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Revenge(リベンジ) 〜「元暗殺者」による異世界救済 〜  作者: goo
第六章 ハンター試験
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第六章 第六話 第二部実技試験 イース編


side:イース

 


 僕は、第一部実技試験を何とか突破したが、最終試験である戦闘試験の相手は……ミズキさんとなった。


 丁度晴天だった空に、黒い雲が出始めており、試験の行先にも暗雲が立ち込める。




ドラゴ「それじゃぁ、始めるぞ!」


ミズキ「はい……。」


イース「わわわ……待って下さいっ……!」


ドラゴ「戦闘開始っ!!」



 僕の心の準備が整わないまま、ドラゴさんは戦闘開始の合図をした。






ミズキ「行きます……!」


イース「……!!」


 戦闘開始の合図がされた直後、ミズキさんが僕の方へ向かって、猛速度で踏み込む。あっという間に僕の懐に、ミズキさんが入り込んできた。


ミズキ「……。」


 次の瞬間、ミズキさんが持っていた、刃がない修行用の無刃刀(ムジントウ)で、凄まじい連撃を繰り出す。

 僕は両腕でガードを固め、連撃を防いでいく。


イース「くぅっ……!」

ミズキ「…………。」


 ミズキさんは無言で連撃を繰り出す。その目は獲物を狩る殺戮者の目をしていながら……どこか悲しくも見られた。その静かな殺気とは裏腹に、連撃の速度と威力は凄まじかった。


ミズキ「……無月斬(ムゲツザン)!」

イース「……!!」


 ミズキさんは透明の光輝く斬撃を放つ。先程の連撃よりも、一段と強烈な一撃に、僕の腕は裂かれてしまう。辺りに鮮血が舞う。


イース「ぐぅっ……!」


ミズキ「……!…………。」


 直後怯んだ僕に、ミズキさんは容赦なく連撃を繰り出していく。僕は剛体術で防御を固めていったが、身体には徐々に傷が付けられていく。


イース「……!!(痛い……!……このままじゃ……!)」


 僕は意を決して、ミズキさんへ右拳を振り翳す。

 しかし、ミズキさんは後方へ大きく躱し、僕との距離を空けた。


ミズキ「……無月刃(ムゲツジン)!!」



 直後、無数の透明な刃が、僕に襲いかかる。僕はなす術もなく、その殆どを喰らってしまった。








イース「はぁ……はぁ……。」


ミズキ「…………。」


ドラゴ「降参するなら今の内だ!腰抜け!これ以上戦るなら、大怪我は免れんぞ!」


 ミズキさんは表情を変えず、ドラゴさんは凄い剣幕で叫んだ。







イース「はぁ……はぁ……(必ず……合格するんだ……!必ず……守さんと一緒に……ハンターになるんだぁ!!)」

 

 僕は大声で叫んだ。


イース「続けます!僕は最後まで諦めません!」


ミズキ「……!!」


 ミズキさんは驚いていたが、直後眉間にシワを寄せた。


ドラゴ「ほぉ。……ミズキ!奴は耐えてはいるが、まだ試験には合格させられん!もっと圧力を掛けろ!」


ミズキ「…………了解しました。」




 ミズキさんはその様に答えると、強烈な踏み込みを見せる。今度もあっという間に、僕は懐に入られた。


ミズキ「…………いくぞ。覚悟しろ。」


イース「…………!!」



 ミズキさんは物凄い剣幕で、無刃刀による連撃を繰り出してきた。その連撃は始めに繰り出したものよりも、更に強烈なものであった。


ミズキ「……どうした……?……反撃してこい……。」


イース「…………!!」




 僕の知っているミズキさんじゃなかった……

 今目の前にいるのは……僕を……殺そうとしている女の人……その様にしか見えなかった……




イース「…………うぅっ!」


ミズキ「……!!………………。」




 僕はたじろんでばかりで、反撃なんか出来なかった。

 僕が苛烈な攻撃を受けている最中、ミズキさんとの思い出が蘇ってくる……。




 

 

 美味しいご飯を沢山作ってくれた……

 こんな僕を何度も助けてくれた……

 沢山の愛情を注いでくれた……



「イースちゃん!大丈夫!?」

「イースちゃん!一緒に頑張ろうね!」

「イースちゃん!大好き!」






 なのに……今は……………………







 







 







ミズキ「……水月斬(スイゲツザン)!」


 ミズキさんはトドメの一撃を、僕に繰り出した。


イース「…………!」


 僕はなす術もなく、その強烈な一撃を喰らってしまい、後ろに尻餅をついてしまった。


ミズキ「…………。」


イース「……ミズキ……さん……」



 ミズキさんは、僕の顔の前に……無刃刀を突き付けていた。勝負はついてしまったのだ。


 丁度その時、雨が降ってきた。

 僕は……涙を流していて、もう目の前の女の人の顔も……見えていない程であった。

 僕の涙は、雨水と合わさって、大量にこぼれ落ちていた。雨水なのか、僕の涙なのかは、もう区別がつかない程であった。



イース「…………うっ…………ううっ…………」



ミズキ「………………。」












ドラゴ「ふん。終わりだな。……腰抜け。正直言うと、途中までは良い線を行っていた。……だがなんだ、そのザマは?圧力を掛けられて、戦意喪失して、泣くなんて……そんな奴がハンターになれるか?なれるわけねぇだろ!?

 貴様はハンターに向いてねぇ!敵の前で戦意喪失して、動けなくなって死ぬだけだ!他の仕事でも探してろ!!」


ミズキ「………………。」



 ドラゴさんは大きく叫び、ミズキさんは静かに無刃刀を鞘に納めて、後ろを向いた。






ドラゴ「無線貝で連絡を入れる!ミズキ!帰還の準備をしろ!」


ミズキ「……了解……しました……。」


ドラゴ「こちらドラゴだ!受験者イースは、一部試験には合格したが、二部試験は不合格だ!概要は…………」



イース「………………。」



 その後のドラゴさんの言葉は、聞き取れなかった。

 ……もう……雨の音しか聞こえなかった……

 守さんと一緒にハンターになる……その願いを叶える事は出来なかった……。

 ミズキさんに全く歯が立たず、挙句の果てには戦意喪失して、泣いて…………




イース「(ドラゴさんの言う通りだ……僕は……ハンターに……なるべきじゃ……ないんだ…………)」




 僕は両手を地面に着き、地面の方だけ見ていた。

 僕は冷たい雨に打たれながら、呆然としていた。



 


 

 雨が冷たい……その雨は、僕の大量の大粒の涙と合わさって、地面に落ち続けていった。

 その冷たい雨は……今の僕の状況を……そして心境を……現しているかの様だった…………







 










             …… 第六章 第七話へ続く






 

 

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