第五章 第十二話 決着
闇魔法がハンスに当たろうかという所で、俺は間一髪、守護壁で闇魔法を防いだ。すかさず俺は必殺の拳をワイドネスに見舞い、後方へ大きく吹っ飛ばした。
そして、俺は腹の底から大きく声を張り上げ、皆に檄を飛ばす。
守「皆ぁっ!!俺達の悲願を達成するまで、あともう少しだあっ!!敵は親玉、あと一体!!ここにいない者達も含めての想い……皆の願いを叶える時だあぁぁっ!!!
皆、立ち上がれえぇっっ!!!このままで終わらせたくはない!!俺達の未来を、皆で、勝ち取りにいくぞおおおおおぉぉぉっっっ!!!!」
ハンス「守さん……(不思議だ……力が……戻ってくる……)」
ミズキ「守さん……(凄い……力が……まだ……戦える!)」
ポー「無茶言うぜ、大将。(お前はやっぱり……すげえよ!)」
イース「守さん……(……この人はやっぱり凄い!ずっとついていきたい!!僕も……僕も……やるぞぉっ!!)」
黒い霧で力を失われた者、恐慌状態に陥ってた者、皆が次々に立ち上がった。
守「共に戦おう!!俺達の未来を勝ち取るぞぉっ!!
皆ぁ!!いくぞおおおおおぉぉぉっっっ!!!!」
一同「おおおおぉぉぉっっっ!!!!」
ゲンジ「……(凄い……。守よ……オヌシはやはりワシの師匠と……似ておる……ワシの憧れた……師匠に……)」
ワイドネス「……!!(どうなっている!?次々に人間共が立ち上がってきた!?)
……ふん。だが所詮弱き人間共だ。的が……増えただけの事よ!」
ワイドネスは広範囲の闇魔法を放つ。
守「はあああぁぁぁっっ!!!」
俺は広範囲の守護壁を展開させ、闇魔法を消滅させる。
ワイドネス「くっ……(まだこんな力が残されているとは……)」
ポー「俺達を忘れちゃいけねぇぜ!!」
ポー達はワイドネスに攻撃を繰り出す。
ワイドネスは咄嗟に結界を出し、これを防ぐ。
ミズキ「イースちゃん!」
イース「はい!」
直後、ミズキは水色の連撃を、イースは右腕の重撃を放つ。
パリイイイィィィンッ!!!
結界は音を立てて壊れた。
ワイドネス「(流石に限界か……新しい結界を展開……)」
ハンス「させないよ。……分身斬!!」
ワイドネス「……!!ぐうおおぉっ!!」
ハンスは分身を4体出現させ、本体と共に苦無で同時に斬りつけていく。
そこからミズキの斬撃や、イースの重撃などが合わさり、ワイドネスの身体の損傷は進んでいった。
ワイドネス「(多勢に無勢か……!だが……)……調子に……乗るなぁ……!!……弱き人間の、分際でえぇっっ!!」
ワイドネスは黒い衝撃波を生み出し、皆を大きく吹っ飛ばした。
ワイドネス「はぁはぁ……貴様らは……もう許さん!!ここまでしたからには……後悔しながら死ね……。
…………!!!」
ワイドネスの目の前で、俺は既に攻撃態勢に入っていた。皆が攻撃をしていた際、俺は密かにワイドネスに接近していた。
守「ワイドネス。お前の悪巧みもここまでだ。引導を渡させて貰う。……闘気螺旋拳!!」
ワイドネス「ぐおおおおぉっっ!!……私は……ここで……終われないのだあぁっ!!」
ワイドネスは至近距離から、闇魔法を放とうとするが、俺はその隙を与えない。
守「させない。……玄武連撃拳!!」
俺は渾身の気力が込められた拳で、怒涛の連撃を放つ。
ワイドネス「ぐうおおぉっっ!!…………貴様だけでも……道連れに……」
ワイドネスは俺の身体を掴み、呪文を念じた。だがその手は力無く、俺はすぐにその手を払った。
ワイドネス「……!!(こんな事が……そんな……バカな……バカなあぁぁぁっっ!!!)」
ポー「守ぅ!!いけぇぇっっ!!!」
ハンス・ミズキ「守さんっ!!!」
イース「守さああぁんん!!!」
ゲンジ「(守……決めて……こい。)」
一同「いけええぇっっ!!!」
皆の想いが、俺の拳に宿る。
守「これで終わりだぁ!!ワイドネス!!!
……玄武蒼龍拳!!!!」
俺の気力と闘気は甲羅を纏った竜と、飛翔した蒼い龍の形となる。その2体は対となり、俺の右拳と共にワイドネスへ向かって行った。
ドゴオオオオオオオォォォォンンンッッッ!!!!
ワイドネス「グウオオオォォォッッ……!!!(バカな……この……大悪魔の……ワタシ……が…………)」
強烈な炸裂音が鳴り響き、広大な土煙が辺りを舞った。
土煙が晴れると……そこには倒れていたワイドネスの姿があった。ワイドネスの身体には、黒い霧が立ち込めていた。消滅する寸前だった。俺はワイドネスに歩み寄る。
ワイドネス「私は……元は歪で醜いコウモリの悪魔だった。……名前は言えないが……あるお方から力を頂き……今の姿に変わる事が出来たのだ。この領地を襲撃し、占領したのは……そのお方からの指示だった。……占領後の指揮を私に一任していたが……もしかしたら、また他の者が奪いに来るかもしれない。
……また……奪われたくなければ……守りを固めるのだな……。」
守「……分かった。その忠告、有り難く受け取っておく。」
ワイドネス「人間を……みくびっていた……私の完全な負けだ……。……私が勝とうという直前で……貴様1人の存在が……戦局を大きく変えてしまった……大した人間だよ……。
敗者は消える。……シシオウ達が……そうだった様に……」
守「ワイドネス……」
ワイドネス「主……申し訳……ありませんでした…………ダラス……ドグマ……シシオウ……。……また……お前……達と……会えたら……良いな。…………主従関係で……なく……今度は…………対等な…………なかま……と……し……て………………………………」
そして、ワイドネスは消滅した。
守「………………。」
敵といえど、気分が良いものではなかった。占領された人達、殺された人達や、取り残された遺族や親しい人達…………それぞれ想う人達がいて、されど敵側も様々な想いがある………………戦いというものを、改めて考えさせられる。
…………だが、親玉ワイドネスは遂に倒され……
守「………………。…………親玉ワイドネスを討ち取ったぞおぉぉっ!!俺達の……勝利だああぁぁっっ!!!!」
一同「うおおおおぉぉぉっっっ!!!!」
親玉ワイドネスは遂に倒され、ガーサル領を占領した魔物は全て倒された。
よって奪還作戦は多大な犠牲を代償としながらも、俺達が勝利し、無事にガーサル領を取り戻す事が出来たのだ。
……そう。……多大な犠牲を代償として………………
…… 第五章 第十三話へ続く




