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Revenge(リベンジ) 〜「元暗殺者」による異世界救済 〜  作者: goo
第一章 暗殺者の誕生
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第一章 第五話 親友との戦いの果てに

2023/1/3一部修正しました。


 任務達成間近の時に、かつて親友であった南原翔が立ちはだかった。翔は非科学的な風の力を使って、優位に戦闘を進めた。その能力に驚愕するも、何とか冷静さを取り戻しつつ、その能力の弱点や対応策について俺は思考を巡らせていった……



 

 ……風はほぼ一直線に吹く物だ。その性質を考えると、縦横無尽に多方面への攻撃及びその対応は出来ないのではないかと考えた。

 そうなると俺の暗殺術で対応が出来ると踏んだ。俺は自らの残像を作り出し、一直線で速い斬撃の対応を試みた。技の名は残体(ざんてい) 。身体の残像を相手に見せる技だ。また体とは言っても、自らが持っている武器に対しても有用で、攻撃の際には無数のフェイントとして使う事も出来る。からくりとしては速い動きの合間に遅い動きを一瞬取り入れて、その残像を見せるというものだ。


翔「対応してきたか。だが……」

 


 今度は剣を横に薙ぎ払ったかと思えば、広範囲に無数の風の刃が全ての残像に目掛けて襲ってきた。

 残像は瞬く間に消滅したが、俺の本体はそこにはない。このタイミングで使用したのは暗殺者の移動術で、「空歩(くうほ)」。「空間の隙間を歩く」つまり「空間の隙間を移動する」、細かく言うと「空間の隙間を作り、実体がないはずの場所に移動して、瞬間移動したり相手の攻撃を躱す、また気配を消す」技になる。

 隠密の技にもなるが、これを使用する際には多大な集中力や気力を消費する為、短時間の使用に限られ、使用頻度も限られる。


 

 空歩(くうほ)を使用した俺は翔の背後を取り、左肩に突きをを見舞おうとした。しかし翔は後方への攻撃に反応し剣で防いだ。すかさず翔は俺の方に身体を向け迎撃体勢を整える。そこで今度は残体(ざんてい)を使用して、刀による無数になる斬撃のフェイントを交えながら攻撃に転じた。フェイントの中に本命の右肩への突きを繰り出そうとした時だった。


翔「ここだ!!」


 右肩への突きは奴の剣によって防がれた。……奴は勘だけでなく眼も良いらしい。これが適合者?の力か、特殊な訓練による物なのか……?

 右肩への突きを防がれた直後に受け流され、一瞬の隙が生まれる。そこを翔は見逃さなかった。

 左腹部から右胸まで一気に、下袈裟斬りを俺は喰らってしまった。


守「ぐっ……!」


 辺りから鮮血が大量に流れ落ちる。これははっきり言うと致命傷に近い。しかし俺は倒れずに両足で床をしっかりと掴む様に、そして両脚へ更に力を入れて体幹を支える。


 

翔「倒れないか……」

守「こんな怪我程度で倒れるわけにはいかない。」




 とは言うものも、被害は甚大であった。ただでさえ速度には向こうに分がある状況で、先の下袈裟斬りを受け動きは更に鈍くなる。自らの身体に鞭を打ちながら、今度は残体(ざんてい)によって作られた、自身の残像と斬撃のフェイント両方を駆使しながら翔に攻撃を行う。

 しかし手数が増えるわけではない。またしても攻撃は見切られ、今度は腹部を横薙ぎにされる。辺りに鮮血が飛ぶ。


守「……!」


 そこから翔が追撃に入る。横薙ぎで出来た傷は浅い物だったが、攻撃を受けた際に生じた隙に乗じて、左腕・左脇腹への斬撃、そして右腹部への突きを喰らってしまう。

 何とかバックステップにて距離を取ったが、出血量が尋常ではなかった。


守「これは本当にまずい……右腹部の突きは肝臓に入ったか……」



 


 接近戦は危険だ。俺は数本の苦無(くない)を上衣から取り出し、角度を変えながら翔の方へ投じた。しかし今度は翔の周りから風が吹き荒れ、苦無は呆気なく勢いを失い、床へ落ちていった。

 それならばと空歩(くうほ)で翔の背後に周り、死角から苦無を投じた。しかしこれも360度見えているのか、勘が鋭いのか、またしても苦無は風によって塞がれた。



 

 防御一辺倒なら何とか攻撃を捌けるかもしれない。だが悪戯に時間は過ぎていくだろうし、受けている裂傷が多い為、急いで処置をしないとおそらく出血多量で死ぬだろう。しかし苦無による遠距離攻撃も奴の風の力で無効化されてしまう。かといって近づいたら傷が更に増え、致命傷も更に負う事だろう。今の俺に打てる手が、次々と塞がれてしまっていた。

