表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/88

第七章 第二話 八方塞がり


守・イース「…………」



 俺達は写真を見て驚愕した。

 


 クレアが持ってきた写真は……


 身体が小さかったが、ガーサル領で戦った、シシオウとドグマに似ている魔物であった。

 ……しかし、種族が同じだけで、単に似ているだけなのかもしれない。俺は確認を試みる。





守「クレアさん。この写真はいつ頃の物ですか……?」


クレア「これは……およそ10年前の物です……。この子達は私と仲が良かった、2匹の魔物です。」


守「…………クレアさん。……この2匹の魔物は……何という名前でしょうか……?」


クレア「タテガミがあって照れている表情をしているのが、シシオウ。少し大きな丸い耳で大きく口を開けているのが、ドグマです。」



守・イース「………!!」


クレア「この子達はこの写真を撮ってから数年後に行方不明となって……何処かで生きてくれていたらと思っているんです……」




 俺は一瞬迷った。本当の事を言うべきかどうか。

 ……だが、どんなに辛い事であろうと……真実は伝えなければならない。叶うはずがない夢を、いつまでも抱き続けさせるにはいかない……そう思った。




 俺はクレアに臨時村とガーサル領での出来事、シシオウとドグマと戦い…………俺が消滅させた事を告げた。





クレア「…………!!!そんな…………うっ…………うぅっ…………」



 クレアは涙を流しながら、その場に崩れ落ちた。


守・イース「………………」



 



 

 しかし暫くして、クレアは自らを落ち着かせる様に、涙を流しながらも、俺達に言葉を発した。





クレア「元々は……そんな事をする様な……子達じゃなかったと思います……。……闇の力に取り込まれ……出口が見えない中、もがいていた事でしょう……。

 2匹の子を救って頂き…………有難う御座います……」



 クレアは強い女性であった。俺達は居た堪れなくなり、イースは泣き出してしまった。


イース「………………」


守「あの時は……ガーサル領を救う事で、頭が一杯でした。ただ死の間際……彼らは正気を取り戻していた……そんな風に見受けられました。

 ……シシオウとドグマ……お互いに、それぞれの事を案じながら……。……彼らは本当に仲が良かったんだと思います。」


クレア「……あの子達を救ってくれたのが……貴方達で良かった……。」












 その様なやり取りがあった後、俺達は準備を済ませ、早速オーズ村へと向かった。サウスマンドから、約半日程掛かる、山中の村であった。

 道中は、サウスマウンテンの様な川のせせらぎが聞こえる、緑豊かの風景が広がり、心地よかった。


 そして俺達はオーズ村に到着した。こちらも緑豊かで自然溢れる、空気が澄んでいる所であった。


村長「クレアの父親であり、オーズ村の村長をしておりますアレクと申します。お二人とも遠い所まで、遥々お越し頂き有難う御座います。今回の件……何卒宜しく御願い致します。」



 

 俺達は村長アレクの歓迎を受けた後、村長家に泊めさせて貰う事になった。

 


イース「沢山歩きましたぁ。けど、良い所ですね!疲れが吹っ飛んでいきます!」


守「そうだな!空気が澄んでいて……良い所だな!」


クレア「気に入って頂けて、良かったです。明日は早速……シシ族の集落へ赴こうと思います。」






 


 




 クレアの家に一泊した後、俺達はオーズ村から約1時間程の距離にある、シシ族の集落へと向かった。


 集落へ入るには難渋すると思われたが、クレアの顔が利いているのか、意外にもあっさりと中を通して貰えた。


 奥の方には2m程の……シシ族族長がいた。


 


シシ族族長「…………クレアか。何用だ。」


クレア「……単刀直入に言います。行商人の荷物を奪ったという事で、サウスマンドの兵士団がこちらへの討伐計画を立てています。……討伐計画を中止させるべく、今後この様な事は絶対に行わないで欲しいのです。」


シシ族族長「…………。それは出来ん。」


クレア「…………!!なぜ……!?」


シシ族族長「ベア族との因縁を晴らす為に……これが必要なのだ。」


 長が取り出した物は……赤い宝石……「転生の輝石」と呼ばれる物だった。


シシ族族長「とある方に依頼されてな……これを納めれば、ベア族との因縁を晴らす為に、協力して下さると……」


 



 「とある方」というのが明らかに怪しい。

 


