鳴いたと思ったら抱きついたままの航ーを気にすることなく海に潜りそのまま海面から飛び出し3m位ジャンプして航ーを振り解く。

「ピュイッ」

航ーの背中を押して鳴き声を上げる子鯱、まるでいつまでもマブダチやという風に背中を押してくれる、そして2頭揃ってジャンプをし交差して親鯱の方に寄って行った、そのまま背を丸めて3頭揃って海に潜り尾びれを立たせて海を鞭打った、軽く津波が起こり女性と航ーは流される。

「ふざけろやっ!てめえらーーーつっ!!」













「でっ 説明はして頂けるの?」

目の前には海水だらけのエルフさん?何か青筋が立ってらっしゃる。

「えーと、ごめんなさい」

周りを見渡すと森?は破壊されないで小さな魚がピチピチと飛び跳ねていらっしゃる、

(コリャ飯には困らんな、多分異世界?稲妻が落ちた時俺も引っ張られた?じゃあ皆を探してみようか?)

「俺にも何が何だか分かりません、只貴方達を害するつもりも有りません、只さっきの奴らが俺を助けた事実それしか分かりません」

言いながら海を眺める。とその時足元に矢が刺さった。

「その言葉を鵜呑みにすると思うな小僧!」

前を見ると数人のエルフ達がいた、目の前の女性を横に航ーに向かってくるそして、

「お前のせいで森が壊されたその事実をどう説明する?」

航ーの胸ぐらを掴みながら恫喝すると

(何か俺の周りにいるみたい、頼んじゃおっと!)

「ウィンディーネったっけ?これどうにかなる?」

(……)

「貴様何言ってる?」

そう呟いた瞬間水が森を囲い霧になり優しい空気を送り込む、折れた木々がゆっくり光を放ち急速に芽吹く様に活気を取り戻す。森は崩折れたままだけどそこには生命があった、少しずつ緑の芽が期待に応えようと、

「ああっ、いい、いいからゆっくりで嬉しいけどそれでウィンディーネが傷つくのは嫌だな」

未だ会った事もない精霊に謝る。

「でっ、説明を」

未だ納得していない女性、少し呆れた様子で尋ねる。

「黙秘権使えますか?」















黙秘権は使えなかった、ただこの世界の者ではないと言うのは誤魔化した、船が遭難し嵐に巻き込まれてここに着いたという事にした俺は人族という者らしい、(なんやそれ?人族?エルフ?意味分からん?)


「でっお主は何故ここにおる?」

村に連れて行かれた航ーは難しい顔をしている。

(でって言うのは口癖かなぁ?)

「嫌、俺はそうなん?ん遭難したんです、はい。」

我ながらしょーもなっと思いながら今までの事を軽く説明していた。






村落の中にある村長の家で村長と警備隊の隊長をしているグラハムと名乗る男と最初に会った女性ジータと名乗る人達に質問されていた。

「では、お主はこの村に来たのは偶然という事じゃな」

「はい…」

「お前はこの村に害を与えるつもりはないと?」

「そういうつもりは一切ありません。」

「あの大きい魔物はなんなの??!」

(魔物?)

先に見た鯱の事を言っているのだろう、ジータが前のめりに聞いてきた。

「鯱の事ですか?あいつらは相当に離れた沖に住んでいる動物ですよ、てか?魔物ってなんですか?」

一応は聞いてみる、想像はしているがもし違った時の行動が変わってくるからだ。目の前の3人は珍しい者を見る様に目を丸くしていた。

「魔物を知らぬじぁと?!」

「なんと!、まぁいい魔物とは我々の様な者を見たら襲って来る天敵見たいな奴らよ、どんだけ平和な所にいたんだよ?」

「ははっ、まぁ平和っちゃ平和でした、町の中に港があってそこから沖に出てましたから。」

「でっ、あれは鯱って言うの?魔物じゃないの?」

村長とグラハムが呆れた様子で説明をしてくれたがジータだけは鯱に興味深々の様子で聞いてくる。

「魔物じゃないですよ、まぁ仕事の邪魔するのでそういう風に見れば天敵な時もありますけど、仲良くなる時もありますね」

「会ってみたいんだけど、ダメかな?」

首を少し傾けて可愛らしい仕草で聞いてくるジータ。

「まぁ、機会があればという事で、今何処にいるか分かりませんし。」

「分かった、それでいいよ。」

少し残念な顔をみせるが、航ーはこればかりはしょうがないと思う事にした、本当に偶然なので説明があまり出来ないのだから仕方ない事なのだ。

そうして情報のやり取りをしながら、度々呆れさせため息を吐かれながらも、此処は剣と魔法のファンタジー世界だと航ーは確信するのだった。



(有り得ない有り得ない有り得ない何でこうなった?!)

航ーはその夜頭を抱えるのだった。

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