 満身創痍となり、出血が多くなってきた為か、意識も朦朧としてきた。負けられない…死ねない…もうすぐ復讐が果たされるのに……そう思っている内に声が聞こえた。




 

 

「力を解放しろ。目の前の敵を殺せ。」


 頭の中からその様に言われた感覚があった。


 


 

守「このままいっても俺は負ける…死ぬ……。そうだ……力を解放するんだ…………………………ソウダ……チカラヲ……ヤツニフクシュウヲハタスマデシネナイ……ジャマスルヤツハミンナ殺ス……テキヲ殺スンダァ!!!!!!」


 意識は朦朧とした中でも少しあった。しかし自分の中にあった復讐心が更に増幅され、制御出来なかった。目の前にいる奴が誰だったかも分からない。ただ俺を傷だらけにして、殺そうとしてる奴という事だけはハッキリとしていた。目の前にいる敵を殺して生き延びて復讐を果たす。それだけしか考えられなくなっていた。


翔「これは……何かしらの薬の作用!?正気を保てなくなっている!?」


 身体が軽い。それに加えてチカラがみなぎってくる。本能のままに目の前の敵に向かって突進する。持っている刀を袈裟斬り、横薙ぎ、突き、縦斬りといった連続攻撃を仕掛ける。


翔「……!速い!……そして重い!」


 先程の劣勢とは打って変わり、今度はこちらが優勢に戦闘を進めた。しかし優勢であると言っても、目の前の敵に対して傷一つ付けられないでいた。敵は俺の攻撃を全て剣で防いでいた。


 翔「(これ以上はこちらが危ない…)すまない守。もうこの技で決める。」



 敵は俺の縦斬りをサイドステップで躱し、俺の身体に触れると、俺の身体を中心として一回転剣を振り回した。本来は隙だらけの行動である筈だったが、一連の動きがもの凄い速さであった為、捉える事が出来なかった。

 その後に敵は俺の方から離れて、何やら立ち止まって念じる様な動作をしていた。


守「ナニヲシテイル?ヨクワカラン、ムダナコウドウダッタナ……コウカイシテ死ネ!!」


 俺が敵に向かって直進しようとした時だった。


翔「はっ!」


 俺の周りに、いきなり風の壁が現れた。それは球体状に俺を取り囲んでいた。脱出を試みるも、薄い壁にも関わらず強力な風圧により身体は跳ね返された。直後上昇し俺の身体は風の球体の中に入ったまま、3m程浮く形となった。


守「ナンダコレハ……オイオマエ、ココカラダセ!!」

 

翔「…………最後は正気のままお別れを言えれば良かったが、殺し合いをした上ではそんな事をさせないと……神様は赦してくれないんだな……。守、すまない。せめてあの世があるならば、御両親と会って幸せに暮らしてくれ……さようなら。」「……烈空刃(レックウジン)!!」


 そう敵が言った瞬間に、球体の中から無数の風の刃が現れ、俺の身体を斬り刻む。おそらく最初に放った風の刃よりも、圧倒的に強力な切れ味を持つ刃だろう。


守「グハァ!!バカな……そんなバカなぁ!!!俺は復讐するんだぁ!!こんな所でぇぇ!!!」


 薄れゆく意識の中で、自分の身体がより切り刻まれて、形を失っていく事を感じていた。もはや痛みを感じない程になっていた。



 

 

 ……その時にはもう正気に戻っていた。死ぬ間際なんだろう。俺の人生は何だったんだろうか。小学校の時にいじめられてた日々、翔と仲良くなって嬉しくて楽しかった日々、苦労して入った会社で頑張ろうとしていた日々……。

 両親を殺された時からは地獄だった……。情報を探していた日々、暗殺者組織に入ってからの日々……色々な出来事が走馬灯の様に駆け巡る。

 そういえば水音は無事に帰ってきて下さい、と言ってたな。俺が殉職したと聞いたらどんな顔をするんだろうか……


 また、もう死んでしまったら復讐が出来なくなるという、やるせない気持ちも募ってくる……何故雷鳴が両親を殺したのか……何故両親が殺されなければならなかったか……その真相はもう確かめようがない……

 嘆き、後悔、悲しみ、色々な感情が押し寄せてくると同時に目の前が暗くなり、俺の意識は完全に断ち切られてしまった……





 

                 ……第一章 完


          

             ……第二章 第一話へ続く



 

ここまで読んで頂き、有難う御座いました。

第一章はここで完結となります。

次回からは第二章に入ります。


初めての作品なので、至らぬ点が多々あるかと思いますが、ご評価、ご感想を頂けたら幸いです。

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