突然
最近はゆっくり話す機会なんてなかったから二人の会話はよく弾んだ。
久々の楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
しばらく話に花を咲かせているとお菓子がなくなってしまった。
追加を取りに行こうと立ち上がりかけたセイだが足をつけた途端によろめいてしまう。
「…っばか。無理しない」
なんとか腕を取れたから大事には至らなかったけれどもし間に合わなかったらと思うとゾッとする。バツの悪い表情を浮かべて謝るセイの腕は少し熱っぽかった。
やっぱりそうか。
「治療。してたんでしょ」
「ははっばれちゃった?」
ギフトの使用には代償、または制約がかかっている。
ソニンのギフトは制約があり、そしてセイのギフトは代償を払わなければ使えない。
彼女の代償は体力。治療の規模によるが体に酷い負担をかけるものだ。
だてに長いこと付き合ってはいない。
セイの仕草が少しぎこちないことにソニンは気づいていた。
「一緒に行こう」
言葉数は少なくても伝わる優しさにセイは微笑む。お礼をいってソニンの背をそっと押した。大事な話がある、と耳打ちして。
戸惑う彼女をよそに医務室の倉庫へと連れて行く。困惑しつつも歩いてくれるソニンを倉庫へ押し込むと自らも中へ入り、扉の鍵をかけた。
「セイ…?」
状況の読めないソニンはただ混乱して彼女を見つめる。
理由なくこんなことをする人じゃないのはわかっていてもなんでなのか全くわからない。
数十秒の沈黙の後、セイは口元に寂しげな笑みを浮かべて呟いた。
「しばらくお別れだよ、ソニン」