第六章 第十五話 再起
side:イース
守さんがシャインさんと共に依頼を達成し、無事に帰って来てくれた。守さんは様々な人から、感謝を、労いの言葉を掛けられながら、報酬を手にした。
シャイン「守。今回の冷静な応援要請、そしてCランク相当であろうサイジョウに勝利した君は……すぐにCランクハンターに昇格するだろう。
また君と一緒に戦える日を待っている。その時はイース君。君も一緒にな!」
イース「……!!……はい!!」
守「はい……!!(イース……!)」
守さんと僕は、シャインさんと力強い握手を交わした。
そして僕達はギルドを後にした。
その帰り道、僕は守さんに話を切り出した。
イース「守さん。僕は……またハンター試験に挑みます!師匠と約束した決意を……今度こそ形にしてみせます!!」
守「イース……!……分かった!!俺も全力でサポートするよ!!……!イテテテ……」
イース「……!!守さん!?」
守さんは今日の戦いで大怪我を負っていた。歩けるのが不思議な位だった。守さんじゃなければ、動く事もままならない状態だろう。
イース「守さん……無理しないで下さい!僕はもう……大丈夫ですから……!」
守「すまないな。イース。お言葉に甘えさせて貰うよ……。」
守さんは宿屋で療養して頂き……僕は疎かにしてしまった精神修行から入った。
イース「…………。」
遅れていた分を取り戻す。極限状態と言って良い程、僕は集中していた。挫折を乗り越え……僕は強くなる。
待っているだけじゃ駄目だ!もう……弱い僕はいらない!!何者にも何事にも屈しない心を!!守さんと肩を並べられる……強い竜になるんだ!!
それから3日後……回復した守さんは僕の修行に付き合ってくれた。
守「イース!見違えたな……!……もう、迷いはなさそうだな。(イース……一皮むけたな……!)」
イース「はい!守さんのお陰です!!」
どうやら僕の雰囲気は変わった様だった。……自覚はあった。守さんが僕に道を示してくれた事と……何かははっきりとは分からないけど、心強く感じる何かが……僕を後押ししてくれる様な感覚があった。
……そして、今なら分かる。試験の時のミズキさんは……強い覚悟と決意を持って、僕に立ち塞がって来ていた。
その証拠に、守さんの帰りを待っていた時のミズキさんは……僕の知っている、優しいミズキさんだったから。
イース「(ただ……ミズキさんの決意と、覚悟の明確な理由は分からないけど……。
……僕は……それ以上の決意と覚悟を持って、ぶつかっていく!!」
サウスマウンテンの麓で、久し振りに守さんと組み手も行った。
守「イース。ミズキさんとの戦闘で……お前の戦い方は出来ていたか?」
イース「戦い方……?」
守「そうだ。ミズキさんの剣術と速度に、翻弄されていたんじゃないかと思ってな。」
イース「……翻弄されたまま、終わってしまいました……」
あの時、ミズキさんの踏み込みや連撃は……速度が尋常じゃなかった。
先日、守さんは西城さんという、拳闘技術も速度も自分より上の相手と戦っていた。始めはその技術と速度に翻弄され、相手のペースに引き摺り込まれていた。
守「その後は何とか強引ではあったが、状況を打破して、自分のペースに持っていき、勝てたんだ。
イース。お前の強みは怪力と防御力だ。白銀の息も使っていき撹乱して、怪力で押し込む。自分の戦い方に持ち込む事で、勝機を見出すんだ。」
イース「なるほど……分かりました!」
相手のペースに乗らず……如何に自分の戦いが出来るか……その事を意識しながら、組み手に励んだ。
守「いいぞ!イース!お前はもっと強くなる!!ここで終わるお前じゃない!」
イース「はい!必ずミズキさんを納得させ、ハンターになります!」
来る日も来る日も、僕は守さんと修行に明け暮れた。
そんな中……再戦闘試験の日程の報せを受けた。
日程は3日後という事だった。そこからも休む事なく修行を続けた……
そして試験前日も修行に励み……
守「明日は試験だから、今日はこの位にしよう!」
イース「はい!!」
僕達は宿屋に戻り、僕は疲労の余り、すぐに眠気に襲われた。
イース「眠く……なって来ました……守さん、有難う御座います……僕は寝ますね……」
守「あぁ。おやすみ、イース。」
イース「おやすみなさい……むにゃむにゃ……」
守「(さて、俺は少しだけ散歩に行こうかな。)」
side:ミズキ
イースちゃんの試験が終わり……どの位日が経ったのだろうか。
守さんの初依頼で……イースちゃんは凄く心配な表情をしていた……。私はイースちゃんに声を掛けられなかったけど……あんな事があったにも関わらず、イースちゃんは私に声を掛けてくれた……
ミズキ「……イースちゃん……本当に優しい子……かけがえの無い大事な子……だからこそ……絶対に生きていて欲しい!!」
私は試験前夜……先程まで、守さんとイースちゃんが修行を行なっていたサウスマウンテンの麓の、池の前に座り込んでいた。
ミズキ「なのに……また試験を受けるなんて……!」
明日はこの場所、サウスマンドの麓で……またイースちゃんと戦わなければならない。心を鬼にして……イースちゃんを止めたつもりだった……だけど、イースちゃんの心は完全には折れていなかった。
守「ミズキさん……」
ミズキ「……!!守さん……」
そんな時、守さんが私の近くにやって来た。
守「何故かこの場所に来たくなりまして……盗み聞きをするつもりはなかったんですが……ミズキさん。やはりイースと戦いたくなんてなかったんですね。」
ミズキ「…………。」
守「イースは……物凄く強くなってますよ。特に心は……挫折を乗り超えて、一皮向けました。明日は格段に強くなったイースを見られると思います。」
ミズキ「……それでも……!……それでも……私はイースちゃんを止めます!!私はどう思われ様が、構わない!!」
私は守さんに向かって、叫んだ。守さんは優しい目をしながら、私に問い掛ける。
守「ミズキさん。貴方がそこまで、イースを止める理由が……俺には分からないんです。命懸けで共に戦った仲です。師匠も最期に……俺に貴方の事を頼むと、仰っていました……イースには言わないので、俺にその理由を教えてくれませんか?貴方が心を閉ざして、戦ってるのを……見ていられないんです。」
ミズキ「守さん……。………………分かりました。
守さんにはお話しましょう。」
私は……何故か記憶の一部が欠けていた。理由は分からない。……けど、その記憶の一部が……イースちゃんと出会って暫くして戻っていたのだ。
私は守さんに、取り戻した記憶の一部を伝えるのであった……
…… エピソード ミズキ①
「白い竜との出会い」へ続く
次回はミズキのエピソード回です。
ミズキと白い竜の子の物話になります。




