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第七章 第四話 罪

搭載を長い期間空けていました。

少しずつですが、また搭載していこうと思います。

宜しく御願い致します。

 

 俺達はハンスから、今回の黒幕と、ガーサル領占領の元凶が同一人物である可能性を聞いた。

 クレアはかつての親友であるシシオウとドグマを闇の底に落とした張本人に対し、憎悪と復讐心を抱く。そんなクレアに対し俺は危機感を抱き、なだめようとするが、クレアは大声を荒げ怒りを露わにする。直後我に返ったクレアは、俺に謝罪して外へと飛び出してしまった。

 


 そんな中ハンスが、クレアが突然怒り出したのには、今回シシ族とベア族が争っている原因と関係している、と話を切り出した。

 

 


ハンス「その原因は……黒幕の男が持っている、マジックアイテムが影響していると考えられます。」

 


 そのマジックアイテムとは……「憎悪の波紋(ぞうおのはもん)」という、黒い宝石の様な物だ。このアイテムが起動すると、周りの人間や魔物の心奥深くに眠っている憎悪が抑えきれず、怒りを露わにしたり、場合によっては争いを引き起こしてしまうという……忌わしい物だ。


ハンス「憎悪は理性によって抑えられています。その理性のタカを外したり……先程のクレアさんの様な……思ってもない位の事でも、憎悪が増幅されて怒りとして露わになってしまう……そんな忌々しい物なんです。」


守「…………」


アレク村長「……シシ族とベア族が対立しているのも……」


ハンス「そうです。クレアさん達が架け橋となる前、対立していた歴史がある故……心の奥底にある過去に抱いていた憎悪が、憎悪の波紋により顕にされてしまったのだと思います。」


アレク村長「…………折角手を取り合えたというのに……歴史は……繰り返されるのか……」


 アレクはがっくりと項垂れる。そんなアレクにハンスが声を掛ける。



ハンス「クレアさんが仰っていたお話……争いの歴史を乗り越え、異なる種族の方達が手を取り合う……私は感銘を受けました。

 アレクさん達が築け上げて来た絆を取り戻すため……私達にも協力させて下さい。尽力させて頂きます。」


アレク「ハンスさん……!……有難う……御座います……!」


 アレクはハンスの手を握り、深く頭を下げた。



イース「……僕は……魔物です。ですが、ここにいる……人間である皆さんに支えられて、今の僕があります。……種族の壁を越えた絆……僕も……かけがえの無いものだと思います。……絶対になくして欲しくない……。

 僕も微力ではありますが、お手伝いをさせて下さい。」


 イースは一際思う事があったのだろう。優しくも力強い言葉をアレクに掛けた。俺とミズキも呼応する様に大きく頷いた。



アレク「皆さん……。……有難う……有難う…………」



 アレクは涙ながらに、俺達へ感謝を述べた。








 





 そして少し落ち着いた頃合いで……



イース「クレアさんが心配です……僕……探してきますね!」

ミズキ「私も行きます。イースちゃん、一緒に探しましょう!」


 イースとミズキはクレアを探すため、家の外へ出て行った。

 


守「…………」

ハンス「守さん……。……自分を責めないで欲しい。仮にもし守さんに罪があるとするならば、僕達も同罪だ。

 ……一人で背負わないで欲しい。」

守「ハンスさん……。……有難う御座います……」



 思い詰めていた俺に、ハンスは声を掛けてくれた。

 ……本当にこの人には頭が上がらない。









 






side:イース


 僕とミズキさんは、外へ飛び出していったクレアさんを探し回った。


ミズキ「……あっ!あそこにいる女性……イースちゃん!」

イース「……!はい!」

 


 村の外れには、オーズ村の住民だった人達のお墓が並んでいた。その中の一つのお墓の前で、金髪の女性が胸に手を置きながら立っていた。

 その女性は紛れもなく、クレアさんであった。


 


イース「クレアさん!」


クレア「……イースさん……。……ミズキさんも……」


 クレアさんは少し落ち着いたのか、涙は止まっていた。しかし、先程まで泣いていた為か、両目はかなり充血していた。


クレア「私……守さんに何て酷い事を……守さんはシシオウとドグマを深い闇から解放して頂いた上に……今度はシシ族とベア族を助けようとして下さっているのに……」


ミズキ「クレアさん……」


クレア「私……守さんに合わせる顔がありません……」


 クレアさんは先程、守さんに発言した事を後悔している様子だった。だけど……


イース「クレアさん。守さんは責任感が強く、優しいお方です。僕を何度も助けて下さいました。……そんな僕だからこそ分かります。守さんはクレアさんの事を恨んだり、嫌ったりする事は絶対にありません。」


