第五章 第八話 死闘
俺は辛くもドグマを倒したが、シシオウは死にゆくドグマを喰らい始めた。そして今度はドグマの力を取り込んだ、シシオウと相対する。
シシオウ「コロオオオオオオオオスゥッッッ!!!」
守「……!(速い!!)」
シシオウは四つ脚で、猛速度で突進してきた。
先程とは比較にならない速度であり、あっという間に俺との距離を詰めてきた。
シシオウ「オラアアアアァァァッッッ!!!」
守「……ぐっ!!」
シシオウの連撃は、速さも威力も桁違いであった。
俺は広範囲の守護壁を展開するが、力負けして後ろに吹っ飛ばされた。
シシオウ「貰ったァァァッッッ!!」
シシオウが追撃に入る。俺は何撃か連撃を防いだが、速度が尋常ではなく、見る見る内に、裂傷を負ってしまう。
守「ぐっ!!(……何とか……隙を見つけなくては……!)」
辺りに大量の鮮血が舞う。顔面も身体も、おびただしい裂傷と出血量となってしまった。
ミズキ・イース「守さぁぁんっっ!!」
ゲンジ「……!(……守……!)」
段々と視界が歪む。……しかし、俺はシシオウの一挙一動を集中して観察していた。
時折右腕の重撃を放つ時に、隙が大きくなる。恐らくドグマの癖が、シシオウにも影響したのだろう。
守「……。(次、右腕の重撃の予備動作がきたら……反撃する!)」
そして機は訪れた。シシオウは連撃の途中、右腕を大きく振り上げた。俺はその瞬間を見逃さなかった。
守「(……ここだ!) 闘気螺旋拳!!」
シシオウ「グウオォォッッ!!」
俺の必殺の拳は、シシオウに叩き込まれた。
すかさず、俺はシシオウに連撃を浴びせる。
守「玄武連撃拳!!」
シシオウ「グオォッ!!…………調子に……乗るなあぁぁっっ!!」
守「……!!」
俺が繰り出した連撃の中で、シシオウは両方の赤眼をカッと開き、反撃を繰り出してきた。
シシオウ「ウオオオオォォォッッッ!!」
守「!!……はああああぁぁぁっっ!!」
そこから、シシオウは両爪の連撃を繰り出し、それを俺は剛体術と守護壁で防御していく。その合間に、俺も気力が込められた拳で応戦し、お互いの相打ちも生じていた。
打撃音と斬撃音が辺りに鳴り響く。
守「負けられない!!皆の想いを背負ってるんだぁ!俺は一歩も引かない!!!」
シシオウ「うるせぇっ!!!……ドグマの敵……取らせてもらう!!死ねええぇぇっっ!!!」
お互い激しく損傷していた。俺は爪の斬撃を、シシオウは気力が込められた拳を、お互い何発入れられたか、もう数えられない程喰らっていた。
シシオウ「…………(コイツの光の拳……効くな……だが、力では俺の方が上だ!攻撃の軌道を変える!)」
シシオウは下から斜め上の方に、右腕を振り上げてきた。
守「……!(攻撃の軌道が変わった!!まずい!打ち上げられる!!)」
俺は防御し、踏ん張ろうとしたが、力で勝るシシオウに力負けし、空中へと打ち上げられてしまった。
守「……!!(これは……あの時の……!)」
先の防衛戦の時、俺は同じ様に打ち上げられ……シシオウの牙で噛み砕かれていた。
そして今回も、シシオウは口を大きく開け、俺の方に向かってきた。
守「(防御しなければ……間に合うか!?)」
ガシイイイィィィッッ!!
間一髪で防御が間に合った。俺は両手で守護壁を展開し、上と下の牙を防いだ。
シシオウ「防いだか…………だが、これならどうだ!?」
ゴォォォォォォッッ!!
