発見
大変遅くなりました…。
ソニンが目指した地は「アブレイズ」、交易が盛んで沢山の人・ものが行き来する商業の街。
闇が蔓延る夜の街でもある。
アブレイズにももちろんそれらを統べる組織が存在する。
うまく下っ端になれれば組織からは守ってもらえる、はず。出会い頭に斬りかかられる可能性はゼロじゃないどころかわりとありえるけれど、そこは無視だ。自分の容姿が漏れていないことを祈るのみ。
(下働きとして雇ってくれないかな。雑用でもなんでもこなしますよ)
賑やかな町並みを眺めながらのんびり歩く。もうアブレイズには潜入できていた。堂々と門から入った。組織の者にバレても流石に他人のシマで表立った争いは起こさないだろう。
ここの兵ともめるくらいならきちんと正規の手続きで入っておきたい。印象が悪ければ雇ってくれないしトラブルを起こして騒ぎにもなりたくないから。
アフィを連れて行くのは少々心配だったけれど、いくら言っても聞き入れてくれなかった。
諦めて検問まで引き連れていったところあっさり通れてしまい拍子抜けする。
いくら小さくてもケモノだ。もっと咎められると思っていた。
警戒するもただ兵が動物好きだったらしい。アフィを撫でるだけで終わった。なんともザル警備だがソニンのチェックは怠っていなかったからきっと大丈夫だろう。多分。
通りは王都に負けず劣らず賑わっていて、広場で開かれる沢山の出店では通りかかる人々を呼び込んでいる。
香ばしい肉の香りや香辛料の刺激的な香りが食欲をそそり、あちこちで列ができていた。
見たこともない料理たちにソニンのお腹も好奇心も刺激される。かすかな空腹を訴える音に気づいたのか、アフィはきらきらとした目でこちらを見上げてきた。じっ…と無言の圧をかけられてもしばらくは無視したが、流石に涙目で見つめられてはかなわない。
「ほんとくいしんぼうだね…。ちょっと早いけどお昼にしよっか」
アフィ用に冷えた果実、自らには熱々の焼き鳥を数本。
近くの樹に凭れかかって口に含む。
パリッ、じゅわぁ…
甘辛いタレがパリッとした皮に絡みつき、甘い脂と共に串を伝っていく。
手が汚れるのも構わずはふはふと頬張ればアフィが度々垂れたタレを舐めてくる。
美味しそうに目を細める彼は本当に愛らしい。口周りについた果実を満足気に舌でなめとり、かわいらしい伸びをひとつ。愛くるしさに見とれていると脂が垂れそうになり、慌ててまた食べ始めた。
「おいしかった?」
「クゥ」
「よかった。手、洗いに行こう」
べたついた手をそのままにはしたくない。ちょうど脇の坂を登れば小さな水場がある。
あそこなら手を洗っても大丈夫だろう。嫌がるアフィを連行して水につける。
思ったよりぬるい水に驚きつつ、まずはアフィについた汚れ全てを洗い流した。
開放された途端に全身を震わせて水分を吹き飛ばすせいでソニンの足が濡れていく。
(冷たい…)
それでも止めるより洗う方を優先したくて、洗い終わる頃にはけっこう濡れてしまっていた。
「あーあ。でも涼しいね」
どうせならもっと風の当たるところで乾かそうと歩き出したところで、アフィがなにかに駆けよった。ソニンのいるところからはよく見えないが、細い路地になにかが倒れているらしい。
鼻を押し当てて小さく鳴き、ソニンを見てはまた鳴き出す。まるでこっちへ来てというように。
「…?どうしたの」
誘われるままに路地へ入ると。
壁に寄りかかって男が倒れていた。
読んでくださりありがとうございました
遅くなりました…!