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第ニ章 第ニ話 理不尽な暴虐との戦い

2023/1/4 一部修正しました。


 親友と刃を交え敗北し、死んだと思われた。しかし暗闇の中突如女性の声がしたかと思うと、今度は光に包まれ、古代文明を思わせる様な場所に倒れていた。復讐という目的を失った俺であったが、トカゲの様な子に激しい暴力を振るっていた巨漢男と対峙する。


 

巨漢男「そいつを庇うというのであれば、貴様も魔物の仲間って事だな!人間であっても魔物の仲間であればそれは悪だ!お前には死んでもらう!」



 巨漢男は再び怒号を挙げると、振り回していた鉄球を高く振り上げ、そのまま俺の方に振り降ろした。

 だが挙動が大き過ぎる。俺は右に躱し、そのまま巨漢男の頬にカウンターで右拳を見舞った。身長差は30cm程で高く打ち上げる格好になる為、威力は減少するが、タイミングは絶妙で、手応えは確実にあった。

 しかし巨漢男は意も介さず、鉄球を今度は横薙ぎに振り切った。反撃を警戒していた俺は、バックステップでこれも躱し一旦距離を取った。満身創痍の身体でも、これなら何とかなると思っていた時だ。


 

 

 巨漢男「ふん、ちょこまかと。鉄球は振りが大き過ぎるな……おい!鉄球はお前が預かっておけ!一旦素手で半殺しにしてから、鉄球でトドメを刺してやる!」


 取巻き「はい!親分!」



 巨漢男は鉄球を取巻きに預け、今度は素手で応戦してきた。直後に巨漢男が突進してくる。巨大に関わらず速い。そして左ジャブの連射、右フック・アッパー・ストレートとボクシングさながらの打撃を繰り出してきた。

 ハンドスピードもかなり速い。プロボクシングヘビー級でも世界レベル、チャンピオンクラスですら凌駕するだろう。

 流石に今の状態の上に、暗殺術の技を使わずに全てを躱すのは不可能だ。やむを得ずガードも使いながらそれを捌くが、先程鉄球を喰らった両腕が悲鳴を上げている。更に全身の痛みや軋みもあり、身体の損傷も更に酷い状態となる。


巨漢男「やるな。しかしそろそろ限界なんじゃないか?」


守「仕方ない。あの技を使うか…」



 俺は先の翔との戦闘で使用した空歩(くうほ)で、奴の攻撃を躱し背後を取ろうとした。しかし空歩を使用しようとした瞬間、全身の痛みがより激しくなり、意識が更に混濁としてきた。


守「なんだ……これは……?」

 

 満身創痍でも極限の集中力を以てすれば、空歩は何とか使用出来るはずだ。しかし身体に呪いがかけられているかの様に、技を使用しようとした瞬間、身体に異常が生じた。


守「なら、これは……」


 次にこれも先の翔との戦闘で使った残体(ざんてい)。自分の残像を写し出し攻撃を躱そうとした。しかしこれも使用しようとした瞬間、全身の激しい痛みや軋みに苛まれた。間違いない。暗殺術を使用しようとする瞬間、やはり呪いが掛けられているかの様に、全身の異常が起こる状況に陥っている。


 


巨漢男「はっ!隙だらけだぜ!喰らっとけぇぇ!!」


 強烈な右ストレートが俺の顔面を捉えてしまった。物凄い重い一撃だった。そこにすかさず腹、そしてまた顔へと次々と打撃の雨が降られる。俺は何とか立っていたが、反撃する力は殆ど残されていなかった。



 

巨漢男「しかし粘るな!そして何だかお前もトカゲ野郎程ではないが硬いな……。まぁ見た所最初から万全ではない感じだったが……ともかく魔物の味方をするから、こうなったんだ!おいお前!鉄球だ!奴を殺す!!」


取巻き「はい!親分!」


 取巻きが巨漢男に先程の鉄球を渡すと、男はそれを次々と俺に振りかざしてきた。避ける力は残っていなかった為、ガードする選択肢しかなかった。しかしガードは容易に崩され頭部、肩腕、脚、胸部、腹部に次々と鉄球を見舞われた。奴の怒涛の連続攻撃に全身は酷く損傷され、出血も多量となっていた。

 しかし何故そこまでしてかは自分でも本当に分からなかったが、崩れ落ちずにそのまま立って持ち堪えていた。


取巻き「マジかよ……ありえねぇ……」


巨漢男「はぁ、はぁ。とんでもないぜ。やはり硬いな……普通の人間じゃねえよ。だが、次の一撃で終わりだ。」


取巻き「おぉ!あれは!これでアイツも終わりだな!」




 巨漢男が大きく息を吸い込み、精神統一をしている様に見えた。辺りが静寂と化す。本来はこの隙に攻撃へ転じたい所だが、最早攻撃する力は残されていなかった。


巨漢男「……おらぁぁぁ!!!」


 数秒後、巨漢男から繰り出された鉄球攻撃は、先程と比べほどにならない程の速度で、強烈な風切り音と共に俺の方へ向かっていった。


「だめぇぇぇ!御願いです!!誰か……助けてくださぁぁい!!!!」


 後ろの方で少年の様な甲高い声が聞こえた。

 

「破!」


 ガシッ!!


 命を刈り取る攻撃が俺に当たろうかという直前、黒服の格好をした老人の男が攻撃と俺の間に割って入り、なんと攻撃を素手で防いだ。着ている黒服は、和風な武道着の様に見えた。男はすかさず俺に言った。


男「すまんの。遅くなってしもうた。偵察から帰ってきたらドエライ事になってたのぉ。オヌシ、無事かい?」


守「だ……大丈夫……です。」


男「まだ喋れるな。そんな怪我で良く立ってられるもんじゃ。大した奴じゃよ(危険な状態じゃ。早く治療をしてやらねば……) 。……してポーよ。何故人間をこんなにしておるんかの。魔物に奪われた領地を奪還する、というのが目的だったのではなかったか?」


 巨漢男はポーという名前らしい。


ポー「テメェか……ゲンジ。魔物を庇ったそいつを見せしめに粛清してたんだよ。魔物なんだから、領地を奪った魔物と同類だ。」

 

 助けてくれた男はゲンジという名前らしい。


ゲンジ「おい、それでは証拠がないじゃないか。魔物を憎むのは分からなくもないが、中には良い魔物だっておる。それだけでこの様な暴虐を振るっておったのか?」


ポー「……ふん。その男とトカゲ野郎はどうするんだ?おい?」


ゲンジ「ふむ。コヤツとこの子は一緒にワシの所で預かる。それで良いか?」


ポー「……テメェと関わるのは面倒だ。勝手にしろ。おい、行くぞ!」



 

 巨漢男のポーが慌てる取巻きを引き連れ、その場を離れていった。窮地を脱し解放された為か、それまで強情な程に踏ん張っていた足腰が崩れ落ち、先の翔との戦いで最後にそうなってしまった様に、目の前が暗くなり、俺の意識はまたしても途絶えてしまった……





             ……第ニ章 第三話へ続く


 


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