第五章 第六話 覚醒
親玉ワイドネスが遂に姿を現した。ワイドネスは、スコットとケニーを亡き者にすると、その魂を使い、シシオウとドグマを完全復活させた。更に自身は強大な闇魔法を放ち、師匠が命懸けの守護壁術で防いだが、師匠は瀕死の状態となる。
ワイドネスは魔力補充の為、動けない状況であるが、シシオウとドグマはワイドネスに力を与えられた。直後シシオウとドグマは狂咆哮と雄叫びを繰り出し、俺・ミズキ・イース・瀕死の師匠以外の味方は、全員恐慌状態となってしまった。
更にシシオウとドグマは、強狂化状態にもなり、俺達は最大の窮地に陥っていた。
シシオウ「一緒にやるぞおぉっっ!!ドグマァァッ!!」
ドグマ「オオォォォン!!やるぞおっっ!シシオウゥッッ!!」
2体の魔物はそれぞれ、火炎と氷の強烈な息を、俺達に向かって吐き出した。
守「!!(まずい!これまでの息攻撃と、段違いの威力だ!……だが、やるしかない!!)
いくぞおぉっっ!!イースぅぅっっ!!」
イース「はいっ!!守さんっ!!」
俺が両手で守護壁を展開し、イースが守護壁に両手を当てがう。
ドゴオオオオオオォォォォッッ!!!
イース「……うわああぁぁっっ!!」
守「……!!(まずい!!このままじゃ……押し負ける!!)」
その時俺の背中に、弱くも暖かい感覚を感じた。
守・イース「……!!」
ゲンジ「……あと……少しじゃ……オヌシ達は……ワシらの希望じゃ……僅かな力じゃが……受け取ってくれ……」
ミズキ「……!守さん……!イースちゃん……!」
師匠はミズキに頼んで、担いで貰いながら、俺達の方に来ていた。ミズキの方は涙を流しながらも、俺達の方を見ていた。師匠は俺達の背中に手を置いて、気力を送り込んでくれていたのだ。
守「…………(師匠……あれだけ凄まじかった気力が……もう……こんなに少なくなってしまって……………なのに……こんな状態になってでも、僅かな気力を………………)」
「守!リベンジだぁ!!強い者に立ち向かっていけ!」
「……守。無事で良かった……」
「必ず……無事に帰ってきて下さい……」
「お前に人を殺させはしない。優しくて……思いやりのある人間……それがお前なんだよ!!」
前の世界で……俺を心配して想ってくれた人達の言葉が、心に再び響いた。
「復讐心を持ったままでも、貴方の強く優しい心は変わらない。」
「強く優しい心の源は……その辛い御経験を乗り越えた事にもあるんですね……守さん……微力ながら、私も助力したいと思っています。」
慰労会の時に、俺の過去を打ち明けた……あの時は復讐心が消えない事を悩んでいたが……皆は理解してくれた……
「守さん…………おかえりなさい!!!」
「無事で良かった……守よ……おかえり。」
防衛戦で九死に一生を得た時は……自分を情けなく思ったけど…………生き残る事が出来て……本当に良かったと思ったんだ…………
守「…………。」
現実時間にしたら一瞬だった。しかし、俺の心の中で、数々の大切な人達との思い出や、言葉が蘇ってきた。
万感の想いを馳せながら、俺の身体の中にあった気力と闘気が駆け巡り、師匠の気力も合わさって、膨大に膨れ上がってきたのを感じ取れた……。
守「(……今なら……もっと……もっと力を出せる!!)」
俺は目をカッと見開き、イースに声を掛ける。
守「……イースぅぅ!!俺達の力はこんな物じゃない!!俺達の底力を見せるぞぉっ!!必ず皆を守り切るぞおおぉぉっ!!」
イース「はい!!!」
直後、俺達が展開した守護壁は更に光り輝き、強大且つ強固な物となっていった。
イース「(凄い……守さんが出した守護壁だけど……師匠の守護壁と同じくらい、凄まじい気力を感じる……)」
ドゴオオオオオオォォォォッッ!!!
俺達の渾身の気力と、決死の覚悟で作られた守護壁と、火炎・氷の息が激しくぶつかり合う。
守「うおおおぉぉぉっっっ!!!」
イース「はあああぁぁぁっっっ!!!」
シシオウ「!!(何!?強狂化した俺達の攻撃が防がれる……!?ワイドネス様から貰った力も、上乗せされてるんだぞ……!!)」
ドオオオォォォンッッ!!
そして、2つの息攻撃は消滅した。俺達が展開した守護壁は、2つの強力な息攻撃を防いだのであった。
シシオウ「……バカなぁっっ!!!」
ドグマ「ウオオオォォン!!!」
ゲンジ「(…………土壇場であったが、守の力が……覚醒した様じゃな……イースの力も更に上がっておる……)
……やったな。流石じゃ……ゴフッ!!」
ミズキ「師匠!」
ミズキは急いで、離れた位置の柱に、師匠を寄り掛からせた。
ワイドネス「……。(あの男……私にとっては危険過ぎる!!一時的な物かもしれんが、光の力はあの老人と同等程か……?ドラゴンと女侍の方は何とかなるとして……あの男は確実に葬りさらなければ!!)
シシオウ!ドグマ!結界術を使う!あの男だけは確実に仕留めろ!!」
ワイドネスは、魔法を唱えた。
直後、ミズキとイースは結界の中に閉じ込められてしまった。
ミズキ・イース「……!!」
守「……!!ミズキさん!!イース!!」
シシオウ「安心しろ。あの2人もあの世へ送ってやるからよ。先ずはテメェから、血祭りに上げて、生まれてきた事を後悔させながら、殺してやるよおおぉぉっっ!!!」
ドグマ「ホントは、クソ女とクソチビデブドラゴンを殺りたかったが……ワイドネス様の命令だぁ。そいつらは後で殺そぉぉっ!先ずはシシオウのカタキだぁっ!!」
シシオウ「待て!俺はまだ死んでないぞ!!……まぁいい。いくぞおぉっっ!!」
強狂化した2体と……更に力も強大になってる上、一対ニの状況……戦況は限りなく不利だ。……俺も覚悟を決める時だ。
守「お前達を必ず倒し、領地を奪還する!……いくぞおおぉぉっっ!!」
師匠は瀕死、ミズキとイースは結界に閉じ込められ、俺1人の状況となってしまった。
この後の戦いは俺の想いと、2体の魔物の殺気が、激しくぶつかり合う戦いとなっていくのであった……
…… 第五章 第七話へ続く




