表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Лилия -宵闇に咲く花-  作者: yi-ri
2/12

かの男はかく語りき

えーと、殴られたとこまで言ったか。

店主は怖がってるソニンなんか気にもとめないでなんにも言わずにただ蹴り上げた。

ボールみたいにぽーんと飛んだだろう。

息が詰まって受け身も取れずにしこたま体をぶつけても、

痛みにうめいても暴力が止むことはない。

虫の居所が悪かったんだろうなぁ。

なんにもしてない可哀想なソニンは抗議の声も出せず延々と蹴られ続ける。

周りのやつらはみんな見てみぬふり、助ける素振りも見せやしない。

ただ己の不運を呪い、散々嘔吐し血を吐いて意識も朦朧としてきたころ―

男が店主に声をかけた。その子供が何をしたのかってな。

話をしている間は暴力が止むだろ?ぼんやりと不思議に思ったソニンは

霞んだ視界で男の姿を確かめるのさ。ソニンからしたらその男は救世主だ。

なにせ彼は店主にいくばかの金を渡すとソニンを抱きかかえて家へ連れてったんだからな。

ソニンからしたらまさに天からのお恵みってとこだろう。

いくばか話しかけるも男は反応の薄いソニンを心配してか家までずっと抱いて歩いた。

ソニンは今まで誰かに抱かれることがなかったし意識も途切れかかってたから仕方ない。見ず知らずの自分を助けたおかしな男のぬくもりに包まれながらゆっくり眠りについた。


急かすな急かすな。

それからソニンはこれまでとは比べ物にならない生活を送り始めたよ。

風呂にも入れる、食事も三食与えられる。

仕事ももらえたんだ。

何をしたかわかるか?

護衛だよ、護衛。男を守るのさ。

もっとも彼女は暗殺やら小間使いやら詐欺やら護衛の範囲を超えた仕事をしてたがな。

男の正体が気になるだろ。

男はな、ある組織のボスなんだ。国を影で牛耳ってた実質トップの人間だな。

普通そういうボスってのは一般人に情けをかけることなんぞしないんだが

たまたま彼の目に止まったソニンは幸運だった。

少なくとも彼女は幸運だと思ってる。

男はソニンに必要なスキルを全て教えてやった。暗殺術から日常のマナー、読み書きだって全部手ずから教えたんだ。当然組織内じゃあ反発も起きるが男が黙らせた。それに

ソニンの才能の存在もでかかったな。才能と努力、恩人へ報いたいという強い思いが彼女をめちゃくちゃに強くしたんだ。年端も行かない少女が男を守るなんて随分絵になるよなぁ。

ソニンは男へ絶対の忠誠を誓っていた。

それは彼が大切に思っている組織へも向かってて決して組織を裏切ることはなかった。

もっとも組織の者からは嫌われてたが技術と忠誠心は買われてた。


なんだよさっきから茶々入れやがって。つまんねぇならやめるぞ。

いいや、これで終わりじゃねぇ。めでたしめでたしじゃ終わってくれねえよ。

導入部分ってとこかな…ほら大人しくしてろって!

お前が寝るまでちゃんと話しててやっから。

な?

しっかり聞いてろよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