守「失礼ながら、その……とある方というのは、どんな方なのでしょうか?」


シシ族族長「……教えられん。其方には関係がない事じゃ。」


イース「…………。……僕でも駄目でしょうか……?」


シシ族族長「…………ドラゴン族か……。……だが魔物だろうと、部外者には教えられん。立ち去ってくれ……。」


 俺達は集落の外へと出されてしまった。








 次に俺達はベア族の集落に向かった。

 ここでもクレアの顔が利いており、ベア族族長に会う所までは来れた。

 しかし、ベア族族長からも、シシ族との因縁を晴らす為だと言い、「とある方」に「転生の輝石」を納めれば、協力をして貰えると言われたと言う。


ベア族族長「とある方については、部外者には教えられん。申し訳ないが、出ていってくれ。」



 俺達はシシ族の時と同じ様に、集落の外へと出されてしまった。止むを得ず、一旦オーズ村に引き返し、村長家に帰った。






守「……やはり、協力者が怪しいですね……。」


クレア「はい。私もそう思います……。ただ、どう探せば良いか……。」


イース「……うぅ。八方塞がりになっちゃいましたね……」



「協力者」の調査をしたい所だが、手掛かりが全く得られておらず、俺達は頭を悩ませていた。


 そんな時、俺が持っていた無線貝から連絡が入った。




「守さん、聞こえるかな?こちらハンスです。」


守「ハンスさん!」

イース「……!!」



ハンス「守さん達が受けている依頼に関しては、マリーさんから聞いててね。

 実は今、ミズキと一緒に他の依頼を受けているんだけど……その依頼が……守さんの今受けている依頼と……関係があるんだ。」


守「……!……今ハンスさん達が受けている依頼は……?」


ハンス「サウスマンド兵士団からの要請で……シシ族とベア族の討伐協力の依頼だ。」


守「……!!」

 


 偶然にも兵士団の依頼をハンス達が受けていた。最悪敵同士になっていたかもしれない……。

 そんな心配をよそに、ハンスは話を続ける。


 


ハンス「今回の一件は……どうもきな臭い所があってね。2つの種族の変わり様は、不自然だったからね。兵士団との合流までまだ時間があったから、ミズキと一緒に調査をしていたんだ。」


 ハンスの話では、ある人間の男の動きが活発になっているという。荷物を取られた行商人達の目撃情報では、シシ族やベア族の近くには、漆黒のフード付きロングコートを着た、人間の様な男が静観していたという。



ハンス「その男は行商人を助ける事はなく、魔物が荷物を奪った直後に消えてしまった様だ。そのロングコートを来た奴が……おそらく黒幕だと思う。」



守「(漆黒のフード付きロングコートを来た男……)

 そいつは……もしかすると……」


ハンス「そう。守さんが受けた初めての依頼で、シャインさんと会った……忌々しい男の可能性が高い。討伐作戦まで、まだ時間がある。俺とミズキもオーズ村に行くから、合流しよう。」


守「了解しました!」


 


 ……ディーナ様から、警戒するべき人物と言われた男だ。……話を聞いて早々に接点が出来た様だ。





 


 


守「クレアさん。二人のハンターが、今回の一件に協力してくれると連絡が入りました。……明日の朝には着くとの事でしたが……協力を頂いても宜しいでしょうか……?」


クレア「はい……構いませんが、その方達はどんな方達なのでしょうか……?」

 


 クレアは若干心配した様子で、俺に問いかける。

 そんなクレアに対し、イースが笑顔で答える。

 


イース「男性と女性のハンターさんなのですが、男性は常に冷静で頼りになる方で、女性は明るくて気配りをして下さる方です!お二人ともお優しい方ですよ!僕を何度も助けて下さいました!」


クレア「そうなんですね……!イースさんがそこまで言う方であれば……大丈夫だと思います!」


 イースの曇りない答えに、クレアは安堵の表情を浮かべた。



 




守「……ガーサル領奪還作戦の時に、一緒に戦っていたハンターでもあるんです。…………二人とも……シシオウとドグマの事も知っています。」


クレア「……でしたらより心強いです。………………。……そのお二人には改めてお話するとして……。

 何故……最近になって、二つの種族が争う様になったか……確信は持てませんが、心当たりがあるんです。」

 

イース「!!」

守「……そのお話……聞かせて頂けますか?」


クレア「はい。是非聞いて下さい……。」

 



 


 クレアから発せられた話は……一人の少女と、二匹の魔物の物語……そして、二つの種族の因縁についての歴史であった……



 

 







 






      …… エピソード クレア「架け橋」へ続く




 

 


 

次回は、今回の依頼主であるクレアのエピソード回となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