第六章 第三話 第一部実技試験 守編
第一部実技試験……俺に課せられた課題は、「神秘の薬草」を、サウスマウンテン北側の頂上まで持ち運ぶ事であった。
イースとサウスマウンテンの麓で別れ、俺は北側の頂上を目指した。
守「神秘の薬草……北側山頂に行く道の途中にある、川を渡った所に確か……」
そこには特上薬草、極上薬草が生えている自生場所があった。極上薬草の上位の物が、「神秘の薬草」となる。
守「(そこにある筈だが……希少な物だから、時間が掛かるな……)」
制限時間は2時間。課せられた物を探す時間等を考えると、走って登らなければならない。
守「(時間との勝負だ……。薬草の自生場所は、標高300m程の所にあったな……)
俺は猛速度で山道を駆け抜けていく。
そして、もう少しで目的の薬草の自生場所、という所まで来た時であった。
「即座にこの場所へ向かうとは……事前に下調べをしていたのだな!素晴らしい!」
守「……!貴方は……?」
自生場所の前の川を渡ろうとする直前で……一人の男が颯爽と現れた。
「私は今回の試験官の一人、ハンターのシャインだ!
今回は私が妨害させて貰う故、宜しく頼む!」
守「……!!」
シャインという名のハンターは、周りに陽の玉の様な物を次々と出現させ、俺の方へ向けて、それらを放ってきた。
守「……!(冷静に……防げない攻撃じゃない!)」
飛んでくる陽の玉を、俺は守護壁で次々と防ぐ。
シャイン「ほう……防ぐか。見所がありそうだ!」
俺は陽の玉を防ぎながら、前進していき、シャインの懐に入った。俺はすかさず左ジャブを繰り出す。
シャインは大きくサイドステップし、俺との距離を空けた。そして、シャインは川の目の前で立ち止まっていた。
シャイン「今回は妨害するだけで、戦闘はなしだ。……戦ってみたかったが、それは私の役目ではない。」
守「……(だったら今の内に!)」
俺は念の為、シャインを警戒しながら、バックステップを踏み、浅い川を渡って行った。
シャイン「(川を渡る選択をしたか……)……あくまで戦闘は……だがな!」
直後、シャインが腕を振り下ろしたかと思うと、川が一気に吹き出し、水柱を上げ、俺が戻る道を遮ってしまった。シャインの姿も見えなくなってしまった。
守「……(一先ずは薬草採取を!…………いや、待てよ……!)」
ハンターの心得に、退路確保の重要性や、敵が隠れた時の危険性等が記されていた……。退路確保に関しては、奪還作戦の際はやむを得ない状況であったが……。
これは俺の判断能力を試されているのではないかと……。
守「(この間に薬草を探せば良いと思ったが……相手が見えない時のリスク……退路の確保…………正解は……こうだ!) ……玄武大衝波!!」
俺は高く吹き出していた水柱に、掌底を打ち込んだ。水柱は消滅し、元の川へと戻っていく。
シャインの姿も目で捉える事が出来た。
シャイン「……うむ。見えない敵というのは、非常に脅威となる。その中で目的物を探す行為は命取りになる。良い判断だった。……では、頂上でまた会おう!」
そう言い残すと、シャインは陽柱を上げて、即座に消えていった。
守「(気配は消えた……早く神秘の薬草を探さなければ!)」
シャインが去った直後、俺はすぐに神秘の薬草探しに入った。特上薬草、極上薬草はちらちらと自生していたが、神秘の薬草は中々見つける事が出来ない。
守「……(思い出せ……神秘の薬草………………そうか!)」
極上薬草は、一定の陽光を浴びる事で、神秘の薬草へと変貌を遂げる。陽光を浴び過ぎても、少な過ぎても変貌を遂げる事はない。
守「(適度な陽光を浴びる事が出来る場所は……木陰の境目だ!)」
俺は少し離れた大木に目をつけ、その木陰の境目をくまなく探していった。
守「……!(あった!)」
極上薬草と比べても殆ど区別はつかなかったが、葉の裏側はより鮮やかで、少し光輝いて見える薬草があった。
紛れもなく……「神秘の薬草」であった。
守「(予定より早く見つけられた!後は頂上へ行くだけだ!)」
神秘の薬草を見つけた俺は、猛速度で頂上へと駆け登っていった。頂上付近には、崖を登らなければいけない場所があり、シャインの妨害だろうか、落石に見舞われた。
しかし、俺は片手の守護壁で防いでいきながら、崖を登っていき……遂に北側の頂上へと辿り着く事が出来た。そこには先程出会った、試験官のハンター……シャインが立っていた。
シャイン「無事に辿り着いたな!消費時間は……1時間30分!持っている薬草は……紛れもなく、神秘の薬草だ!
……第一部実技試験は………………合格だ!」
守「有難う御座います!」
シャイン「一つ物申すとあれば、薬草の自生場で私の魔法を見た時に……薬草ごと燃やされてしまうリスクを考えていれば……私の発言を鵜呑みにせず、あそこで川を渡らず、私を仕留めに行く方が良かったとは思う。」
守「なるほど……。御指導感謝致します!」
あの時……シャインと俺を結んだ直前上には……薬草の自生場所があった。下手をしたら、シャインの魔法で薬草は燃やされ、神秘の薬草は取れなかったかもしれない。
あの時の俺のポジショニングに、問題があったのだ。
だが、何はともあれ……俺は第一部実技試験を、見事突破する事が出来た。
シャイン「疲れもあるだろうが……すぐに第二部の戦闘試験に移るぞ!」
守「はい!」
シャイン「本当は私が相手をしてやりたい所だが……是非、君の相手をしたいと言う、希望者のハンターがいてね。」
シャインは、残念そうに言葉を発した。
守「希望者のハンター……?」
シャイン「私の後輩にあたる……この者だ!」
「守さん。久し振りだね。」
守「……!!」
現れたハンターは……ハンスだった。
守「ハンスさん……!!」
ハンス「守さんがハンター試験を受けたら、戦闘試験は俺が担当したいと、事前にギルドへ頼んでおいたんだ。……模擬戦の時から、守さんがどれ程強くなったか……楽しみにしていたんだよ。」
シャイン「ガーサル領奪還の任務で一緒だったらしいな……君は勝利の立役者だと聞いている!楽しみだ!私は立会人を担当させて貰う!」
守「……。……ハンスさん!……最高の相手です!……俺の全てをぶつけます!」
第二部実技試験……最終試験である戦闘試験の俺の相手は、ハンスとなった。
前の模擬戦では、イースと2人掛かりでも全く歯が立たなかった相手に、今度は俺1人だけで挑んでいくのであった…………
…… 第六章 第四話へ続く