今度はシシオウの口から、火炎が吹き荒れてきた。
守「ぐぅっ!!」
俺は守護壁を展開していた筈であったが、火炎は守護壁を通り抜け、俺の身体に損傷を与えてきた。
守「うおおおぉぉっっ!!」
俺は更に力を込め、シシオウの口を開き、何とか脱出出来た。しかし俺は裂傷に加え、大火傷も負ってしまった。
シシオウ「(火炎は効く……?) 好機だ!!」
シシオウは咄嗟に激しい火炎を吐き出した。
俺は守護壁で防いでいく。火炎は絶大な威力を誇っていたが、俺は何とか全て防ぎ切った。
シシオウ「……。(何故、あの時は火炎攻撃が効いた……?………………試しにやってみるか。」
守「……。(何故あの時、火炎は守護壁をすり抜けた……?)」
ゲンジ「……!!(シシオウが……気づいてしまったか……!?)」
シシオウは俺に突撃し、連撃を見舞う。
その連撃の中で、大きく息を吸い込み、火炎を吐いてきた。連撃は防げたが、火炎攻撃は防げなかった。
守「ぐうおぉっっ!!(火炎を防がなくては……)」
俺は咄嗟に、火炎攻撃を防ぐ事を意識した。
シシオウ「(このタイミングで……)」
シシオウは火炎を吐きながら、強烈な右爪による斬撃を繰り出してきた。
ザシュゥゥゥッッ!!
守「……!!!」
ミズキ・イース「守さあああぁぁぁんっっ!!!!」
シシオウの右腕は、俺の守護壁をすり抜け、袈裟斬りの形で、強烈な斬撃の直撃を喰らってしまった。
ゲンジ「(止むを得ん……敵は気づいているが、守は気づいておらん……)……守……ぅ!ゴホォッ!……火炎と斬撃を……同時に防御……しようとするなぁ……!」
守「……!(火炎と斬撃は、一緒には防げない……!?)
……はいっ!!」
シシオウ「チッ!余計な事を………………やはり、先ずは死にかけの奴からトドメを刺すかぁ!!ジジイッッッ!!死ねぇっっ!!」
ゲンジ「(来るなら来い。ワシは……もう……)」
守「やらせるかあぁっっ!!」
ゲンジ「守ぅ!……ゴボォッ!……来るなぁ!!」
シシオウは師匠の元へ突進してきた。俺は全速力で、師匠の元へと向かった。しかし俺が追い付く直前で、シシオウは速度を落とし、後ろを振り向き、俺に照準を合わせてきた。
シシオウ「来るだろうと思ったぜ!ワザと遅くしたんだよ!!罠にかかったな!!」
守「……!!」
シシオウは右腕を斜め上の方に、振り上げた。
俺はまたしても力負けし、宙を舞ってしまった。
シシオウ「その傷……お前はもう限界を超えてるだろう!もう一度俺の牙と火炎を喰らって、死ねぇっっ!!!」
シシオウは大きく口を開け、俺の身体に牙を差し込んだ。俺は咄嗟に剛体術を発動し、致命傷を避けたが、牙は俺の身体にめり込んでいた。
直後、シシオウの口から激しい火炎が程走る。火炎の方は守護壁を展開させて、何とか防いだ。
シシオウ「(しぶとい!!だが、もう一つあるんだよぉっっ!!)」
シシオウは両爪を更に長く伸ばし、俺の頭ごと串刺しにしようとした。
シシオウ「(終わりダァァァッッ!!!)」
ミズキ・イース「守るさぁぁぁぁぁんっっっ!!!!」
ゲンジ「……まも……る…………!!!!」
守「(あの時は師匠が助けにきてくれた……だから今度は……俺が……自力で……!)……俺は……絶対に負けられないんだあああぁぁぁっっ!!」
ゴキイィィッッ!!!
俺はシシオウの顎を、両手で強引に外しながら、起き上がった。
シシオウ「ガバアアァァッ!!(だが、爪の攻撃が残ってる……!)」
ザクウゥゥゥッッ!!