クレア「イースさん……。……でも……私、あんな酷い事を……合わせる顔なんて……」


 クレアさんは下を向きながら、小さな声で返答した。




ミズキ「……ハンスさんから、今回の争いに関しての原因について聞きました。……心の中にほんの少しある憎悪……思ってもない程の事でも憎悪が増幅されて、怒りとして露わになってしまう現象が起こっていると聞きました。

 ……守さんもその原因はご存知なので、分かって頂けます。……皆さんの所に戻りましょう?」


クレア「ミズキさん……。……お二人とも有難う御座います。……分かりました。……お二人と一緒に戻らせて頂きます。」

 

 クレアさんは暗い表情であったが、僕達に着いてきてくれる事になった。


 


 

 




イース「ちなみに……このお墓は……?」


クレア「これは……亡くなった母のお墓です……」


 クレアさんのお母さんは、2年前に亡くなってしまったとの事だ。亡くなった原因や病気は解明出来ていない。

 3年程前から身体の調子が悪くなってしまったが、自身の事を顧みず、薬師として治療や研究を続けていた。その傍ら、クレアさんの指導にも力を注いでいた。

 


クレア「母は薬師として使命を全うしました。

 ……私は種族の架け橋になるとともに、母の様な立派な薬師にもなりたい……。そして、人だけでなく、シシ族やベア族……他の種族も含めて、全ての方達に貢献出来る薬師になりたい……そんな夢を抱く様になりました……」

 

ミズキ「素敵な……夢ですね!」

イース「はい!応援しています!」


クレア「……有難う御座います!……お二人と一緒に、皆さんの所に戻りますね!」


 

 そして僕達は、守さんの所へと帰っていった。






 

 

 



ミズキ・イース「戻りました!」


 クレアさんの家に戻ると、ハンスさん、アレクさん、そして守さんが席に座っていた。


クレア「……守さん……先程の無礼な発言……大変申し訳ありませんでした……」


 クレアさんは守さんに対して、深々と頭を下げる。


守「とんでもありません……」

 

 守さんもクレアさんに対して、深々と頭を下げた。


 その様子を僕達は見守った。


 






 暫くして落ち着いた頃、ハンスさんが口を開く。


ハンス「……憎悪の波紋は大変恐ろしく、忌まわしい物です。……そんな物を持つ者を野放しには出来ない。

 ……今回の件で暗躍している男を……捕えましょう。」


 ハンスさんの言葉に対して、皆が大きく頷く。


ハンス「奴が現れるであろう場所やタイミングの情報は、私が入手しています。」


 明日の昼の刻……黒幕の男性は、シシ族とベア族が集めた転生の輝石を回収する為に、集落に来るとの事だ。


ハンス「その経路の途中にある……とある場所で、私とミズキ、守さんとイース君で待ち伏せをします。そして、奴が来たタイミングで捕縛を試みます。」


 待ち伏せの場所は、かつてクレアさんが幼い頃、争いの抗議を行う前に、大人達から隠れる為に使った場所であった。

 


 


クレア「…………。(シシオウ……ドグマ……見てくれているかな……私達が使ったあの隠れ場所が……今度は皆を助ける為に使われるんだよ……。

 お母さんも……見ていてね。お父さん達が築き上げてきた絆を……私達の夢が続く様に……ハンターさん達に……力を貸してね……)」



 クレアさんは懐かしそうな表情と共に、祈る様な表情をしていた。



アレク「皆様……宜しくお願い致します。」

クレア「宜しくお願い致します……ご無事を……祈っています……」


 アレク村長さんとクレアさんは僕達に頭を下げる。



ハンス「尽力させて頂きます。必ず元凶を取り払ってみせます。」

ミズキ「必ず成功させます!待っていて下さいね!」

イース「頑張ります!……シシ族とベア族……そしてオーズ村の方々の絆を……取り戻してみせます!!」

守「必ず……成し遂げます!」


 


 この場にいるアレク村長、クレアさんの想いを受け取りながら……僕達は作戦成功の約束を誓った。





 


 ワイドネス以上の得体の知れない元凶……とてつもなく大きな元凶の対面が、すぐそこまで来ているのであった…………














             …… 第七章 第五話へ続く






 

 

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