第五章 第十一話 全滅の危機
side:ハンス
手傷を負ったワイドネスが、遂に本気を出してきた。
俺は分身を使い、戦闘不能になっているイース君とポーを、離れた所に避難させた。
ハンス「……。(分身を使い過ぎたか……かなり消耗した。)」
俺は呪いの力の影響があり、万全ではなく、更にこの戦いでかなり消耗していた。
ミズキ「ハンスさん……大丈夫ですか……?」
ハンス「大丈夫だ。ミズキ、もう少しの辛抱だ。もう少しでワイドネスを倒せる!一緒に頑張ろう!」
ミズキ「はい!」
俺は自分にそう言い聞かせる様に、ミズキに返した。
ハンス「いくぞ!」
ミズキ「はい!」
そして俺達は、本気を出したワイドネスと相対した。
ワイドネス「今までの人生に……別れを告げよ。そして後悔しながら、逝くが良い!!」
ワイドネスは、直線状と球体魔法を連続で放つ。先程から放っている魔法とは段違いの威力であり、魔法を躱しても、その衝撃で身動きが取れない程であった。
ミズキ「くっ……!」
ミズキは、遠隔操作されている鎌を防ぐ。
そこにすかさず、球体状の闇魔法が飛んでくる。
ハンス「風遁・風刃玉!!」
俺は風遁術で魔法の相殺を試みる。……しかし、
ハンス「ぐっ!?」
ミズキ「ぐぅっっ!!?」
威力に負け、相殺し切れず、闇魔法は俺達を直撃した。
幸い風遁術で威力は軽減されたものの、元の威力が凄まじく、俺達はかなりのダメージを負ってしまった。
ハンス「ミズキ!大丈夫か!?」
ミズキ「……はい……大丈夫です……。」
ミズキは自分の身体に鞭を打つ様に、何とか立ち上がる。そして、俺達は一斉にワイドネスへ接近する。
ワイドネス「死に急ぐか……ならば望み通りにしてくれよう!」
ワイドネスは漆黒のオーラを、ミズキに放った。
ミズキ「……!!」
瞬く間にミズキは漆黒のオーラに包み込まれ、その場に崩れ落ちてしまった。
ハンス「ミズキ!!」
ミズキ「……!!(身体が……全く動かない……)」
すかさずワイドネスが、直線状の闇魔法を放つ。
ハンス「やらせん!!風遁・風刃波!!」
分身を1体出現させ、ミズキを離れた所に避難させた。同時に俺は風の刃波を、闇魔法へ当て込む。しかし今度も
威力に負けて相殺し切れず、俺は闇魔法の直撃を受けてしまう。
ハンス「ぐぅっ!!」
ワイドネス「お前で最後だ。ニンジャ崩れ。」
ワイドネスは、漆黒のオーラを俺に放ってきた。
ハンス「……!(駄目だ……躱せない……!)」
俺の周りに、漆黒のオーラが纏わりつく。
ハンス「……。(くっ……身体が全く動かん……)」
遂に俺も、漆黒のオーラに捕らわれてしまい、身体が全く動かず、その場で崩れ落ちてしまった。
side:守
皆必死になり、命を懸けて奮闘していた。
しかし、イース、ポー、そしてミズキやハンスまでも戦闘不能の状態となってしまった。
俺は生きるか死ぬかの傷であったが、薬のお陰で大分楽になっていた。しかしまだ動ける程になるには、程遠かった。
守「……!(まだ身体が動かない!……もう、戦える味方がいない……このままでは……くそぉ!)」
ゲンジ「……。まもる……」
師匠が瀕死の体に鞭を打つ様に、俺へ近づくと、そっと手を俺の背中に当てがう。
ゲンジ「ワシの……残り僅かな力じゃ……受け……とれ。」
守「……師匠……!!」
俺の身体に、師匠の力が入り込んだ。その気は、シシオウとドグマの同時攻撃を防いだ時の力とはまた別の、身体の傷や消耗に対しての治癒・回復力を高めるものであった。
自らの力と合わさり、全身の中を巡っていく。今までの後悔や挫折、ワイドネスの戦いをただ見ているだけの悔しさ・怒り、仲間達を守りたいと思う心が、その力を更に増幅させた。
守「師匠。有難うございます!(これで、少しの時間だが……戦える!)……行ってきます!!」
ゲンジ「うむ……行って……来い……そして……必ず無事に……戻って……来い……!待って……おるぞ……!」
守「……はい!!」
そして俺はワイドネスの元へ、駆けて行った。
ワイドネス「さて、残りは瀕死の奴らや、恐慌状態の奴か……。私の魔力の回復を待ちながら、ゆっくり殺すとしよう……。だが貴様ら4名は、これまでの健闘を讃え、盛大に殺すとしよう。先ずはニンジャ崩れ。貴様からだ。」
ハンス・ミズキ「くっ……」
ポー「……くそぉっ!」
イース「うぅっ……(ここまで……なのでしょうか…………嫌です……嫌だ…………嫌だぁ!!)」
ワイドネスは、至近距離で闇魔法をハンスに放った。
ハンス「……。」
ミズキ・イース「ハンスさぁぁんっ!!!」
ポー「ハンスぅぅ!!」
闇魔法がハンスに直撃する……寸前だった。
俺はハンスの前に立ち、守護壁で闇魔法を防ぎ、消滅させた。
ワイドネス「光の者か!貴様……まだ動けるのか!?」
守「何とか間に合った。皆が奮闘してくれたから、しっかり休めた。…………後は、お前を倒すだけだ!!……闘気螺旋拳!!」
俺は螺旋状の必殺の拳を、ワイドネスに繰り出す。
結界術は間に合わず、ワイドネスは直撃を喰らい、後方に大きく飛ばされる。
ワイドネス「ぐうおぉぉっ!!(……やはり、コイツは危険だ!!直ちに排除しなければ……)」
ミズキ・イース「守さん!!」
ポー「守!!」
ハンス「守さん……ありがとう。」
守「いつも、ハンスさんに助けて貰ってましたから!ようやく少しだけですが、恩を返せました!」
ワイドネスの絶大な力に、一時は全滅の危機に晒されていたが、師匠の力もあり、俺は戦線に復帰する事が出来た。
奪還作戦は、いよいよ大詰めを迎える。そして俺達とワイドネスの戦いは、決着の刻を迎えようとしていた…………
…… 第五章 第十二話へ続く