ゲンジ・ミズキ・イース「…………!!!」
シシオウ「(これは死んだなァァッッ!!…………!?……コイツ…………!!)」
俺の身体はシシオウの爪に貫かれた。だが俺は剛体術を強く発動し、死傷する手前で、俺の身体の中でシシオウの爪を止めていた。そして俺はシシオウに向けて、鋭い眼光を放った。
守「シシオウ…………この攻撃で最後だぁぁっ!!!」
バキイイィィッッッ!!
俺はシシオウの爪を、両手でへし折った。
守「……闘気螺旋拳!!」
シシオウ「ぐうぉぉぉ!!(マズイ!顎を治さなければ!)」
シシオウは後方に吹っ飛んだが、すぐさま両手で顎を強引にはめた。直後火炎の息を吐き出してきた。
だが、俺は守護壁でその攻撃を防いだ。
シシオウ「ならこれはどうだぁ!!」
シシオウは折れた爪を再生させ、更に伸ばし、今度は右腕を斜め下から、振り上げてくる。
守「(……師匠。攻撃を無理に予測しちゃ……駄目でしたよね。)」
シシオウの右腕はピタリと止まり、左腕を振り下ろしてきた。
シシオウ「本命はこっちだぁ!!!」
以前の俺だったら、この攻撃をまともに喰らっていただろう。だが、
ガキィィィッッン!!
俺は攻撃を直前まで見極めた事により、本命の右頭頂部の攻撃に対して、気力を集中させ、威力を軽減させた。
シシオウ「……!!バカな……!!クソォ……クソオォォォォッッッ!!!」
守「……玄武連撃拳!!」
俺は渾身の拳をシシオウに叩き込む。シシオウはなす術なく、その連撃をマトモに浴びていく。
そして、俺はトドメを刺す。
守「終わりだ!シシオウ!……獅子闘魂拳!!!」
ゲンジ「……!!(これは……師匠の…………)」
咄嗟に出た技だった。俺の渾身の闘気が、獅子の形へと変貌した。そして、獅子は魂を持ったかの様に、右拳と共にシシオウへと向かい、襲い掛かった。
シシオウ「(獅子……!?……猛々しく気高い…………なぜ……なんでこうも憧れる!?……敵の技だぞ……!?……チクショォ……チクショオオォォォッッッ!!!!)」
ドゴオオオォォォォォォンンンッッッ!!!!
シシオウは渾身の技を受けた直後、仰向けに倒れ込んだ。身体と目の色は元に戻り、更に身体からは黒い霧が立ち込める。もう消滅する寸前だった。
シシオウ「(俺の夢は………………どこで……間違って……しまったのだろうか…………)
……クソ…………オレも……ここまでか…………」
守「はぁ……はぁ……」
俺はシシオウに歩み寄る。
シシオウ「お前もボロボロだったのに…………お前には……負けたよ……。本当に体も……技も……心も……強かった…………最後の技……不覚にも……見惚れて……しまったよ……」
守「どっちが……勝っても……おかしくなかった…………俺も……死ぬかもしれない……お前も物凄く……強かった。俺の人生史上、1番の……死闘だった……。」
シシオウ「……最後に……立ってた……奴が……勝者だよ………敗者の……俺は……もう……消える…………」
守「……シシオウ……」
シシオウ「…………ワイドネス様……申し訳ありません…………ドグマ…………カタキ……取れなくて………………ごめ…………ん…………な…………………………」
そして、シシオウは黒い霧となり、消滅していった。
同時に俺は糸が切れたかの様に、その場で崩れ落ちた。
シシオウとの再戦は、死闘の末、俺が紙一重の所で勝利し、幕を閉じた。だが、俺の方も多数の裂傷や大火傷を負い、生きるか死ぬかの所まで来ていた。
残るはワイドネスだけとなったが、こちらの戦力も大幅に削られている。奪還作戦はいよいよ、佳境に入っていくのであった…………
…… 第五章 第九話へ続く




